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31.RENT/レント RENT (2005年米)<4.0>
[監督]クリス・コロンバス
[出演]ロザリオ・ドーソン、テイ・ディグス、ジェシー・L・マーティン、イディナ・メンゼル、アダム・バスカル
[時間]135分
[内容]1989年のクリスマス・イブの夜。イースト・ヴィレッジにある古いアパート。家賃を滞納し電気も暖房も止められた
一室に暮らすルームメイトのロジャーとマーク。ミュージシャンのロジャーは恋人がエイズを苦に自殺して以来すっ
かり、引きこもり状態。秘かに階下に住むヤク中のダンサー、ミミに心惹かれる。一方、映像作家志望のマークはカ
メラを持ち歩き、あらゆるものを記録する。マークの元彼女モーリーンは地域の再開発反対をパフォーマンスで訴え
る。彼女の現在の恋人は女性のジョアンナ。ロジャー達の親友トム・コリンズはひょんなことからドラッグ・クイーン
のエンジェルと恋に落ちる。そんな彼らのかつての仲間で、家主の娘と結婚して以来すっかり変わってしまったベニ
ーは、一帯の再開発を目論み住人の追い出しを図る・・・
[寸評]ピュリッツァー賞も獲得したブロードウェイの大ヒットミュージカルを映画化した作品でミュージカルが好きな私に
とって注目していた作品。愛知県の劇場公開が1館だった(?)事と公開時期に忙しかった事からレンタルDVDで拝見
する事になった。1989年(私が入社した年だ)のニューヨークを舞台に、家賃(RENT)さえも払えない貧しい生活の中、
ドラッグやエイズといった様々な問題に直面しながらも夢に向かって生きるアーティストの卵達の姿を綴った内容。
監督は「ハリー・ポッター」1,2作目を監督したクリス・コロンバスで、こういった作品も撮るんだと驚いた。本作品の内容
はドラッグやエイズ、人の死を扱っており、全般的に暗く、正直、ストーリー性があるとは言い難い。但し、冒頭の音楽
は特筆もので素晴らしい。この音楽を聴けただけでも得した感じがする。この後は、この曲には及ばないものの、全般
的に聴き応えのある曲が流れ続ける。歌っているシーンが多く、どちらかというとミュージック・ビデオを観ている感じ
だ。音楽が良いだけに観ている分には心地良い。もう少しストーリーが良ければポイントも跳ね上がったが・・・
32.交渉人 真下正義 (2005年日)<3.0>
[監督]本広克行
[出演]ユースケ・サンタマリア、寺島進、小泉孝太郎、柳葉敏郎、水野美紀、石井正則、金田龍之介、國村隼
[時間]128分
[内容]ロサンゼルス市警でFBI訓練プログラムを受け、警視庁初の交渉人となった真下正義警視。2003年11月24日、
レインボーブリッジを封鎖して解決した“お台場連続殺人事件”。真下警視は報道陣を前に事件の経緯を説明してい
た―。その1年後の2004年12月24日、雪乃とのデートを約束していた警視庁交渉課準備室課長の真下に、室井管
理官から緊急の呼び出しがかかる。地下鉄の最新鋭実験車両1両が何者かに乗っ取られ、複雑に張り巡らされた
東京の地下鉄網を暴走、乗降客200万人の命に危険が及んでいた。そしてこの恐るべき事件を引き起こした犯人
は、交渉の窓口に、真下を指名したのだった…。
[寸評]「踊る大捜査線」シリーズの中心キャラクターの一人で、映画版第2作では警視庁初のネゴシエイター(=交渉
人)として登場した真下正義に焦点を当てたスピンオフ作品。”踊るレジェンド”という事で「真下」→「木島」→「室井」
→「灰島」のスピンオフ作品が10/14〜3週間の間にTV放送される。映画版となった本作品を録画し、妻と鑑賞。「踊
る大捜査線」以上にいきなり入り込めるのは良い(妻は全く「踊るシリーズ」を観ていなくても違和感なし)。地下鉄に
脇線がある事、地下鉄のコントロールを緻密にくまなくやられている事が認識できたし、謎の地下鉄の登場による
混乱のアイディアも良いし、話の展開も悪くはないが、後半のオチはないでしょう!犯人分からずじまいでは、不完
全燃焼だなあ・・・。(「踊る」の犯人もドッチラケだったけどねえ。)水野美紀の出番も少ないし、真下正義の交渉も
どことなく今一つの感じだったなあ・・・。木島がやたらインパクトがあった。本作品にあまり期待する方が無理な事
だったか?「容疑者 室井慎次」もTV録画したが、観る価値はあるかな??
