二つの合唱と管弦楽の為のバッハの大作である。バーンスタインは速いテンポで颯爽と演奏を進めている。
録音は、見通しの良い透明感を得た伸びやかで軽やかな音像表現である。録音された時代の古さから来るノイズ感や高域の浮ついた強調感が若干気になるが、そうした瑕疵がストレスになるようなことは無く、むしろヴァイオリンや女声合唱の艶やかな音色に貢献しているように思える。編成の小さなオーケストラが伴奏についているが、合唱は雄大に奥行のあるハーモニーを響かせている。Tuttiでのffと言ったダイナミックレンジはほとんど求められない楽曲である為、音像はmf程度の音圧を余裕を持って処理している。終始安定したオーケストラサウンドが展開している。ホールトーンは会場に響く自然な残響に任されており、必要充分な広がりを得ている。又、ステージレイアウトは小振りなオーケストラとステレオ感たっぷりな合唱との調和が素晴らしく、時折聴かれる木管のソロやアンサンブルが心地よく際立ってくるのが微笑ましい。一方、独唱陣の処理も、それぞれの役割を見事に済み分けて表現されている。
近年、この曲が新たに録音される機会はめっきり減ってしまっているが、40年以上前のこの録音のクオリティがあれば、新たな録音など登場しなくても良いのではと感じてしまう。音源自体が少ない楽曲であることを鑑みれば、この演奏ももっと評価されるべきではないのかと残念でならない。
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