立木神社境内のたかすけ稲荷は、巫女の託宣を経て山田家の宅地内の屋敷神稲荷が、村氏神の末社となった例である。たかすけ稲荷は別名げんろく稲荷とも呼ばれ、ご神体は「げんろく」ときざんだ自然石である。土地の人はげんろくとは狸の名で、この稲荷は狸を祀るものであると伝承する。
この稲荷の祭紀由来は、数代前の山田屋の女主人が糖尿病と眼病を患った際、巫女に祈祷してもらったことに始まる。そのとき「狸の祟りだから、狸を祀れば病気が治る」と宣託があった。そこで、病気平癒を祈願して稲荷を、屋敷内に祀り始めたという。
その後、現当主の娘さんがペニシリンによって眼を痛めたので、稲荷おろしの川崎なか氏に祈祷を依頼すると、「屋敷内に祀っている稲荷を放置しているから、眼を患ったのである。すぐ立木神社の境内に移して祀れ」と宣託があった。稲荷は立木神社境内の移され、川崎なか氏とその信者によって祀り続けられている。山田屋の屋号を「たかすけ」と呼ぶことから一般にたかすけ稲荷と名付けられ、眼病平癒を願う人々の信仰を集めている。
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