長野県下條村、飯田市視察研修報告書 星野雅春
日程平成18年1月30日(月)〜31日(火)
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1、長野県下條村村長 伊藤喜平さんへの訪問
・視察のねらい
下條村は刈谷市の市民休暇村があリ、刈谷市民が大勢訪れるところでもあります。また、市の産業祭りなどへの農産物や乳製品の出展などかかわりの深いところです。下條村長伊藤さんの評判は昨年、長野県知事田中康夫さんとの接見の仲でも話題になった人でもありす。また、下條村での工場建設の仕事に携わった近所の人の『自治体の規模は違うが、改革する村長の姿勢を学ぶといい』とのアドバイスを受け、尋ねることとしました。伊藤村長は就任以来職員の意識改革を進め、最大職員数59人を37人に減員し究極の行革を実現しました。さらに、道路の舗装、側溝敷設などの簡便な土木工事は住民自らが工事を施工し、村は材料だけ支給する資材支給事業の実施など特筆すべき改革をしています。村長の村づくりにかける熱い思いを伺うことにしました。
・成果
下条村役場に着き、庁内へ入った印象は来庁する村民も職員もいないなと言うのが第1印象でした。伊藤村長の執務する机は1階事務所の一番奥にあって、少し身を乗り出せば全職員が見渡せる位置にありました。失礼ながら、まるでどこかの事務所の社長さんという雰囲気でした。
伊藤さんは平成4年に村長就任時、職員の旧態依然とした体質や前例踏襲などのぬるま湯だったと振り返ります。人口は減って行き優秀な人材は村外へ流失するなど、何もないことへの危機感だけはあったと言います。
行政に民間意識の導入を訴えた伊藤さんはまず職員全員を、民間物販店で研修させることにしました。お金を頂くことの厳しさをじかに体験してもらうのがねらいでした。それも行政の忙しいときにあえて研修を取り入れたのでした。職員は55〜60%の能力しか出していない。能力を引き出すのはトップの姿勢で、職員の能力は高いと断言します。職員の意識が変われば、職員は多いとの自覚が生まれ、退職者への不補充でも住民サービスは低下することはなかったと言います。
職員の意識が変わると村民の意識も変わりはじめました。そこで資材供給事業を始めました。はじめは行政の責任放棄といわれたが、こうした事業がめぐりめぐって住民に帰ってくると理解され、年間100件ほどがこの手法で行われています。こうして“浮いた”お金は中学生までの医療費無料化や若者定住アパート建設などに生かされていて、国の出生率1.27を大きく上回る1.97を実現しています。
地方交付税が減らされ小さな自治体は合併へその救いを求めている中、下條村は合併せず独自の村づくりを進めていくことを宣言しています。村長はじめ、職員や議会、住民それぞれの重大な覚悟と決意がなければできないことです。
刈谷市は財政的には豊ですが、なんでもかんでも行政へと言う依存体質がまるで糖尿病のように深く静かに潜行しているように思えてならない。豊であるがゆえになおさら節約や無駄遣いの排除などの行革を忘れてはならないと痛感しました。
2、飯田市・飯田市自治基本条例について
・視察のねらい
飯田市は平成15年度から自治の理念や原則、市民、行政の役割などを定めた憲法ともいえる飯田市自治基本条例の制定を進めています。全国で自治条例の制定が広がりを見せていますが、議会発議によって条例制定するのは飯田市が初めてです。近年、議員発議による条例制定が顕著になってきました。もともと立法府と言われながら立法に携わってこなかったと言う反省から、政策立案能力を高めることや条例制定の先例研究の必要性を感じていました。
今回、飯田市の議員発議で条例提案する経過を研究することで議員提案の条例制定と自治基本条例の両面を学ぶことを目的としました。
・成果
飯田市議会は平成14年度、地方分権社会を迎え市民に開かれた議会、より活動する議会にするための課題を抽出し、それらの課題を研究と議論を通して議員自らが現状認識するとともに、新たな提案をする為に『議会在りかた研究会』を設置し、1年間研究討議しました。
研究テーマは@議会はいかに民意を汲み上げるか?A政策立案のために何をなすべきかB議会審議をいかにして改革するかC市民に開かれた議会とする為に、の4点をテーマとしました。
@として議員定数削減Bとして一問一答方式の導入、質問席の設置Cはホームページの開設、会議録の検索などの導入を図りました。
Aとして議会の条例制定能力を高め、政策立案型の議会への転換を目指すことを目的とした『議会議案検討委員会』を設置しました。
検討委員会の議論を踏まえて自治基本条例の制定の必要性を確認しあいました。
自治基本条例の制定の取り組みは、議会が地方自治運営の主体として、その本来の機能を発揮するために、市民、行政と共同して作業を進めようとするものです。
条例設置の手法として、全国初の議会が設置した市民会議によって審議されてきました。2年間で述べ35回を越える会議を重ね最終答申が出されました。平成17年度にはも、市議会に特別委員会が設置され条文素案の検討などがされました。同時に地区説明会を20地区で議会が開催し、1800名の参加がありました。こうした長く精力的な取り組みによってこの9月には条例が制定される見通しです。『わがまちの憲法』と位置づけられた飯田市自治基本条例は、前文をはじめ8章、34条の条文からなり、わかり易い言葉と内容で表現されています。
地方分権が叫ばれ、文字通り自らの責任において治める地方自治は、多様化、高度化、複雑化する市民要望に的確に答えていかなければなりません。こうした市民要望に応えていくこと、すみよい街づくりを推進していくには、施策の決定や評価に市民の声を反映させることや、市民協同の理念が必要不可欠な要素です。街づくりに市民の参加が積極的に展開できるような仕組みづくりが自治基本条例と考えます。
条例制定に向け、積極的に市民参加を求めたのも、条例の理念を反映したものでした。議会が足掛け3年にわかって、粘り強く、精力的に市民を巻き込み、条例制定に向けた努力は賞賛に値すると思います。議員提案の第1号が自治基本条例と言うことも意義深い。また、議員提案の条例制定はともすると議員のパフォーマンスになりやすい一面もあるが、飯田市の議員提案のひとつのプロセスとして参考にしたいものです。(文責 星野雅春)