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1.アース EARTH (2007年独・英) <4.0>
[監督]アラステファー・フォザーギル、マーク・リンフィールド
[出演]<ナレーション>パトリック・スチュワート (日本語版:渡辺謙)
[時間]96分
[内容]英国BBCが、地球全体を対象をに、徹底的に映像重視のコンセプトで大自然の驚異を捉えたネイチャー・ドキュメ
ンタリー。神秘と美しさに溢れるこの星のまだ目にしたことのないダイナミックな光景、想像を超える奇跡的な瞬間、生き
物たちが繰り広げる未体験のスペクタルに出会う・・・
[寸評]「ディープ・ブルー」「プラネットアース」のスタッフが5年もの歳月と莫大な予算を投じ、最新の撮影機材・映像技術を
駆使して撮り上げられた神秘に満ちた大自然の景観と、野生生物が繰り広げる生と死のドラマの決定的瞬間を捉えた
映像の数々を、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の荘厳な音楽に乗せて映し出された自然ドキュメンタリー。今年の
映画の初見は旅行もあって、やや遅れたが、すっかり我が家で劇場へ行く定番となった自然ドキュメンタリーの本作品。
環境問題を捉えているため、文部科学省選定作品であり、子供は500円/人で入場できる。昨年観た「ホワイトプラネッ
ト」「北極のナヌー」と同じコンセプトではあるが、本作品はタイトル通り、生態系の話だけでなく、大地の幾つかの素晴ら
しい景観を映し出している。50億年前、巨大な隕石が地球に衝突した偶然で、地軸が23.5度傾き、その結果、変化に富
んだ生態系が生まれた・・という語りから始まるが、地軸が傾いている偶然性、地球が自転して続けている事、生物の本
能の凄さ、不可思議さを思いながら、映像に圧倒されながら心地よく観れる。子供を意識して、残虐なシーンは直前でカ
ットされている。環境問題が非常にクローズ・アップされている現在、多くの人が、本作品を観て、考え、意識した行動を
取っていかなければならないと思う。
2.椿山課長の七日間 (2006年日) <4.0>
[監督]河野圭太
[出演]西田敏行、伊東美咲、成宮宏貴、和久井映見、須賀健太、渡辺典子、沢村一樹、余貴美子、國村隼
[時間]118分
[内容]脳溢血のために突然死した百貨店勤務の椿山課長。やり残した仕事や愛する家族の事など、あまりにも未練が強
すぎて、このままでは死にきれない。そして、天国と地獄の中間地点にある“中陰役所”で、3日間だけ現世に戻る事を
許されたのだった。ただし、正体がバレないようにと、前世とは似ても似つかない絶世の美女・和山椿となって。椿山と同
じように、殺されたヤクザの親分・武田はイケメンの美容師・竹内に、生みの親に一目会いたいと願う小学生・雄一は
可憐な美少女・蓮子へと姿を変えられ、現世によみがえるのだったが…。
[寸評]浅田次郎原作の同名ベストセラーを映画化した作品。突然死した中年男が絶世の美女になって3日間だけよみが
えり、家族や周囲の人々の愛情に改めて気づき、自らの死を受けて入れていく姿を描いたファンタジー。元旦の23時か
らBS放送で放映されたので録画して拝見。いかにも浅田次郎らしく、現世に戻る幻想の世界を描き、心を温まらせて
くれ、話には引き込まれるし、観応えもある。但し、私から見ると、椿山課長は現世に戻って、余りに重大な事実を幾つ
か知るのだが、彼が気の毒にならない。椿山の妻は許し難いなあ・・・。知子さんとのエピソードで救われる面はあるの
だが・・。あの3日間で彼は本当に悔いを残さなかったのだろうか?と疑念が残ってしまった。人間は真実を胸に秘め、
隠し持ったまま去る場合もあれば、厳然たる真実を知る事もなく去らねばならない事もある、そんな事を感じさせられた
内容だった。余り生真面目に考えなければ、十分楽しめる作品です。
3.再会の街で REIGN OVER ME (2007年米) <4.0>
[監督]マイク・バインダー
[出演]アダム・サンドラー、ドン・チードル、ジェイダ・ピンケット=スミス、リヴ・タイラー、サフロン・バロウズ
[時間]124分
[内容]ニューヨークのマンハッタン。歯科医のアランは、ある日、大学時代のルームメイト、チャーリーを街で見かけ声を掛
けるが、彼は気づかずにそのまま去ってしまう。その後、アランは再びチャーリーと遭遇し、言葉を交わすが、驚いた事
に、彼はアランを覚えていなかった。彼は9.11テロで最愛の妻と娘を亡くして以来、すっかり心を閉ざしてしまっていた
のだった。そんなチャーリーが気がかりでならないアランだが、彼自身、歯科医として成功し、妻と娘2人にも恵まれ、幸