33.容疑者 室井慎次 (2005年日)<3.0>
[監督]君塚良一
[出演]柳葉敏郎、田中麗奈、哀川翔、八嶋智人、柄本明、佐野史郎、真矢みき、筧利夫
[時間]117分
[内容]2005年2月某日。警視庁の室井管理官が、自らが指揮を執った殺人事件の捜査が問題となり逮捕されるという
思いがけない事態が発生する。逃走中に車にはねられ即死した被疑者の母親が、過剰な取り調べがあったとして
刑事告発したのだった。警察の不正を暴くと意気込み追及の手をゆるめない灰島弁護士によって室井は窮地に追
い込まれていく。そんな室井の弁護に当たる事になったのは若き女性弁護士の小原久美子だ。はじめは、決して多
くを語ろうとしない室井の態度に戸惑いと苛立ちを覚えた久美子も、徐々に室井の心を理解していくのだったが…。
[寸評]「踊る大捜査線」シリーズの「交渉人 真下正義」に続くスピンオフ企画第2弾の劇場版。今回は柳葉敏郎演じる
室井慎次管理官を主演に据え、突然、容疑者として逮捕されてしまった室井が、警察庁と警視庁との対立にも巻き
込まれて次第に追い詰められていく様を描いた内容。「真下」のTV放送の翌週に放送され、録画して拝見。「真下」
のオチから今回、観る事をためらったっが、妻と鑑賞。私は室井のキャラは好きだ。それなりに彼らしい持ち味は出
ていたし、「踊る大捜査線THE MOVIE2」で高慢知己で嫌な女であった沖田(真矢みき)が結構、いい役を演じている
し、室井を陥れる弁護士の灰島が滑稽な役回りを演じている(彼のスピンオフのTVスペシャルが放送され、懲りずに
録画してしまったが、彼を主役にしたらどうなるんだ?)。しかし、事件の犯人は何なんだ?室井を追いつめた事件
がこんなに薄っぺらいもので良いのか!という事だった。結局のところ、「踊る」シリーズに、事件の複雑性や犯人の
行動の背景等、推理小説まがいな事を期待してはダメだという事が分かった。観ている分には退屈しないが、最後が
コケたなあ・・・
34.手紙 (2006年日)<4.5>
[監督]生野慈朗
[出演]山田孝之、玉川鉄二、沢尻エリカ、吹石一恵、尾上寛之、吹越満、風間杜夫、杉浦直樹
[時間]121分
[内容]川崎のリサイクル工場で働く青年、武島直貴は、彼に積極的に話しかけてくる食堂の配膳係・由美子とも打ち解
ける事なく、人目を避けて生きていた。彼の兄・剛志は、弟を大学に行かせるため学費欲しさに盗みに入った邸宅で、
誤って人を殺してしまったのだ。無期懲役で服役している剛志からは毎月手紙が届いていた。しかし、それが元でリ
サイクル工場でも兄の事が明るみとなると、直貴は工場を後にする。やがて、大好きなお笑いでプロになる夢を抱き、
徐々に頭角を現していく直貴だったが…。
[寸評]人気ミステリー作家・東野圭吾の同名小説を映画化した社会派ドラマ。兄が強盗殺人を犯した事で差別に苦しむ
主人公の姿を通して、加害者の家族をとりまく社会のあり様を真摯なまなざしで見つめた作品。東野圭吾氏の原作と
いう事もあり、以前から原作も読んでみたいと思っていたから本作品の公開を楽しみにしていた。文庫本も先日購入
したが、なかなか読めず、冒頭の10ページを読むに留まったまま、劇場で鑑賞。兄が殺人犯のために、主人公は差
