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牙 江夏豊とその時代 講談社文庫 [著者]後藤正治 [定価]695円+税 [読了日]4/10
 【概要】縦縞のユニフォームの男。投手・江夏。みんな彼の事を覚えている。現役生活18年。通算成績206勝158敗193セ
   ーブ。そしてあの21球。長嶋がいて王がいた。村山がいた・・・。グラウンドが真剣勝負に満ち、日本中が燃えていた時
   代を知る者のみならず、全ての野球ファンに著者が思いをこめて綴ったノンフィクション。
 【寸評】非常に面白いノンフィクションであるにも関わらず、最近の多忙の影響で読むのに随分時間がかかってしまった。
   私にとっては江夏は「広島」「日本ハム」のリリーフで”優勝請負人”と呼ばれていた姿、広島時代の「江夏の21球」が
   焼きついている。幾つかの伝説を聞いているが、本書を読むと「阪神」時代の江夏がいかに凄かったかよく分かる。
   私も、その姿を見てみたかったと思う。私の野球観戦歴で記憶に残る左投手といえば「大野(元広島)」「川口(元広島→
   巨人)」「今中(元中日)」「石井(現メッツ)」辺りかなあ・・・。江夏の凄さは彼等と比にならないほど、とてつもないものだ
   ったのだ。江夏を取り巻く、色々な人間模様も描かれていて読み応えのある優れたノンフィクションである。江夏は現在
   の完投しなくなった投手達に物足りなさを感じているだろうな。   

島耕作に知る「いい人」をやめる男の成功哲学 講談社+α文庫 [著者]弘兼憲史 [定価]648円+税
  [読了日]3/26
 【概要】集団のなかで「いい人」を演じて楽に生きても、残るのは後悔だけ。他人に好かれても、自分に嫌われる「いい人」
   など大して意味がない。しかも、実は自分の思うままに生きた方が、人間関係も、より円滑になるのだとしたら?周囲の
   評価にこだわらず、誤解を恐れず、打算もなく行動しても、何故か成功する男の秘密に迫る。
 【寸評】正直いって、(私だけでないだろうが)「いい人」と思われたいのは確かである。しかし、そんな事は少しの事で簡単
   に崩れ去ったり、実は表面だって良い顔をされていても、陰では・・・・なんて事(別のルートから耳に入る)はいくらでもあ
   る。全てに対して「いい人」である事など無理であるし、そうあるのも愚かな事なんだ。本書の内容の主旨は「本音で生き
   ろ」という事で、幾つかハッとさせられる記述があった。「本音」を出す事によって、とんでもない仕打ちに合う事もあれ
   ば、相手が理解してくれて良い方向に行く事もある。その使い分けは実際に難しいが・・・。最後に記述されている3点は
   頭に入れておきたい。「気楽に生きろ」「自分を好きになれ」「後ろめたさだけは持つな」

志村流 王様文庫 [著者]志村けん [定価]619円+税 [読了日]3/24
 【概要】著者の志村けんが自らの人生経験を踏まえながら「金・ビジネス・人生」の成功哲学について語る。
 【寸評】私にとって志村けんはドリフターズ時代の「東村山○丁目」の印象が非常に強い。当時、小学校4年生だったか
    ら、本当に長く第一線で活躍している事になる。そんな彼の生き様・考え方が綴られていてTVの「バカ殿様」とは違う
    一面がみられる。金や時間の使い方・処世術等、参考になる事が多い。

オーケストラの職人たち 文春文庫 [著者]岩城宏之 [定価]524円+税 [読了日]3/21
 【概要】ピアノやハープといった大型で壊れやすい楽器はどうやって運ぶのか。読みにくいスコアを美しいパート譜に清
    書する写譜屋さんが使うのは、耳それとも目?クラシックのコンサートを支える裏方達の、様々なこだわりの仕事ぶ
    りを集めたエッセイ。
 【寸評】指揮者である著者の演奏会を2回聴きに行った事がある。丁寧に解説してくれて観客の心をつかむのが上手い
    と思った。本書は演奏会を支える様々な裏方(という言い方は失礼)の方をクローズアップして面白く語られている。
    私も経験あるが、一つの2〜3時間の演奏会の影にはどれだけの苦労が隠されている事か。著者が自らハープ運送
    の実体験をしたり、全国のオーケストラに楽器の運送状況を調査したり、自ら踏み込んでいるので、内容も生々しく
    良い。著者は音楽の才能もあれば文筆の才能もあり、という事だな。(中村紘子もそうだが・・・)

