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1.ノー・マンズ・ランド NO MAN'S LAND (2001年仏・英・伊・ベルギー・スロヴェニア)<4.0>
[監督]ダニス・タノヴィッチ
[出演]ブランコ・ジュリッチ、レネ・ビトラヤツ、フィリプ・ショヴァゴヴィッチ、カトリン・カートリッジ
[時間]98分
[内容]1993年6月。ボスニア紛争の最前線が舞台。霧で道に迷ったボスニア軍の兵士達は敵陣に入り込み、気づいた時
にはセルビア軍の攻撃を受けていた。唯一の生存者チキは、何とか塹壕にたどり着き身を隠す。そこは、ボスニアとセ
ルビアの中間地帯“ノー・マンズ・ランド”だった。偵察に来たセルビアの新兵ニノと老兵士はボスニア兵の死体の下に
地雷を仕掛けて引き上げようとする。その瞬間、隠れていたチキが二人を撃ち、老兵士は死に、ニノは怪我を負う。チキ
とニノの睨み合いが続く中、死んだと思われていたボスニア兵が意識を取り戻す。しかし、少しでも体を動かせば先程
仕掛けた地雷が爆発してしまう。チキは怪我を負っても身動きできない仲間を気遣いつつも敵兵ニノに眼を光らせるの
だが・・・。
[寸評]2001年アカデミー賞で外国語映画賞を受賞した作品でレンタルで観る事を待ち望んでいた。「プライベート・ライア
ン」「ブラックホーク・ダウン」のような過激な戦闘シーンを見せないながら、ボスニア・セルビア・国連軍・マスメディア等
の立場を多面的に描写する事によって”戦争”を痛烈に批判し、世の不条理を訴え、強烈なインパクトを与えてくれる作
品だ。兵士達のどうにもならない仕草をコメディ風に描写しているところは今までの戦争映画と趣きが異なる。何より腹
が立つのは国連軍の”事なかれ主義”とマスコミの利権主義。どこの国・地域を問わず結局、人間社会はこんなもの
か!と思ってしまう(偉そうな事は言えないが・・・)。本当に最後のシーンは哀しいなあ・・・。あれほど「世の不条理」を
辛辣に表現した方法もないかと思うな。
2.活きる 活着 (1994年中)<4.5>
[監督]チャン・イーモウ
[出演]コン・リー、グオ・ヨウ、ニウ・ペン、グオ・タオ
[時間]131分
[内容]中国の1940年代から話は始まる。資産家の息子の福貴(フークイ)は賭博に明け暮れる毎日で、とうとう賭けの負
けが積もって全財産を失い、屋敷も乗っ取られる。身重の妻の家珍(チアチェン)は愛想をつかして幼い娘を連れて実
家へ戻ってしまった。しかし、半年後、長男が誕生した事と福貴が賭博を止めた事を聞いて福貴のもとへ戻ってくる。
困窮する一家の家計を支えようと福貴は得意の影絵の巡業を始める。そんな矢先、福貴は国民党と共産党の内戦に
巻き込まれてしまう。福貴は仲間の春生(チュンション)と共に何とか生き延び、家族のもとに戻って来られた時は、共
産党の勝利が決まり内戦が終結した後だった。 しかし、娘は高熱による影響で口がきけないようになってしまってい
た・・・
[寸評]近年「あの子を探して」「初恋のきた道」で話題になったチャン・イーモウ監督の1994年製作の本作品が昨年劇場公
開された。愛知県では上記の「ノー・マンズ・ランド」同様に単館上映だったのでレンタル化されるのを待ってようやく鑑
賞。1940年代から50年代・60年代・それ以降と段階を経て、福貴・家珍の家族(一般庶民)の視点から中国の激動の
時代を見つめ、その中で家族が懸命に生きる姿を描いた作品である。中国の歴史も感じ取れ、話の内容も十分引き込
まされる優れた映画なのだが、可愛い子を持つ親の立場としては、この内容は非常に辛すぎる。コン・リー演じる家珍
の視点ではなく完全に福貴の視点で中国を見つめている。非常に体制云々の中で生き抜くのは辛い。ましてや、家族
に襲うとんでもない災難の連続。それでも福貴は生き続ける。その源は何といっても妻の家珍の支えにある。彼等の
