カスミンとコアラは社会科で使った資料を準備室で整理していた。
「あ、あのさカスミン。」
ちょっと気恥ずかしそうにコアラが呼びかけた。
「ん?」
「昨日聞いた【ベチャポン祭】の事だけどさ、」
「ああ、アレね、アレ。何だったの?」
正直、昨日コアラの口から’ベチャポン’なんて言葉が出たときには
カスミンは目がしどろもどろだった。コアラがカスミンに聞いたのは
大昔からの屋敷である霞家に住んでいるからだったのだが、無論
カスミンが答えられる訳がなかったのだった。
「いや、アレは聞かなかった事にして欲しいんだ。」
「・・あ、そう。・・・・そりゃ良いけどどうして?」
渡りに船のような展開にほっとしつつも、やはり気になる。
「何ていうのか・・その時までナイショにするのがしきたりだって。」
「ふ〜ん、しきたりねぇ〜。・・ま、その言葉は霞家で聞き慣れたし、
 分かった!みんなには秘密にしとくよ。」
「ありがと。後、早くカスミンにも来るといいな【ベチャポン祭】。」
「ふふ。楽しみにしてるね。じゃあ買い物急ぐから、また明日♪」

「ただいまぁ〜」
頭の中でスーパーの広告を比較しながらカスミンは部屋へ向かった。
「あれ?まだいたの?べちゃぽんてん?」
さっき帰ったんじゃないのと言いたげにポトポットが話しかけた。
「ちょっとぉ、今頃ベチャポンテンは無いんじゃない!?」
「え?・・あぁ?!ごめんカスミン。てっきりまだ、べちゃぽんてんが」
「まだ・・って、いたの?ベチャポンテン?!!」
「うん、仙左右衛門様とお話してたよ。」
「で、どんなんだった?」
「仙左右衛門様、怒ってた感じだったけど、結局べちゃぽんてんが
 言うとおりになったみたい。」
「ふ〜ん。ま、仙左右衛門さんが厳めしい顔してるのはいつもだし。
 あ、晩はイカ飯・・・は面倒だからパスしてイカの刺身でも、
 あでも、タイムサービス見てからでないと・・・。」
「大変だね、カスミン。」
「マッタクよ。何か変わらないかなぁ〜、なんてね。」
「そうなると思うよ、カスミン♪」
「や〜ね〜、優しくしたってオカズ増えないわよ。さ、買い物買い物!」

「蘭子さ〜ん、洗濯物置いときますよぉ〜。」
「丁度良かったわべちゃぽんてん、肩揉んでくれない?」
鏡を見たまま振り返らずに蘭子はカスミンに注文する。
「よくない。まったく。」
言いながらもカスミンは蘭子の肩をマッサージし始めた。
「えぇ〜、凝ってますなぁお客さんぉ〜。」
楽しまなければ損とばかりに悪ノリしてみる。
「そうなのよぉ、やっぱりバストが大きいと苦労するわぁ。」
負けじと定番で言い返す。
「っっへ、、、あーあー、そりゃ大変でしょうね。そんなの無い
 私にはぜーんぜーん分かんないもーーんだっっっ!」
「・・・・・じゃあ触ってみる?」
「へ?・・えぅぉぇえっっ!?!?!?」
プチ切れてぼやいた所に予期せぬ誘い言葉。呆気にとられるカスミンに
お構いなく蘭子は上着を脱いでブラ一つになった。
「ほら、お触んなさいよ。」
「え、でもぉ。。。」
「大丈夫よ、後で特別に言いつけるなんて事しないから。その代わり
 ブラの中に手を入れちゃダメよ。」
「は、はぁ。それじゃあお言葉に甘えて・・・失礼します。」
ふに。鎖骨に近い胸元の方を上から軽く押さえてみた。
「何やってるのよ、『胸を揉む』って言ったらこうでしょ。」
蘭子はカスミンの手を取ると脇の方へ引っ張り、手の平を上にさせると
乳房が寄せ上がるように持たせた。
「うわ・・・温かい。」
表面に触った時、ふかふかっとした軽い温かみがあったが
手が乳房に埋もれるにつれ、じっとりと弾力のある心安らぐ重さと
温かさが指先から体全体に広がっていった。
「ど〜お?温かくて気持ち良いでしょ〜。」
「あ、はい。それにスベスベしてなんだか・・・」
「なぁに?」
「なんだか落ち着きます。ってヘンですよね。男の人なら
