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下揉 |
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以上の作業は製茶場主あるいはその家庭や使用人が行い、この後の作業は茶師が行う。
茶師の作業場には、一人に一基あて、炉という土で築いた籠のようなものがある。
炉の大きさは、だいたい高さ三尺(90a)、長さ六尺、幅三尺で、側面に焜炉のように火力を調整する通風口がある。
炉に堅炭7.5キログラム(四貫目入りの炭俵の半分)を、およそ二尺(60cm)四方に一本ずつ積み上げ、その両方の炭の切り口に焚き付き用の材を置いて火を付ける。
また、堅炭の上一面に衣といって焚き付き材で覆う製茶場もあった。
この半俵分堅炭で、茶師一人が一日中の作業を行う。
炉の上には、煉助炭と呼ばれる、太さ約一.五aの鉄棒を八本並べた桟の上にアジという金網を乗せ、その上にブリキ板を(板鉄)を敷く。
その上に焙爐を乗せて茶揉みをするのである。
焙爐の面積は炉と同じ(長さ108センチメートル、幅90センチメートル)で、縁は高さ約15センチメートルの木枠で組み底は大屑(和紙、焙爐用紙という)を三枚重ねに張り合わせた物である。
茶揉み作業中は、あらかじめ10〜15センチメートル四方に切った貼り紙(修繕紙)を用意しておき、底紙が破れたときはこれを貼って補強する。
底紙は磨り減ったり破れたりするため補強するので次第に厚くなる。
茶師は一焙爐に生葉で三.七五キログラムの蒸し葉を入れて、まず約三〇分間葉打ち作業を行う。
この葉打ちは、乾燥の手返しと、水分で重なった葉を一枚一枚に離れさすための作業で、両手を使って一掴みずつを軽くほおり上げ、焙爐に散って落ちるようにして乾燥させるのである。
これを露切りともいい、この間は炭火を強くして作業をする。
つぎに茶葉の「ころがし」作業を約40分間行う。
これは両手で左右に茶葉を転がすようにして縒りをかけるのである。
茶師は両手に軽く茶葉を掴み、手返しをしながら焙爐底の紙面に手をすり付けるようにして動かすと茶葉は縒れる。
これまでの作業は茶師のうちでも下揉といわれる者が行う作業でこの後の加工は技術の優れた上師といわれる一人前の茶師の作業である。 |
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