文化財級 管弦楽曲
作曲家 ベラ・バルトーク
曲名 「ダンス組曲」ほか
指揮 アダム・フィッシャー
演奏 ハンガリー国立交響楽団
録音 1990.10.3 アイゼンスタット・ハイドンザール
プロデューサー 不明
評価項目 評価内容
ホールトーン 10
ステージレイアウト 10
リアリティ
クオリティ
ダイナミックス
平均点 9.4
商品番号:NI5309 ニンバスレコーズ ステレオ  
解説
見事なホールトーンである。オーディオ的にも、空間表現をサポートするのに必要十分な残響であるといえる。このレーベル特有の音作りともいえるが、オーケストラが少し距離のある遠方感を持った音像表現であり、それが魅力の一翼を担っている。オーケストラと客席、ホールの空間的広がりを伝えることに成功している。また、耳障りの良い、柔らかな肌触りのような感覚は、刺激物のない心地よさに包まれる。この距離感は、並みのオーディオシステムでは聴感的に不足を感じてしまうかもしれないが、十分に再現能力のあるスピーカー、あるいはヘッドホンでのリスニングであれば納得できる内容であると思われる。ホールの中央より後方でオーケストラを俯瞰するような音像であり、分析的に細部を聴き取ろうとせずに、オーケストラの響きに身をゆだねるような意識で向き合い、ライブの雰囲気を楽しんでもらいたい。
一聴すると、幾分細身で小粒な印象を受けるが、マイクが捉えた情報は漏れなくテープに刻み込まれ、低域から高域まで驚異的に広い帯域を使ってオーケストラ音像をまとめあげている。

ホールトーンは、マイクが無指向性であり、ステージからも距離を置いてのセッティングであるということが想像できる。マルチマイクではなくワンポイントマイクでの収録であることも伝わってくる。こうした雰囲気指向のホールトーンは、オーケストラを小ぶりな印象にまとめてしまう傾向にあるが、ここでの録音では、豊かなホールトーンの中で、オーケストラは雄大に鳴り渡っている。
ステージレイアウトは、ワンポイント的な収録による自然でブレのない安定した配置に仕上がっている。各セクション、各楽器があるべきところから聴こえてくる心地よさは、他ではなかなか得られることのできない喜びとなるだろう。
リアリティも、自然であることが何よりの魅力であり、余分な強調はどこにもない。それを物足りないと感じるか、生々しさと感じるかは、リスナーの趣味指向やオーディオ環境に大きく左右されることとなる。
ダイナミックレンジは、会場の空気を伴って、とてつもない迫力と伸びやかな共鳴をリスニングルームに与えてくれる。この広帯域なダイナミックレンジが、重心の低いピラミッド型のオーケストラ音像を創り上げているのである。

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