A級10W
815 PPアンプの製作
(プレイ・トライオードステレオアンプ改造)
2016.11.25
Katou@刈谷
●2021.08.20 一部改修し、総合特性を追記しました。
球 は左から5814A、7N7、815
背 面 整流管は5T4
<お寺大会で一目惚れ>
・何台かのアンプ作りを経験する
と 並みのオーディオ球では飽き足らなくなり、ツノ付きタマに興味を抱き始めました (病)/。
そんな折
、2010年冬の送信管大会
で 見た
815
に一目惚れしまし た。「
おおっ!これはカッコ良い!!
」、 早速名古屋・大須界隈を探しましたが
見つかりません。 しばらく後ヤフオクで程度が良さそうな中古を見つけ落札しました。
<815 について>
・ビーム送信管2E26を2本封入したオクタルベースの「
ツ インビーム送信管
」です。
カソード及びスクリーングリッドが2ユニット共通で引き出されておりプッシュプルでの三接・UL運用は不可能、ビーム管動作前提のタマです。
・丸くずんぐりした愛嬌ある容姿が魅力です。 管頂の2つのツノ(プレート)が耳の様で可愛らしさを一層引き立てています。
外観は可愛くとも内部は流石送信管、がっしりした電極保持とシールド構造及び工作は民生オーディオ球と一線を画します。
プレート損失は12.5W×2、Ep500VでAB2級なら1管で50W級の出力が得られます
。
815外観
段付きのメタル ベースが実にカッコイイ!!
但し経年劣化でベースが割れているものが多い。
電極 部拡大
プレートは直熱三極管の様な箱型構造(リブ無し)
ステムに
全幅
溶接されている。
<構想>
・既存の
プレイト・ライオードステレオアンプ
を 815プッシュプルに改造
します。
プレイ・トライオードステレオアンプは一つしかない部品を組み合わせたステレオアンプで、左右間で出力トランスと球が異なります。
出力トランスは
右:CR-8
、
左:CRD-8
ですが、運よく
CR−8
をもう一台入手したことから
両CH共CR−8に
揃えることが可能になりま した。
そこで球を含め左右同一部品の普通アンプに変更することにします。
<使 用部品・改造内容>
@出力トランス
・
左チャンネルを
CR-8
に変更しま
す。 取付けビスピッチは同一なので加工レス で交換できます。
・CR-8はCRD-8より一回り小型の出力トランスで、銘板に15W 50C/Sと記載されている以外仕様・詳細はさっぱり分かりません。
CRD-8と異なりP1-BとB-P2間の抵抗値(約170Ω)が等しくB端子も上下球共通になっています。
平 田タンゴ製 CR-8
詳細?謎?です。
A出力管
・記述の
815
を用いま す。
ソケットは元の 5998/5998Aがオクタルですからそのまま流用します。
・トッププレート配線は既設のプレート電圧測定用チップジャックからチップピンで引出し耐熱シリコン被服線で接続することにします。
プレートキャップは「フロービス」から購入したセラミック製9mmを用います。 中国製は手を加えないと装着できないものもありますが、このキャッ プは
何の問題もなくすんなり装着できました。
トッ ププレート接続状況
B前段管
・ドライバー管は改造前のL:
6MJ8
(CPT) R:
7N7
(ロクタル)を 両CH共
7N7
に変更しまし た。
815がメタルベースですので見た目の統一感からドライバー管もメタルベースの7N7を選択しました。
・ソケットは安価な中国製を用いました。 そのままではタマを挿し込めなかったのでセンターロック金具をラジペンで開き広げ、各ピンを千枚通しで
押し広げたところ、何とか挿入できました。
ロ クタルソケットの調整
嵌め合いを確かめながら少しづつ広げる
・初段管は改造前の
5965
/
6J6
から両CH共手元の
12AU7(5814)
に変更しました。 出 力管の感度が高くなる分前段の増幅率を下げる目的です。
・整流管
5T4
は変更な しでそのまま用います。
<回路>
@出力段
・電源トランス
ノグチPMC-170
の 320Vタップから100Ωの整流管保護抵抗を経由し5T4で整流しますから、Eb=300Vと想定しました。
電源トランスの容量からIp=40mAとするとEp=273V、バイアス−20V(OPTの電圧降下7V)を基準点としプッシュプル片側の2KΩ ロードライン