 興奮しちゃって大変な事になっちゃうのに。」
激しく照れ笑いしながらも乳房をまさぐるカスミン。
「ん・・ぅ。そうね・・男の人なら大変なことに・・・・・。」
「ぁ・・・!!ご、ご免なさい!私そんなつもりじゃ・・。。。」
蘭子の表情の変化に気が付いて慌ててカスミンは我に帰った。
「いいのよ、気にしなくて。それより明日は頑張りなさいよ【べちゃぽん祭】」
「あ、はぁ・・へ?明日!?!!??!!」
「そうよ、だから少しでも免疫付けてあげようと思ったんじゃない。」
驚くカスミンに素っ気なく事実をさらけ出す蘭子。
「えでもでも、仙左右衛門さんは夕食の時に何も言わなかったじゃ
 ないですかぁ〜。」
「父さんが口に出すわけないでしょ。母さんはいつも通りだし。
 ま、それで私が切り出すしかなかったのよ。」
「はぁ・・切り出す為に乳出したんですか。」
「・・・・あんた、べちゃぽんてんに右脇腹の事言うわよ。」
「止めてください!あたしそっくりのベチャポンテンにまでばれたら
 私どうなっちゃうんですか!!ん、それよりベチャポンテンって
 本当は何のヘナモンなんですか?それに【ベチャポン祭】って
 何をするんですか?!?」
「まぁ、そんなに興奮しないの。明日になれば分かるわよ。」
「もぅ!それじゃ意味ないじゃないですか〜。」
「そんな事ないわよ。明日の為に私の豊満なバストを触れたじゃない。」
「そうなんですけどね・・・え?あ、あの!?えぅぉあ?!」
「さ、早く寝た寝た。それじゃお休み〜」
「あ〜ん、気になって眠れないよぉ〜。」

下校後、少しやつれた顔でカスミンは玄関を開けた。
「うう、結局ロクに眠れなかったよぉ〜。カエデちゃんやユリちゃんや
 先生にまで心配されちゃったよ〜。」
「あらカスミンさんお帰りなさい。」
「あ、桜女さんただいま。今夕飯の準備しますから。」
「今日はカスミンさんの好きなモノだけで良いですよ。」
「へ?」
「私達の分はおハニさんに頼んでありますから、味付けも
 カスミンさんの好きなようになさって下さいね。」
「はぁ・・・でも何でですか?」
「今日はカスミンさんとべちゃぽんてんさんの大事な日ですからね。
 ほら、お二人って似てるでしょ。だから味や料理の好みも同じなのかなぁ、
 って思いましてね。」
「・・はは、そ、そうですか。じゃあ私とベチャポンテンの分を
 好きに作らさせて頂きます。」
半ば感心しながら、チョット呆気にとられながらカスミンは答える。
「それで、お二人の分は露天風呂のお隣の部屋に据えて下さいね。」
桜女さんがわくわくしているようにカスミンには思えた。いつもより
口数が多く、テンポも速い。
「はい分かりました!・・あれ?上の露天風呂横の部屋って・・。」
「ええ、いつもは使ってませんよ。部屋の支度はしておきましたから。」
「済みません、何から何までお任せしちゃって。」
「いいえぇ〜、そんな事気になさらないでカスミンさんも支度なさいな。」
「は〜い♪」

夜が来た。
下駄履きの所で玄関の戸を見つめる霞家の面々。
カスミンは既に夕食の準備も終わり、部屋で待っていた。
窓は桜女さんの指示で開いてある。服も用意された和風(ヘナ風?)の
シルク状の上品な服に着替えた。
「何か時代劇の寝間着みたい」
そう言いながら部屋の中央に置かれた布団の上に座って、待っていた。
「貴方。」
「うむ。」
そう言い終わるのに合わせたように入り口がカラカラと音を立てた。
黒地の生地に金糸銀糸をふんだんに使った刺繍に赤い襟、
花魁(おいらん)そのものな格好だ。ヘナ風なデザインが無ければ
「カスミン、舞妓さんになる」なんてタイトルが流れそうだ。
「あら・・・・」
思っていた印象と違うのか、蘭子は意外と取れる声を漏らした。
「四つの季節で東の青龍が納める春を迎えし霞家に身をおかれる
 春野かすみが春を迎えしを此処に喜びと共に謹んで申し上げます」
