文化財級 交響曲
作曲家 エクトル・ベルリオーズ
曲名 幻想交響曲
指揮 ジャン・フルネ
演奏 東京都交響楽団
録音 1983.5.21 狭山市民会館
プロデューサー ヨシハル・カワグチ
エンジニア マサオ・ハヤシ
評価項目 評価内容
ホールトーン 10
ステージレイアウト 10
リアリティ
クオリティ
ダイナミックス
平均点
商品番号:COCQ−84074−7 デンオン  ステレオ 
解説
このレーベルの持ち味であるワンポイント的な音像表現が見事に生かされた優秀録音である。ホールでのセッションは客席まで含めた豊な音響空間を確保し、その中でオーケストラの伸びやかなTuttiが力むことなく雄大に響き渡る。
この録音の雰囲気からすると、何本かの補助マイクが低弦などに使用されていると思われるが、音像のまとめ方、あるいは届いてくる印象はワンポイント録音が指向するあるがままのオーケストライメージである。
ホールトーンはマイクが拾った空間に広がる生々しい残響が好ましい。その自然な空間イメージの中で、オーケストラも見事な定位で実物大に展開している。
反面、音の粒立ちが曖昧になる傾向にあり、一つ一つの音をもっとはっきりと聴き取れる工夫が欲しかった。しかし、こうした音作りがワンポイント録音の醍醐味でもあり、各楽器の音をクローズアップせず、オーケストラの全体像を誇張無く聴かせることに狙いがあるのである。
伸びやかで自然な音空間に身をゆだね、ゆったりとした気持ちでホールトーンを楽しむのもいいものだろう。
音質面はデジタル時代においてはもう一歩クオリティが足りないと感じる。また、ダイナミックレンジも期待したほどではない。しかし、目を見張るような刺激的な音はないにしても、終始力みの無い自然な音像が展開されるため、ストレス無く音楽に集中できるだろう。
なお、このアルバムは、ジャン・フルネと東京都交響楽団の蜜月を記録した魅力ある内容である。
上述の「幻想」のほか、サン=サーンスの「オルガン」やビゼーの「アルルの女」など、フランス音楽がたっぷりと楽しめる。
録音面については、「オルガン」と「アルル」は同様に文化財級の仕上がりである。特に1987年に録音された「オルガン」においてはmpレベルの弱音が素晴らしく、肌触りの良い至上の美音と言ってもよい。オルガンの重低音も充分に捉えられており、音像が腰高になることも無い。Tuttiで各楽器の見通しが若干曖昧になるのが惜しまれる。
文化財級