世界遺産級 管弦楽曲
作曲家 ベラ・バルトーク
曲名 管弦楽のための協奏曲
指揮 ユージン・オーマンディ
演奏 フィラデルフィア管弦楽団
録音 1963.10.13
フィラデルフィア・タウンホール
プロデューサー トーマス・フロスト
評価項目 評価内容
ホールトーン 10
ステージレイアウト 10
リアリティ 10
クオリティ
ダイナミックス
平均点 9.6
商品番号:88697−27987−2 ソニー(CBS) ステレオ 
解説
生々しくあるがままな、見事なまでの原音再生である。エンジニアによるマイクアレンジのみで、オーケストラの全体が見渡せるマクロ的要素と各パートの細部まで克明に捉えたミクロ的要素まで、この録音は総てにおいて最高の評価を与えられる、類まれな録音であると言える。
この「オケコン」は、オーケストラの名人芸を高度な作曲技法とオーケストレーションによって表現した楽曲で、各楽章にはオーケストラのソリストたちが自分の腕をアピールできるように工夫されている。
録音は、こうした楽曲の性格を見事に捉え、オーケストラの高度なテクニックを目の前に生々しく再現してくれる。
ホールトーンは、会場の空気とオーケストラの発した残響のみを、あるがままに捉えたもので、リスナーを意識して人工的に加えられたものではない。このようなホールトーンを正しく評価し、認めてこなかったことが(それは製作者側にもリスナー側にも責任があるのだが)、オーケストラ録音の衰退の原因であったのだと思っている。
ステージレイアウトも素晴らしい内容である。各セクションあるいは各楽器があるべき所からピンポイントに定位して聴こえてくる。しかし、だからと言ってオーケストラ全体の定位が曖昧になったり細部が誇張されたりしているわけではない。絶妙なバランスでマクロとミクロが共存しているのだ。
リアリティは、上記の項目が最高の内容であることから、必然的に最高の結果を生み出すことになっている。奏者の息遣いやアンサンブルの受け渡し、会場全体に漂っている人の気配がみごとなリアリティとなって聴こえてくる。
クオリティも申し分なく、ダイナミックレンジとともに、時代を超えた最高品質のレベルであると言える。Tuttiでのffでも音像がぶれたり圧迫感に陥ったりすることもなく、力みのない伸びやかなクライマックスを聴かせてくれる。

オーケストラ録音がスタジオで時間と手間をかけて行われていた時代。今から40年から50年ほど前は、このよぅな素晴らしい「仕事」が当たり前のように存在していた。
限られた機材と手探りの経験を頼りに、エンジニア達はこれほどの素晴らしい録音を残してくれたのだ。
マイクの数を増やし、複数のテイクを合成し、機械仕掛けのホールトーンを作り出し、リスナーに実体のないオーケストラを届けるようになったのはいつの頃なのか。
過去の遺産にばかり目を向けていてはいけないが、最新録音からはこのような録音には出会えなくなって、もう何年も経つような気がして残念でならない。

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