人間が聞くと何だか分かったような分からないような祝詞のような
挨拶を花魁のような服を着た少女は、長い袖で胸元と手を隠しながら
恭しく家長の仙左右衛門に挨拶をした。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・むぅ・・・・・・・・・・・」
つつっ、と足先が家に入ろうとした
「まっ・・待て!」
少女と他の霞家&龍ちゃん達が驚いた顔で仙左右衛門に視点を合わせた。
が、少女は納得したように諦めたように
「あい分かりました。」
そのまま扉は音もなく閉まってしまった。

「あなたぁ、いいのですか?帰してしまって。」
「うぅむ。。。」
「この町に住んでいる人間の子が年頃になったのに受けさせなかったら
 問題になるんじゃない?父さん。」
「ううむ。。。」
「ねぇねぇ、【べちゃぽんさい】やらないの、おじじさま??」
「うむぅう。。。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
全員の視線に脂汗が出るのを待っていたかのように救いの声が
扉の向こうから発せられた。
「そんなに仙左右衛門様を苛めないで下さいな。
 ’霞家の者がべちゃぽんてんの式次第を守るのに勤めた’なんて
 誹りを免れませんものねぇ。ここは大人しく、表から入るのは
 諦めさせていただきます。では御無礼します。」
少し皮肉のある調子だが、べちゃぽんてんはそう言い残し表を後にした。
「・・・・・ふ〜ん、そういう事ね。」
納得した顔で蘭子が呟く。
「何が、そういう事なんだ。」
いつものしかめっ面で問いかける仙左右衛門。
「何って、父さんが止めた理由が、よ。」
「うぉっほん。まぁ、そういう事だ。儂は書斎に行っとる。仕事がある。」
あっさりと返された仙左右衛門はそそくさと逃げる事にした。
「じゃあ僕、アトリエに行ってるから。」
仙太郎、今日最初で最後の台詞。
「さ、私は風呂にでも入って布団に入っちゃおうかな〜。」
蘭子もさり気なく去って行った。
「龍ちゃんもおネンネしましょうね。ご本読んであげましょうか。」
「いい。りゅうちゃんひとりでみるもん!いくよみんな!!」
「あらあら。それじゃあアライさんポトポットさんデジ亀さんチン太郎さん
 濡れ雑巾さん、龍ちゃんに付いていってあげて下さいな。」
そうして賑やかな一行も廊下を歩いて行った。
「さて、私はどうやって時間を潰しましょうか。そうねぇ〜〜〜・・・」
一人残った桜女はとことこと居間へ向かった。

「さて、と。何処から忍び込みましょうかねぇ〜。その前に目的地は、と。
 う〜ん・・・ん?」
言うとおり表から入るのを止めたべちゃぽんてんは目標を探してみた。
鼻孔に美味しそうな香りが入り込んできた。
「あ、はーん、あそこかぁ。これ考えたの桜女さんかな?」
そう呟くとべちゃぽんてんは爪先でとーんと飛び跳ねた。
「取り敢えず、ここからお邪魔しまぁーす。」
目的地を見つけたので、兎に角入れそうな所から窓を開け
中に入る事にしたべちゃぽんてん。が、えてしてこういう時に
「あ!カスミン!じゃなくてべちゃぽんてん!!」
一番面倒そうなのにぶつかるのだったりする。
「あらまぁ、あんた龍王様の息子の」
「りゅうちゃんだよ!」
「久しぶりねぇ〜。前は赤ん坊だったのに、すっかり大きくなって。」
「りゅうちゃんあかちゃんじゃないよ!それよりべちゃぽんてん、
 【べちゃぽんさい】ってなにするの?」
「ヘイ湯ー。カスミンの大事な事だから気になるのよ。」
「自分も式次を撮影したいであります!」
「でも人間の為の儀式なんだにぇ〜。ヘナモンが絡んだら
 良くないかもしれないんだねぇ〜。」
「あの、その祭りってお掃除出来るんでしょうか。」
「も、みんなうるさーーいっ!りゅうちゃんはしりたいの!」