せな人生を送っているかに見えたが、実際には公私両面で問題を抱え、苦悩を深めていた・・・。そんな2人は次第に一
緒に過ごす時間が多くなり、ニューヨークの街をさまよい、昔のように遊び回るようになるのだったが…。
[寸評]9.11テロで妻子を失い、心に深い傷を負って殻に閉じこもってしまった男と、彼の大学時代のルームメイトで仕事も家
庭も恵まれた生活を送りながら満たされないものを感じていた男が、ニューヨークの街で偶然に再会し、再び友情を育く
む中で、互いの心を癒やしていく姿を描いた内容。有休を取り、妻と4作の候補から選んだ結果、本作品を名古屋の劇場
で鑑賞。9.11テロを取り上げた作品を過去2作観ているが、本作品は9.11のあのいまわしい映像は一切映さない。あの
時の飛行機に乗っていた被害者の残された家族(チャーリー)の辛い思いに焦点を当てて、切なく描いている。その辛さ
は第三者が”分かる”などと軽はずみで言えない、非常に重く過酷なものだろう。それがチャーリーの姿、発する台詞か
らも十分伝わってくる。歯科医のアランは公私共に恵まれているのだが、彼なりに懊悩している。傍目では対極にある2
人が触れ合い、癒しあう様はなかなか良い・・・。人間、悩まない人はいないのかね・・・アラン役のドン・チードルは上手く
演じていたと思うし、「ロード・オブ・ザ・リング」でアルウェンを演じたリブ・タイラーが精神科医で出演していたので嬉しか
った。
4.悪魔の手毬唄 (1977年日) <3.5>
[監督]市川崑
[出演]石坂浩二、岸恵子、若山富三郎、仁科明子、北公次、永島瑛子、草苗光子、加藤武、岡本信人、小林昭二
[時間]144分
[内容]文明社会から隔離され、古い因習が現在も力を持つ鬼首村(オニコベムラ)には昔から伝わる手毬唄がある。その歌
詞に見立てた殺人事件が発生する。金田一耕助は事件の解決に努めるが、やがて、事件の背後に村を2分する2大勢
力、由良家と仁礼家の存在が浮かび上がってくる。金田一は真犯人を見つけ出すため、失われた手毬唄の秘密を追う
のだが…。
[寸評].昨年12月末にNHK衛星放送で金田一耕助シリーズの映画が4作品程連日放映されていたが、その中から本作品を
録画して拝見。私にとっては今更ではあるが、「犬神家の一族」に続く2作目の鑑賞作品。岸恵子、若山富三郎等の大
物俳優が登場していて、しっかりと締まった作品になっていると思う。仁科明子が若い頃はとても可愛らしかった事が
分かるし、岸恵子は当時45歳でありながら若々しく見える。本作品の場合、犯人は冒頭のシーンから分かってしまう
のではないだろうか?私は”そうであってほしくない”と思い続けて観ていたが、その裏には思わぬ事実・要因がある・・
という展開。その要因が非常に泥臭いものだ。金田一さんは今回は、余り冴え渡ったという感じがしなかったなあ・・・。
若山富三郎の風格・彼が演じた刑事の思いが切なく印象に残った・・・。
5.母べえ (2007年日) <4.0>
[監督]山田洋次
[出演]吉永小百合、浅野忠信、壇れい、志田未来、佐藤未来、坂東三津五郎、中村梅之介、戸田恵子、笑福亭鶴瓶
[時間]132分
[内容]昭和15年の東京。野上佳代は、愛する夫・滋と2人の娘、初子と照美と共に、つましいながらも幸せな毎日を送って
いた。互いに“父(とう)べえ”“母(かあ)べえ”“初べえ”“照べえ”と呼び合い、笑いの絶えない野上家だったが、ある
日、突然の悲劇が一家を襲う。文学者である滋が、反戦を唱えた事を理由に特高刑事に逮捕されてしまったのだ。穏
やかだった生活は一変し、不安と悲しみを募らせる佳代と娘達・・・。そんな中、滋のかつての教え子・山崎や滋の妹・
久子、放埒で型破りな叔父・仙吉らが一家の元に駆けつけ、佳代と娘たちを優しく親身に支えていく。
[寸評]高校3年生の時の担任の先生が、その当時、「私達の若い頃は”吉永小百合”はとてつもないスターだった。山口百
恵や松田聖子の比ではないよ」と話されていた思い出がある。実は吉永小百合主演の映画をじっくりと観た事がなく、
山田監督の作品という事もあり、大きな期待を持って鑑賞した。どうみても吉永さんは62歳には見えません。それでいて
12歳と9歳の母親役が何の違和感もなくはまっていて、大女優である事を改めて認識した。話の内容は、母親の優し
さ、強さ、家族を支える周囲の人達の温かさを前面に描いていて、無難にまとまっている。欲を言えば、父親の描き方・
父親と娘達との関わり方が、もう少しひと工夫あると良かったかな。あと最後のシーンはどうなのかな?ちゃぶ台で食事
を囲み、家族で談笑する姿は良いね。一姫が観たいと言っているから、DVDが出たら、家族で観てみるかな・・・
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