これは事件だ ファイル001 扶桑SPA!文庫 [著者]神足裕司 [定価]648円+税 [読了日]3/12
 【概要】世界を震撼させた「佐世保の小6女児殺人事件」「男女7人ネット心中」「NEET男の相次ぐ両親殺害事件」。国民
    的な議論を巻き起こした「プロ野球再編問題」から「新潟県中越地震」まで。04年に起きた事件の深層をコラムニス
    トの著者がニュースの現場を歩き、新聞や報道とは違う独自の視点で事件を考察。
 【寸評】『週刊SPA!』に連載されているコラムを文庫化したもの。04年の出来事を振り返るのに良い本で著者独自の視点
    で分析している。05年も相も変わらず、色々と物騒な事件が起きているし、どんどん世の中がおかしくなってきている。
    今後の先行きも不安だらけだ。勉強にはなったが、暗い気持ちにもなった本である。続編が出ればまた読みたい。

働くということ 日本経済新聞社 [著者]日本経済新聞社=編 [定価]1,500円+税 [読了日]3/4
 【概要】働くことが生き方を決める。若者から高齢者、フリーターから正社員まで自分探しの時代が始まった。様変わり
    した日本人の働き方を生き生きと捉える。日経本紙に連載されていたものの単行本化。
 【寸評】私も日々、自分のやっている仕事のレベルや、今後の事を考えると不安になる事が多々ある。本書は数多くの
    人の生き様を描写している。自分が恥ずかしくなるぐらい、夢や生きがいを求めている人達がいる。非常に刺激にもな
    る。最後の「働くことは生きること。その意味をつかんだ時、人は最も輝く。答えは悩みの中に・・・。扉を開けるのは自
    分自身だ」をかみしめて、前に進んでいかねばなあ・・・

恋恋シネマ 早起きアナウンサーの、シアワセの素 集英社be文庫 [著者]佐々木恭子
   [定価]619円+税 [読了日]2/22
 【概要】新人時代のほろ苦い体験、韓国俳優やハリウッドスターの素顔、名物アナウンサーとの濃い毎日・・・。『とくダ
   ネ!』(フジTV)の人気アナの著者が仕事を通じて出会った人、言葉と映画への想いを語りつくす愛と青春のシネマ
   日記!
 【寸評】私は会社へ行く時、8:15に家を出るが、8:00〜8:15に必ず『とくダネ!』を見ている。著者の佐々木アナは東大卒の
   才女だが、知的ぶらず清楚な感じがするので好感の持てるアナウンサーだと思う。彼女が映画を軸にして、人との触れ
   合い、人生観・仕事観、過去の思い出を綴ったエッセイで、非常に読んでいて微笑ましくなる内容だ。「ウエストサイド
   物語」を高校時代に彼女自身が舞台の企画を行い、マリア役まで演じた話はビックリ。私も「ウエストサイド物語」を
   観ると大学時代のクラブの思い出が鮮烈に蘇る。映画を観る楽しさ、素晴らしさを伝えてくれる良いエッセイです。

対岸の彼女 文藝春秋 [著者]角田光代 [定価]1,600円+税 [読了日]2/16
 【概要】30代、既婚、子持ちの「勝ち犬」小夜子と、独身、子なしの「負け犬」葵。性格も生活環境も全く違う二人の女性の
   友情は成立するのか?
 【寸評】今年の直木賞(第132回)受賞作品。著者は1967年生まれで私と同世代だけに、取り上げたテーマも興味深く、
    読んでみた。対称的な位置(?)にある小夜子と葵のやり取りと、高校時代の葵とナナコのエピソード等を交錯させな
    がら、”女性の友情とは?”について描いている。読んでいる時は淡々とした感じがしたが、読み終えてみると自分自
    身の友情のあり方について考えさせられた。小夜子の過去等も掘り下げてほしい気もしたが、直木賞受賞の話題に
    乗じて読んでみて、決して損はないと思う。

「人間復興」の経済を目指して 朝日文庫 [著者]城山三郎・内橋克人
   [定価]500円+税 [読了日]2/7
 【概要】「敗者復活」のある社会、再生可能エネルギーで「浪費なき成長」、「働く自由」を勝ち取るための真のワークシェ
   アリング。「人間性回復」のための経済システム構築と日本経済復活のための処方箋を語った白熱の対談集。
 【寸評】内橋克人氏の著書は今まで読んだ事がなかったが、城山三郎氏と中味の濃い対談をしている。「人生の復活戦
   に再挑戦できる仕組みを目指さないと社会に活気・活力が戻ってこない」「どこから物事を見るかによって変わるので、
   余り狭く物事を考えない」「栗田工業の社長がバブル期に3ヶ月財テクをしてみたら、凄く儲かったが、本業がダメにな
   ると思い、ストップした」という話が印象的。やはり人に活気がないと良い社会・経済にならない・・・