を引くと下図となりました。(Esg=200V) 出力8W程度と予想されます。
・スクリーングリッドの200Vは初段用の220V定電圧電源から供給します。
<
815のIp/Ep特性図
>
・カソード定電流回路による定電流運用とし音の解像を向上させます。 差動ではなく、音の好みからパスコンを入れた非差動運用です。
元々取付けられていた定電流ユニットを流用します。 両CHの定電流回路を一枚の基板に組込み放熱板と一体化したコンパクトなユニットです。
出力段定電流ユニット
シャー シに接着して放熱を促進します。
Aドライバー段
・7N7を改造前と同じ負荷抵抗20KΩ Ip=約4mAで用います。 初段とは直結、CRDによる差動回路です。
B電圧増幅段
・12AU7を負荷抵抗30KΩ Ip=約4mAで用います。 CRDによる差動回路で位相反転信号を得ます。
ドライバー段共に低μ管を用い、比較的低い負荷抵抗とすることで
良好な高域特性を期待します。
・私はプッシュプルアンプの初段に好んで
FET (2SK30A)
を用いますが、本機は例外的に球を使いました。
初段から出力段に向かって信号が大きくなると共に球が3段階に大きくなる見た目の演出目的です。
球アンプは
見た目も
重要です(; ^ω^)・・
。
全回路図 (クリックにて拡大)
<調 整>
・何時のの通り先ず誤配線、配線忘れ、はんだ不良、はんだ・線材屑落ちを念入りに確認します。
その後、初段12AU7と7N7を挿し
電 源を投入し、初段カソードの100Ω半固定ボリュームで上下管のプレート電圧バランスを確認・調整します。
最初EI製12AU7とシルバニア製7N7(中古)を挿しましたが、ボリューム中点で初段が約15%、ドライバー段で約30%の差異がありボリュー ム
を回し切ってもバランスをが取り切れません。 別の球に交換することにします。
EI 12AU7(金メッキ足!)とお疲れ感(X_X)/漂うSILVANIA 7N7
12AU7をNEC製に、7N7をRCA製の新品に交換すると初段で約10%、ドライバー段で約15%の差異となりボリューム端でやっとバランスし ます。
ちょっとイマイチなので更に別球を試すことにします。
NEC? 12AU7とRCA 7N7 SILVANIA製(?_?)
12AU7をECGの5814に変更すると初段で約5%、ドライバー段で約10%の差異となり少しボリュームを回すだけでバランスが取れました。
この組合せに決定します。
ECG 5814:やはり4桁管は違いました〜( ̄^ ̄)〜。
・次に815の電流調整ボリュームを抵抗最大に、NFB量調整ボリュームは最小にセットし815を装着、電源を投入します。
毎度のことですが、最初の電源投入はドキ(*゚д゚*)ドキです。
異常ないことを確認し様子を見ながら815の電流を徐々に上げます。
電流はカソード定電流回路の10Ω両端電圧で確認します。 確認用チップ端子にテスター棒を差込みを0.8V(=80mA)に調整します。
電 流確認用チップ端子と電流調整ボリューム
音楽信号を入れ正常に音が出ることを確認後NFB量調整ボリュームを徐々に上げ音が小さくなること、発振しないことを確認します。
本機はNFBボリューム位置3時(NFB≒12dB)以上で発振しました。
・10KHzの矩形波を入力しオシロで波形を観測すると50KHz付近でしょうか、リンキングを確認しました。
発信器AG-203の10KHz波形は本来肩が若干丸くなるのですが、入力側に帰還しているのか入力波形も肩が立っています。
・帰還抵抗220kΩに微分補正コンデンサ10pFをパラに入れたところ発振は収まり音もすっきりしました。 入力波形も本来の形です。
<微分補正前> <微分補正後>
(上波形:出力 下波形:入力 @L CH)
・B電圧は約300Vになると推定しましたが、完成後の実測は286Vでした。 古典整流管の内部抵抗が予想外に高いことが分かりました。
それでもクリップ直前出力は約9Wとなりました。
<完 成後のトラブル>
・電源投入後の立ち上がり時に小さな音ながらスピーカーからバッツとノイズがでます あれっ (?_?) 何か変です・・
。
スピーカーに耳を近付けてよ〜く聞いてみるとウーファー・スコーカー・ツィーター共ボツ・ボツノイズが出ています。
