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66.コラテラル COLLATERAL (2004年米)<3.5>
[監督]マイケル・マン
[出演]トム・クルーズ、ジェイミー・フォックス、ジェイダ・ピンケット=スミス、マーク・ラファロ
[時間]120分
[内容]ロサンゼルスでタクシーの運転手を12年間勤めながら平凡な毎日を送っているマックスは、ある晩、アニーという
女性検事を乗せいい雰囲気なり、名刺までもらって上機嫌になっていた。次に乗せたのはビジネスマンと思われる紳
士。ヴィンセントと名乗ったその男は、多額のチップと引き換えに一晩の専属ドライバーとなり、今夜中に5ヶ所を回るよ
う、マックスに依頼する。しかしヴィンセントの正体はプロの殺し屋で麻薬組織から5名の殺害を請け負っていたのだっ
た。そうとは知らずマックスは最初の目的地に着いた後、そのままヴィンセントの帰りを待っていたが、その時・・・・。
[寸評]会社のイベントで、ここ数年、年1回、体育館で映画上映会がある。一昨年から「マイノリティ・リポート」「ラスト・サム
ライ」と上映され、今回の「コラテラル」と3年連続でトム・クルーズ主演の作品である。主催者がトムの熱烈ファンなのか
偶然なのかは分からない。何となく観てもいいかな?と思っていた作品が100円で観られる、という事で鑑賞(会社での
上映会に行くのは実は今回が初めて)。本作品はトム・クルーズが悪役を演じる事で話題になっている。トムの悪役は悪
くは無いし、格好もいい。しかし、悪役が適任か?というと決してそうではない気がする。この映画のタイトルの意味は
「巻き添え」で、あくまでタクシーの運転手・マックスの視点で描かれる作品である。マックスをトムが演じたら良いかと
いうとそうでもない気がする。話の内容は途中で、私は一旦混乱したが、結局は単純明快なもので後半はそれなりにス
リリングで楽しめる。冒頭の女性客がキーになるなと思ったら、その通りであった。100円にしては十分楽しめたが、トム・
クルーズが出演していないと本作品は余り話題にならないのかもしれない。
67.ハウルの動く城 (2004年日)<3.0>
[監督]宮崎駿
[出演](声)倍賞千恵子、木村拓哉、美輪明宏、神木隆之介、大塚明夫、加藤治子
[時間]119分
[内容]魔法と科学が混在する世界のとある国。愛国主義が全盛を誇り、いよいよ戦争が目前に迫っていた。父の遺した帽
子店を切り盛りする18歳の少女ソフィーは、ある日町で美貌の青年と出会う。彼こそ人々が怖れる悪名高い魔法使いの
ハウルだった。ソフィーはハウルに助けられた事から彼の優しさに心奪われる。だがその夜、彼女は荒地の魔女に呪い
をかけられ90歳の老婆にされてしまうのだった。本当のことが言えずに家を出たソフィーは、人里離れた荒地をさまよ
い、やがてハウルが暮らす動く大きな城に潜り込み、住み込み家政婦として働き始めるのだった…。
[寸評]私は総じて宮崎駿作品は好きである。「千と千尋の神隠し」の大ヒットの後の本作品は、イギリスの児童文学作家ダ
イアナ・ウィン・ジョーンズの『魔法使いハウルと火の悪魔』を映画化したもので、戦乱の時代を背景に、魔女によって老
婆の姿に変えられてしまった少女と弱虫の魔法使いの青年が、4つ足で歩く奇妙な巨大な城で共同生活を送りながら
次第に心を通わせていく様を描いた内容である。他の作家の原作を用いるところに私は今回どことなく不安要素を感じ
ていた。映画を鑑賞した時間が14:10からで、午前中に幼稚園の行事やディーラー・タイヤ店を駆け巡っていた事が響い
たのか、一番眠くなる時間帯だからいけないのか、ともかく信じられない事に鑑賞するのが睡魔との闘いであった。
1/4は寝ぼけていたのではないか。話が面白ければ、どこかで目がさえ渡るはずなのだが、本作品はどうも心に響い