姿勢に何とも胸を打たれた。私には幸い可愛い家族がいる。家族を守るために、この厳しい時勢・会社の中での自分
の先行き等、自分の能力を考えると最近不安でしようがないのだが、この作品を観て”ともかく活力をもって頑張らね
ば!”と肝に命じた。皆様にもおススメしたい作品です。
<追記>本作品の公開時のコピーが非常に良い文言だと思う。
”昨日より今日、今日より明日きっときっといいことがある。”
3.オールド・ルーキー THE ROOKIE (2002年米) <4.0>
[監督]ジョン・リー・ハーコック
[出演]デニス・クエイド、レイチェル・グリフィス、ジェイ・ヘルナンデス、ブライアン・コックス
[時間]128分
[内容]ジム・モリスは昔マイナーリーグでプレーしていたが、肩を壊してメジャーリーガーになる夢を絶たれた。35歳になっ
た現在では、テキサスの高校で化学を教える傍ら野球部の監督を務め、妻と3人の子供で平穏に暮らしている。そんな
彼に転機が訪れた。ある日ジムが部員を指導中、キレのある豪速球を繰り出していることに周囲が驚き、彼自身も肩が
幾度の手術の影響か?完全に治っていることに気付く。そしてジムは野球大会で覇気のない部員たちに「夢を持て!」
と諭していたら、逆に「先生こそ夢を追うべき!」と刺激される。そこでジムは部員達に“地区大会で優勝したらプロテス
トを受ける”と約束する。やがてチームが優勝し、ジムは妻に内緒でテストを受けるのだが…。
[寸評]1999年に実際にメジャー・デビューを果たしたジム・モリスの実話に基づいた作品で、一度夢を挫折した男が、家族
達の愛情にも支えられ、夢を実現させる内容だ。夢を追い求める素晴らしさ、家族愛・周囲の支援という温かさの重要性
を感じさせられ、素直に感動させてくれる。妻や子供達に「お父さんは今頑張っていて輝いているんだ!」という姿勢を
見せられる事には憧憬を抱くなあ。最後の、一線を画していた父親にモリスがボールを渡すシーンもいい。その時、私は
自分の子供達の可能性の芽を今後、上手く大事にしてあげられるのか?と感じ入ってしまった。なかなか良い作品であ
るが、あまりに話が綺麗にまとまりすぎているのが欠点かな。もう少し、モリスが過去挫折した状況を描写するとか、剛
速球が投げられる経緯を示してくれると良かったかな。
4.モロッコ MOROCC0 (1930年米) <3.5>
[監督]ロイス・D・ライトン
[出演]ゲイリー・クーパー、マレーネ・ディートリッヒ、アドルフ・マンジュウ
[時間]92分
[内容]モロッコ駐在外人部隊の一兵卒のトムは名うてのプレイ・ボーイだ。キャバレーの歌姫のエミーには彼女に心を寄
せる紳士ラ・ベシエールがいたが、エミーは粗野なトムに心をひかれる。しかし、トムは上官の夫人の嫉妬を買ったこと
もあって傷害事件に巻き込まれ、サハラの戦線に出る。絶望の日々を送るエミーはラ・ベシエールの情にほだされ婚約
する。その披露パーティの日、トムが重傷を負ったと聞いてエミーはいたたまれず、ラ・ベシエールと現場に駆けつける
のだが・・・・。
[寸評]今から73年前に製作された古き名画。1/6に三重TVで放映されていたが、録画をし損ねたので、今回レンタルで拝
見してみた。本作品は日本で初めて字幕スーパーで上映された記念碑的な作品。話の内容は極々単純で正に恋愛映
画の古典。結局、昔も今もしかりなのだが、(ひがみが多分にあるが)格好良くて口が上手い男はもてる。男がどことな
く危ない雰囲気を漂わせ、地に足を着けていなくても、多くの女性が惹かれてしまう。つまり、もてる人間は幾らでも女
性に不自由をしなく、その一方で割を食う人間が多数発生する、という図式が成立する。エミーもそんなトムに惹かれ、
幾ら金持ちで優しい紳士が歩み寄っても結局はトムをとことん追い求める・・・というお話。最後の砂漠でトムを追いかけ
るシーンというのが、映画史に残る名シーンとの事だが、私は「人間はやはり偽らず正直に生きるべきなんだ!」という