発振か? でも周期が変動します。
で回路図をよ〜くチェックすると・・ドライバー段用ヒーターバイアス回路にバイパスコンデンサーが入っていません。
本機のドライバー段カソードはヒーターに対し+40V程度ですから、僅かでしょうがヒーター・カソード間でリークする筈です。
そこでヒーターバイアス回路の100KΩとパラにバイパスコンを入れることにします。
時定数的には10μF程度が適当ですか、手持ちの中から47μF 160Vを選択、これを追加し解決しました。
<試 聴>
・何時もの
JAZZ
を 聞いてみます。 力感・中域の張出しが中々宜しい、ですがNFB量「0」では低域の締りがなく、ボヨーンとしています。
NFBボリュームを0時(≒6dB)まで回すと低域が明確に締ってきてダンビングの効いたすっきりした明るめの音になりました。
0(≒6dB)〜3時(≒12dB)がストライクゾーンでこれ以上(〜max約17dB)ではパースペクティブが浅くなる感じがします。
・多極管アンプですが前に広がる中域、適度に締る低域と高解像ながら耳を突かない爽やかな高域が良い、これまでの多極管のイメージ
が払拭されました、多極管を見直さなければ!。
・見ても良し・聞いても良し、お気に入りの1台がまた増えました!
・初段・ドライバー共にオタンコな低μ三極管を用いましたが、パワー管が力強い性格の様で上手くバランスが取れました。
更にいろいろ弄ればもっと良くなるとは思いますが、現状で特に不満はなく
一 旦これで完成とします。
*2021.08.20 追記
<気になっていた点>
・最近週末時間が増えたことから、気になっていた本アンプの不具合を改修することにしました。
・入力ボリュームMAX・NFBボリュームMAX時に200K㎐台の波形が重畳し発振気味になります。
<10KHz矩形波に重畳する波形>
・また、他のアンプと比べ低域の押し出しが薄いと感じていたので、合わせ手を加えることにしました。
<改修>
・先ず220K㎐波形重畳対策を行います。
・最初に寄生発振を疑い、5814と815のG1に1.5KΩを挿入してみましたが、効果なしでした。
・入力ボリュームの金属カバーがグランドから浮いていたのでアース線を接続しましたが、これもほとんど効果なしでした。
・NFB配線(単線)に浮遊容量による回り込みがあると考え、シールド線に変更したところ効果有りでした。
・まだ重畳が残っているので積分補正を試みましたが、どうやっても便秘な音になってしまいます。
そこで微分補正を10pF ⇒ 22pFに変更すると共にNFBラインに1.5KΩをシリーズに挿入してみました。
完全ではないですがこれで良しとしました( ̄∀ ̄)。
・次に低域の押し出し感向上を検討しました。
P氏がカソードパスコン容量と書かれておられますので、試しに815のパスコンを330μF ⇒ 1000μFに変更しました。
これは効きました!
、
半信半疑でしたが
大正解です
( ̄∀ ̄)//
。
<改修後試聴 高帰還、良いじゃないか!>
・先ず
THE DAVE BRUBECK QUARTETのTIME CHANGES
を聞いてみます。
あっ!変わった! NFB量を変化させても音場の奥行きに変化はなく、増加とともに臨場感が際立ってきます。
NFB MAX(約17㏈)ではスピード感が増し、ドラムのアタック1打1打が曖昧さなくマシンガンのごとく飛んできます。
・次は
THE OSCAR PETERSON TRIOのWE GET REQUESTS
です。
コントラバスが締り、深く沈みつつ弾みます。 低域の押し出し不足は完全に解消できました。
僅か10Wのアンプが38cmウーファーと2インチドライバーを十二分に制動している印象です。
・出力管カソードパスコンと多少の負帰還変更だけなのに、押し出し感と高帰還時の臨場感が大きく向上し、想像以上に結果OKでした。
高帰還アンプは食わず嫌いでしたが、考え直さなければいけなくなりました。
・今後はP氏・M氏のHPを参照させていただき、裸の高域特性改善と更なるNFB量増加によりどんな音になるのかを試したいと思います。
<総合特性>
L CH 10W(上)
L CH 10.5W(上)
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