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肥料 |
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耕作地の土壌下層に燐酸、加里、石炭など無機質成分が豊富にあること、作土に有機質が豊富であることが茶園土壌としての理想的な土壌(愛知県農林部『茶の奨励』)といわれる。
市内上町の茶園の場合、戦前では〆粕(豆粕 干鰯)、菜種粕(油粕)、堆肥(敷藁を含む)、鶏糞、下肥などの有機質肥料が中心であった。
無機質肥料では、窒素質の硫安が主であった。
戦後は、次第に化学肥料の割合が多くなったが、なお茶の含有成分や味を重視して有機質肥料を多量に施用する向きがある。
『安城農報』(県立農試内安城農芸研究会 昭和六年六月刊。第九〇号)の「愛知の銘茶−西尾茶と渥美茶−」の西尾茶の特色欄によれば、科学的な調査、分析の結果「茶の香味、色沢の根源をなしている物質の多くは、何れも窒素化合物であるか、又はそれに関係のあるもの」で、施用肥料の成分と施用形態との密接な関係を強調し、窒素成分を主とした硫安、下肥、〆粕、油粕、草肥等の施用を奨励している。
具体的な分析の結果をみると、愛知県立農事試験場の調査による「西尾茶の品質と所含窒素量」は、西尾茶の窒素成分の含有量と他産地のそれとを比較分析してみると標本の抽出法は不明であるが、この試験結果では西尾茶の玉露の一番茶は宇治の玉露以上に窒素量が多かった。
西尾茶による試験結果ではないが、窒素肥料による窒素成分の含有量の増加が良質茶の生産に欠かせない要素となっていることを実証する試験データーが併載されているので、つぎに抄録する。
窒素量は〆粕(干鰯)で充て、燐酸、加里成分はいずれの試験圃も同量でおこない、施用肥料中の窒素量を加減した一番茶に含まれた窒素成分を調べると、窒素質肥料を多量に施用すれば、それだけ茶の成分にも窒素含有量が増加することがデータから明らかである。
上等茶の手摘み葉は原則として一枝(一本の新梢)三葉を摘採する。
その一本の梢の各葉中に含まれた窒素の成分量の割合を分析した結果、「西尾茶は窒素成分が豊富であるから良茶の出来るのは当然」であって、「窒素成分に富む生葉程優秀な茶となる」と記してある。
新梢の先端ほど窒素成分の含量が多く、第四葉は第一葉に対し2.05l窒素成分が減少している。
それだけ澱粉、タンニン等の含有量が増し苦味が強くなる。
「茶専門の鑑定家の嗅覚、味覚及び視覚に依って鑑別」される従来からの茶の品質の審査方法によって分類した茶について、窒素成分の含有量を分析した結果があるが、上物と並ものとを比較した場合は、上物の方が窒素成分の含有量が多い。
碾茶は覆下園茶、煎茶は露天園茶で、覆下園はタンニンを抑える効果が大きいため、碾茶が煎茶より窒素含有量が多いという結果がでている。
また、一番茶が二番茶より優れている。
これらの結果から、「西尾茶の栽培は他の地方、例えば京都とか静岡等の先進地に比べて、進んでいるとも決して劣って居らぬ。
その施肥料や施肥法の点から云うて、決して他に比べて遜色がない。
茶園の手入れの点から云うても決して静岡や三重県などのそれに優とも劣らぬ。
土質や地勢の点から云うならば恐らく最も優秀な条件を具備していると云える」と述べている。 |
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