別を受けまくり、漫才のヒット(何故か面白く感じないのが難点)や令嬢との結婚の可能性が生じても、結局はご破算と
なってしまう。ようやく彼を真摯に支える由美子と結婚して子供を授かっても、子供まで差別を受けてしまう・・・犯罪を
犯すという事は加害者の身内、被害者と被害者側の身内にとっても、大きく人生を狂わせ、ダメージを与えてしまう事
を描写している。平野会長が「差別を受けるのは当たり前なのだ。誰だって犯罪者の身内と聞けば防衛意識が働くか
ら・・・」という言葉とみかんを渡すシーンは印象的だ。建前の「人権尊重」でなく、真理をついていると思う。最後の刑務
所での兄の姿は哀愁がただよう。(周囲の年輩の夫婦の嗚咽が聞こえてきた)”いじめ””不可解な犯罪”の事件が話
題になるこの頃だが、本作品を観て、一考する事をオススメしたい。早速、文庫本の続きを読み始めたところである。
35.父親たちの星条旗 FLAGS OF OUR FATHERS (2006年米)<4.0>
[監督]クリント・イーストウッド
[出演]ライアン・フィリップ、ジェシー・ブラッドフォード、アダム・ビーチ、ジェイミー・ベル、バリー・ベッパー
[時間]132分
[内容]太平洋戦争末期、硫黄島に上陸した米国軍は日本軍の予想以上の抵抗に苦しめられ、戦闘は長引き、いたずら
に死傷者を増やす事態に陥っていた。そんな中、擂鉢山の頂上に星条旗が高らかに翻る。この瞬間を捉えた1枚の写
真が銃後の米国国民を熱狂させた。星条旗を掲げる6名の兵士、マイク、フランクリン、ハンク、レイニー、アイラ、ドク
は一躍、米国の英雄となるのだった。しかし、その後祖国に帰還したのはドク、アイラ、レイニーの3人だけだった。国民
的英雄として熱狂的に迎えられた彼らは、戦費を調達するための戦時国債キャンペーンに駆り出され、米国各地を回
るのだったが…。
[寸評]クリント・イーストウッド監督が、太平洋戦争で壮絶を極めた硫黄島での戦いを、米国側、日本側の各々の視点か
ら描く2部作の第1弾。写真に登場する6名のうちの一人ジョン・ブラッドリーを父に持つジェイムズ・ブラッドリーの著わし
たノンフィクション『硫黄島の星条旗』を基に、凄惨な硫黄島での戦いと、戦場を生き延び帰還した3名の若者が、自らの
思いとは無関係に“勝利の象徴”として英雄に祭り上げられ、戸惑いや苦悩を深めていくその後の人生を静かに見つめ
ていく内容。何気に重たいけれども良い作品を撮るイーストウッド監督の作品という事で期待して鑑賞。作品のテーマは
「英雄とは何か?」「英雄に祭り上げられた者の苦悩(何ら良いものではない)」「戦争の悲惨・虚しさ」であり、戦争での
凄まじい映像と帰還した後の姿を交錯させながら描いている。シンプルな内容ではあるが、最初は人物関係をつかむの
に難儀した。戦争シーンの凄まじさは映画史に残るほどのものではないか?イーストウッド監督もなかなか過激だなあ。
あまりに過激ゆえ、何度も観るには辛いが、戦争をあおるための英雄を使ったイベント活動や、戦場における仲間の扱
い方等、真理をついた所があり、一見の価値はあると思う。日本側の視点で描いた「硫黄島からの手紙」も必ず観るが
いかなるものか?辛い内容である事は確かだろうが・・・
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