てこなかった。老婆となったソフィーの顔が幾通りかの若返った顔に変わるが、あれは何を意味するのだろう?話は
根本的にはソフィーの優しい心・愛情がハウル達を救い、戦争も食い止めるという事が言いたいのだろう。しかし、どうも
すっきりしなかったな。何なんだ、この不思議な感じは。宮崎作品を観た後に、いつも感じる爽快感がないのだ。「ラピュ
タ」を思わせるシーンもあったのに・・・。レンタルになったら再見した方がよいのかな?そうすれば評価も変わるだろう
か?(妻子は同じ時間帯に「ポーラー・エクスプレス」を鑑賞。Mrインクレブル同様に面白かったようだ)
68.ターミナル THE TERMINAL (2004年米)<4.5>
[監督]スティーブン・スピルバーグ
[出演]トム・ハンクス、キャサリン・ゼタ=ジョーンズ、スタンリー・トゥッチ、チー・マクブライド、ディエゴ・ルナ
[時間]128分
[内容]ニューヨークのJFK国際空港。この日、ビクター・ナボルスキーは、東ヨーロッパのクラコウジアという小国から、ある
大事な約束を果たすためにやって来た。だが、入国しようとした矢先に、彼の国でクーデターが発生し、事実上国家が
消滅した形になってしまった。そのためパスポートが無効となった彼は、アメリカへの入国を拒否される。しかも情勢が
安定するまでは帰国することもできず、空港内に完全に足止めされてしまう。英語も分からず通貨も持っていない彼は、
やむを得ずこのターミナルの中で寝起きしながら事態が改善するのを待つのだったが…。
[寸評]月曜日に有休を取り、午前に妻と鑑賞。居住市の(どんな話題作でも空いている)小さな映画館で観たが、観客は
我々を含めて4人のみ。本作品はスピルバーグとトム・ハンクスがコンビを組む3度目の作品で、非常に人間味あふれた
心温まる内容である。上手くまとめられた小品(スピルバーグの過去の大作に比してという意味)で、舞台はタイトル通
り、「空港」に限定されている。ビクターの人間的魅力・バイタリティーが何人かを救い、自らも周囲に助けられて生き抜
き、目的を果たす、という話で「素晴らしき哉、人生!」(私にとって屈指の名作)にどこか通ずるような感じがした。トム・
ハンクスはやはり上手いね。冒頭の英語が話せない様に違和感を感じ、おかしくもあったが、後半では普通に話してい
たぞ(妻曰く、”もう少しやせてほしい”との事)。キャサリン・ゼタ=ジョーンズの今回の役柄も適役で良かった(「シカゴ」
は凄すぎたが…)。ビクターの「目的」は意外なものであったが、彼のように信念を貫く姿勢は大事だと思う。「Mr.インクレ
ディブル」と並び、年末年始の映画ではオススメです。
69.ベルリン・フィルと子どもたち RHYTHM IS IT! (2004年独)<4.0>
[監督]トマス・グルベ
[出演]サイモン・ラトル、ロイストン・マルドゥーム、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
[時間]105分
[内容]“子どもたちに、もっとクラシックの楽しさを感じてもらいたい”――ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の指揮者兼芸
術監督に就任したサイモン・ラトルの呼び掛けで発足したベルリン・フィルの新たな活動プログラム《教育プロジェクト》。
その最初の大きな取り組みが、「ダンスプロジェクト」で、地元のごく普通の子どもたちが、ベルリン・フィル演奏の下で、
ストラヴィンスキーの名曲<春の祭典>を踊るというものだ。こうして、出身国や文化の異なる子どもたち250名が集め
られ、ベルリン・アリーナでの大舞台へ向け、6週間に及ぶ猛練習が始まった。しかし、元々クラシックに無縁な子どもた