揃いに揃って賑やかくなった所で
「はいはい、分かった分かった。確かに人間用なんで普通はヘナモンに
 教えたりはしないんだけど、龍王様の息子の頼みとあっちゃあ
 少しぐらいは教えないとね。」
「えっへん!!」
「じゃあ、龍ちゃんの部屋にみんなと行こうか。そこで話してあげるよ。」
「やったぁ〜♪」
かくして一同は龍ちゃんの部屋に集まった。
「ねぇねぇ、つれてきたからおしぇてよぉっ!」
「はいはい。それじゃあ先ずみんな息を吐いてぇ〜。」
フーっと一同息を吐く。そこにススッと近づくべちゃぽんてん
「はい大きく吸って。ふ〜〜〜〜〜〜〜〜〜・・・・・・・」
吸う息に混ざるように濃い蜜のような吐息を吹きかけるべちゃぽんてん。
「あれぇぁえ、なんだかりゅうちゃんねむくなってきちゃった。」
「オレっちもトロトロリ〜ンなんだにぇぃ〜」
「自分も就寝したいであります。。。。」
「お休みなんだね〜。」
「ヨダレ垂れたら拭きますねぇ〜」
「チーン・・・・・」
みんな眠ってしまった。
「嘘付いてないわよ。眠っている間に済ませる祭事なんだから。」
そう言いながら龍之介に近づき
「もう少し大きくなったら御相手して差し上げますからね。チュッ♪」
頬に軽くキスをし、部屋を出ていった。

「遅いなぁ〜、食事冷めちゃうよぉ〜。何をどうするのかも分からないし、
 も、みんなどうしたのよぉ〜。」
ちょっとずれた所を心配してるカスミン。が、部屋のドアが叩かれた。
「もし。あなたが春野かすみさんかぇ?」
「あ、はい!どうぞ!」
「ふふ。元気良いのね。悪いけど決まり事だから目を閉じていてね。」
「はぁ・・・。つむりました。」
スッと扉を開けカスミンに近づくべちゃぽんてん。先程の要領で
「ちょっと息を吐いてみて。・・・・はい吸って」
ふぅ、とカスミンの鼻に息を送ってみる。
「ふふ、くすぐったいよぉ〜。」
先程と何ら変わることなく元気に答えるカスミン。
「?ちょっと待って。さっき使ったから薄く・・・な訳ないし、」
再度息を吹きかけるべちゃぽんてん。やはり変化ないカスミン
「こうなったら・・・・・・よし。もう一回だけ息を吐いて!」
暫く体をうねうねとくねらせた後、カスミンに息を吸う準備をさせた。
息を吐くのを止めるのを見計らい、べちゃぽんてんは彼女の口で塞ぎ
鼻を唇で覆い、ねっとりとした息を吹き込んだ。
「ぅぅぅっ!・・・ぐはぁーーー!!何するのよっ!!!」
目を閉じたまま訳の分からない目に会わされ、当然の抗議をするカスミンに
べちゃぽんてんは驚きとも諦めとも取れる溜め息をした。
「はぁ〜・・・。ひょっとして・・・・。もう良いわ、目を開けても。」
「なんなのよ〜一体!・・っって、あなたがベチャポンテン!?!」
「そうよ、初めまして。って、初めてな気がしないわねお互い。」
「そうだね、へへへ。」
二人とも何とも緊張感の欠片もない初対面だったりする。
「ねぇねえ、さっきのアレ何だったの?」
当然の質問をカスミンはぶつけてみた。
「あぁ、アレは催眠状態になる術なんだけどね、ヘナモンでも人間でも
 効くから便利なのよ。」
「でも私全然なんともならなかったよ。」
「う〜ん、そこなんだけどさぁ〜〜。なんってのかなぁ〜〜。」
「悩む時のクセまで私そっくり・・・」
「そう!そっくり!そっくりだと効かない術なのよ、簡単に言うと。」
「ふ〜ん、そういうもんなんだぁ。」
「まぁ、術にワザと一ヶ所抜け穴を作ることで他を完璧にするってのは
 人間でもやることだしね。でも困ったわねぇ。」
「何が?」
「うん。あのね、いつもなら催眠状態にして10分と掛からないで
 ちゃちゃっと終わるんだけど、効かないとなると時間をかけて
 じっくりほぐすしかないのよね〜。」
予定外の事に頭を大回転させるべちゃぽんてん。そんな姿を見て
「ねぇ、何をどうすれば良いのか分からないけど、取り敢えず