悪口の技術 新潮文庫 [著者]ビートたけし [定価]400円+税 [読了日]2/4
 【概要】アメリカ、中国、北朝鮮、銀行、役人・・・全部向こうが言いたい放題。沈黙は金、じゃない。正しい「罵詈雑言」教え
   ます-。”毒舌の第一人者”が贈る強力な一冊。会社で、家庭で、また外交でどう逆襲すればいいのかを分かりやすく
   解説。売り言葉に買い言葉、きれいに言い返す術を著者が伝授。
 【寸評】日本が世界で恥をさらすのも、現在の悲惨な財政状態も、相手の言いなりで言うべき事をしっかり言わなかった
   からだ、と力説している。相変わらず、著者は本音で語っており、読んでいて納得する箇所が多い。判事や政治家、教
   師、芸能人でも良識のない人がいるんだなあ・・・。大前研一氏も言う通り、理論武装しておかしい事はおかしい!と
   主張して是正できる世の中にならないと本当に先は暗いかもしれない・・・

考える技術 講談社 [著者]大前研一 [定価]1,600円+税 [読了日]1/30
 【概要】論理思考からアイデアの作り方・先見性の磨き方まで答えのない時代を生き抜くための知的パワーアップ法。
    著者の思考ノウハウを集大成!
 【寸評】論理的な思考能力が乏しい私にとって、耳の痛い事が書かれている。ビジネスマンとして今後生き抜いていくため
    には力を伸ばしていかなければならないし、世の中の動きも理解できない事になる。刺激を受けたが、練習問題に対
    する思考能力の乏しさを思い知った。常に物事をしっかり考えないとなあ・・・

トヨタを知るということ 日経ビジネス文庫 [著者]中沢孝夫・赤池学 [定価]714円+税 [読了日]1/28
 【概要】トヨタの強さは環境の変化に迅速に対応できる柔軟性にあった。製造・販売からグループ企業戦略、環境・安全対
   策まで、綿密な聞き取り調査をもとに日本最強企業の真髄に迫る。
 【寸評】トヨタは日本一の超優良企業である。グループ企業に属する私としても、業務の経歴上、直にトヨタとやり取りをした
   事はないが、トヨタの強さ・厳しさのニュアンスは自然と感じ取れる。本書はトヨタの強さの要因をシステム・系列・人材育
   成・環境への取り組み等の視点から分析している。やはりあらゆる面で凄い。特に最後のページの一文が妙に印象深
   い。「トヨタを知るということ。それは、モノづくりを通じて、日本的価値を世界に伝えるミッションを、私たちが改めて共有す
   ることだと考えている・・・」

いやでもわかる日本の経営 日経ビジネス文庫 [著者]日本経済新聞社=編
   [定価]667円+税 [読了日]1/13
 【概要】今、日本の企業はどんな問題に直面し、何を考え、どこへいこうとしているのか。リスクマネジメント、知的財産権を
   めぐる紛争、新商品開発の裏話から製造現場の日本回帰、事業再生ビジネスまで、5つのトピックを取材メモを基にショ
   −トストーリー化。
 【寸評】5つのトピックスをショートストーリーにして読みやすく書かれている。企業はあらゆる面で色々なリスクに直面する事
   を描いている。商品開発や中国での生産コストの検証は特に興味深く読めた。一番印象に残ったフレーズは「失われた
   10年間で日本経済の何が最も傷ついたか?⇒金融資産、競争力でもなく”人材”。マネジメント能力の低下」。

プロ野球「人生の選択」 廣済堂文庫 [著者]二宮清純 [定価]571円+税 [読了日]1/7
 【概要】アマチュアで脚光を浴び、大志を抱いてプロ野球に飛び込んでくる選手達。しかし、その先にあるのは平均在籍
   年数5年以下と言われる過酷な世界。スターにはスターの、雑草には雑草の挫折と苦悩ともがきがある。運命に翻弄さ
   れながらも、生き残りに懸け、道を切り拓こうとする者達の姿を描くノンフィクション。
 【寸評】この本の新書版を図書館で借りて読んだ気がする。但し、現在の状況を踏まえて文庫用に加筆・訂正されてい
   る。著者のノンフィクションは相変わらず読みやすく視点も鋭い。プロ野球は過酷な世界で人生を映す鏡である。野球
   界の織り成すドラマが非常に好きで、今後も野球を観続け、ノンフィクションものも愛読していきたい。