ちは練習にも無気力。それでも、振付師による熱心な指導の下、彼らは次第にダンスに打ち込んでいく…。
[寸評]世界最高のオーケストラであるベルリン・フィルハーモニー管弦楽団と250名の子どもたちによる壮大な共演プロジェ
クトを記録したドキュメンタリー。本番までの辛く楽しい稽古の様子や、楽団のリハーサル風景に密着して、興味がなくて
やらされ感の強い子どもたちが、少しずつ変わっていく姿を映し出した内容。音楽好きの私からみれば、ベルリン・フィル
と一緒の舞台に立てるという企画は夢のような話で、奇跡といっていい。それだけに練習がきついのも当たり前でしょう。
ストラヴィンスキーの<春の祭典>はCDを持っているが、映像では目にした事がない。子どもたちが言うように”とっつき
にくい曲”であるのも確かだ。指揮者・振付師の厳しい指導を逃げ出さずに耐え抜く内に、子どもたちも段々自信が付き、
輝いてくる。それが最後の本番で結実して充実感で一杯となるのだ。私は大学時代にグリークラブに所属していたが、
最初は「何が面白いのか?」と懐疑して活動していたが、最初に大きな演奏会のステージにのって、演奏会をつくりあげ
る過程・本番の何ともいえない感動を味わってからは完全にひきつけられてしまった(私だけでない)。音楽は素晴らしい
よね。本作品の子どもたちに大いに共感した。時折、指揮者・振付師が良い事を言っていたので記載しておく。
「芸術は嗜好品ではなく必需品だ」「自分が新しい事に果敢に挑戦している姿を温かく応援してくれるのが本当の友達
だ」「(子どもたちは)素晴らしいではないか。僕の口からはほめないよ。君(振付師)から、さりげなく言ってくれ」
70.スーパーサイズ・ミー SUPER SIZE ME (2004年米)<4.5>
[監督]モーガン・スパーロック
[出演]モーガン・スパーロック等
[時間]96分
[内容]2002年11月、スパーロック監督は、肥満症に悩む若い女性2人が“肥満になったのはハンバーガーが原因”としてマ
クドナルド社に訴訟を起こしたニュースを見て、あるアイデアを思いつく。彼は、消費者側とファーストフード側のどちらに
問題があるかを自分で証明するため、1ヶ月間、マクドナルド以外は一切食べないことに決めたのだ。そして、5つの厳し
いルール(※)を自らに課して、この突飛な人体実験を開始、その経過をカメラで記録し始めるのだった…。
※@ファーストフード店内に存在するものしかオーダーしてはならない(水も含む)。A”スーパーサイズ”を勧められた
ら断らない。B全てのメニューを必ず一度は食べる。C朝・昼・夜の3食全て残さず食べる。D平均的な米国人の運動
量に合わせる。
[寸評]「ベルリン・フィルと子どもたち」を観た後、30分以内で急いで移動して駆け込んで鑑賞。抜群の発想力で製作された
このドキュメンタリーは、食生活について大いに考えさせられる内容で非常に興味深く面白い。これは是非とも多くの人
に鑑賞してほしい(マクドナルド側は拒絶するだろうが・・・)。自らの体を実験にして果敢に取り組んだ監督の度胸に敬服
する。マクドナルドを槍玉にあげているが、ファースト・フード(高カロリー食品)の摂取の危険性を医師・栄養士等の観点
から厳しいコメントが発せられる。それを監督が命がけの実験で証明させる。マクドナルド等の企業側の戦略(ハッピー
セット・店の遊具・宣伝)についても興味深く語られており、顧問弁護士のコメントも興味深い。コレストロール値を気にせ
ねばならない私にとっても、かなり刺激となった。バランスを考えた食生活、適度な運動・・・ウ〜ン。米国の肥満状況の
深刻さの要因をついており、子どもたちの健康にも警告を発している。「チキンナゲット」の正体を紹介されたが、ショック
だったな。米国の給食の裏の実態は深刻で日本は大丈夫か?。本年観たドキュメンタリーでは一番面白かった。