 晩御飯にしない?折角作ったのに冷めちゃうよ。」
「それもそうね。なんとかなるでしょ!そうと決まれば早速頂きましょ。
 うわぁ〜、私の好きなのばっかりじゃないの。誰かから聞いたの?」
「ううん、私の好きなの作っていいって桜女さんが。」
「そぉ〜。ほんとに似てるわね、あなた。」
「ふふ、カスミンって呼んで。みんなそう呼んでるし。」
すっかり打ち解けて和気藹々と食事をする二人であった。

「はぁ〜、美味しかったわぁ〜。なんか自分の家にいるみたい。」
「どういたしまして。お茶入れるね。」
「ありがとさん。そう言えば霞家ってお茶の好み細かいでしょ。」
「そうなのよーっ!って最近はポトポットがやってくれるけどね。
 ・・・あの前から聞きたかったんだけど、良いかな?」
「なぁに?カスミン。」
「ベチャポンテンって何のヘナモンなの?そう言えば【ベチャポン祭】って
 何をするの??」
やっと来ましたか、といった顔をしながらべちゃぽんてんは口を開いた。
「そうねぇ・・・カスミンは捨ててある大人の安い雑誌を見たことある?」
「う、うん。ごくたまに。」
「そう。その雑誌の一番裏にカタログがあるのは知ってるかしら?」
「・・・・・・・・ちら、、とだけ。ホントにチラだよ。」
イケナイ事だと分かっているのだろう。少しばつが悪い顔をするカスミン。
「良いのよ、自然なことなんだし。なんとなく分かってきたでしょ。」
諭すように段々と優しい目になっていくべちゃぽんてん。
「え。。。あの、それってひょっとして、あなたって、え、あの、、、」
「そう。そういうののヘナモンなの。乱暴にいうとね。」
「じゃ、じゃあ【ベチャポン祭】ってのはつまりそのあのえとんと、、、」
カスミン、思考回路が焦げ付き寸前。心臓がばくばく脈打ち
端から見ていても可哀想なくらいに慌てふためいていた。
「その辺は一緒にお風呂入りながら話してあげるわ。」
すっと立ち上がるべちゃぽんてん。
「あ、その前にと。これを置いとかないとね。」
べちゃぽんてんは袖の中からミニチュアの衝立(ついたて)を
あちこちに配置していった。
「??それどうなるの?」
「これかい?これで仕切ると音や姿が外に漏れるのを防いでくれるのよ。
 外の風呂場も仕切っちゃおうかね。恥ずかしくないようにね。」
べちゃぽんてんが外に出ている間、カスミンの頭の中は
(そ、そうか・・やっぱお風呂入るんだ、二人で。ははっ。)
とドキドキがいっぱいになっていた。
「お待たせ〜。それじゃあ入ろうかね。」
べちゃぽんてんはサクサク脱ぎ始めた。
「あ、うん。ぇ?・・で、でぇぇーーーっ!」
「何々?!?どうしたの!?!」
「なにそれーっ!!!!」
カスミンが指さした先には美しさの限界にまで張り詰めた乳房があった。
「何って、乳房じゃない。」
べちゃぽんてんがさらりと言ってのけるとカスミンは部屋の隅で
「ふんだ。蘭子さんといい、ベチャポンテンといい何よ何よ。みんな
 そんな立派なオッパイしててさぁ。私なんか・・・・・・・・・・・」
いじけてしまった。
「私だって初めはあなたと同じだったのよ。気にする事ないって。
 スグに大きくなるわよ。」
「でもさぁ・・・。ベチャポンテンみたいに大きくはならないよ。」
「心配ないって。それにHは全身でするモノよ。」
「そうだけどぉ・・・え?えぇぇえっっ!!?!??!」
「ふふ。さぁカスミンも脱いだ脱いだ!」
「いやぁ〜っ!自分で脱げるからイイ〜〜〜!!!」
カスミンは襲われまいとテキパキ脱いですっぽんぽんになった。
「えーと、タオルはここかな〜?」
べちゃぽんてんは襖を開けた。
「・・・ちょっと多すぎ。」
べちゃぽんてんは大量の手拭い・バスタオル・シーツを見つけた。
「うぅむ。ここまで期待されちゃぁ、応えるしかないわね。」
「こたえなくて良いぃっ!」
妙な会話をしながら二人は露天風呂に向かった。