メッセージを発している感じがした。本作品のような恋愛模様って不変なんだよね。一つ特筆すべき点はエミーの歌の
シーンが魅力的で、かつ彼女のタバコを吸う姿が決まっている事だ。私は実生活では、女性がタバコを吸う姿を見ると
一気に(例え美女でも)興ざめするが、何故かエミーの姿は格好よく感じたな。
5.ゴッドファーザーPARTU THE GOD FATHER PARTU(1974年米) <4.5>
[監督]フランシス・フォード・コッポラ
[出演]アル・パチーノ、ロバート・デュバル、ダイアン・キートン、ロバート・デ・ニーロ、タリア・シャイア
[時間]200分
[内容]1958年。二代目ドン・コルシオーネとなったマイケルは妻ケイ、兄フレド、義兄で相談役のトム・ヘイゲンらのファミ
リーに囲まれて息子の聖餐式のパーティを開いていた。父の時代と異なり大企業化したファミリーの運営にマイケルは
日夜、頭を悩ましていた。マイケルの父ビトーは9歳の時に故郷シチリアで両親と兄を殺され、移民団に紛れてニューヨ
−クへ渡ってきたのだが、豪胆な若者に成長して地回りのボスを倒し、裏社会でのし上がって”ゴッド・ファーザー”とな
ったのだった。その跡を継いだマイケルの敵は、マイアミを本拠とするユダヤ系マフィアのボス、ハイマン・ロスであり、
政府の犯罪捜査委員会であり、キューバ進出計画を台無しにした革命軍であり、更には敵と内通する身内であった。
ファミリーを守るため、マイケルは事あるごとに冷徹な判断を迫られる。そんな彼から妻のケイも離れていく・・・
[寸評]昨年秋に「ロード・トゥ・パーディション」に感銘を受けて、急にギャング映画で名高い「ゴッド・ファーザー3部作」が観
たくなった。10年以上前に第1作目をレンタル?で観て面白かったものの、2作目・3作目も時間が長いため、今一つ挑
戦するのをためらっていた。妻は3作目まで過去に観ていて「面白かった」と言っているので、昨年末に奮発して「ゴッド・
ファーザーDVDコレクション;30周年記念スペシャルBOX版(3部作+特典Disc)」を購入し、1作目を久々に観た上で2作目に
のぞんだ。二代目となったマイケルが自らファミリー(組織)を守るために苦悩する中で、父親の若き姿と交錯させなが
ら描かれた一言でいうと”重厚にして壮大な作品”である。1作目と併せて観てこそ価値のある内容だ。元来、5時間
30分の内容をカットして3時間20分(これでも十分長いが・・・)にまとめたため、全般の話は分かるものの、細部の、特
に中盤のマイケルとロスの抗争の駆け引きのところが非常に分かりにくい感じがする。(この言葉はどこまでが本音な
のか?等、1作目も同様な事が言えるが・・・)この辺は後でDVDの音声解説を聞けば少しはクリアになるのかな?
それにしてもアル・パチーノもロバート・デニーロも本作品時は非常に若くて格好良いね。ロバート・デニーロの老練時
のドン・コルシオーネの口調を見事に真似た演技には脱帽。1作目は堅気なマイケルがマフィアに入り込む姿、2作目は
彼を取り巻く色々な人物の思いが種々に描かれている。好きでマフィアの家に生まれた訳でもないのに、元来病弱で
悪妻にも振り回され、組織にも貢献できずに裏切り行為をし、最後には制裁される兄フレドの姿は痛々しい。2作目の
マイケルは非常に冷徹な印象が強く、「マイケル!お前はそこまでやるのか!」という感じだ。あの世界は実際そんなも
のなのだろうか?ケイがマイケルに浴びせた言葉(マイケルに殴られるが)は強烈で、あれほど男として悲しい事はな
いだろう。ラストのマイケルの苦悩な表情のアップ・シーンが非常に作品内容を象徴していてインパクトがある。マイケ
ルよ、後に君はどうなるのか・・・・そんな期待を寄せて3作目を観てみよう。
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