伯山甫とその姪、西河少女
伯山甫(はくざんほ)は雍州(ようしゅう)の人である。崋山(かざん)の山中に入り、一心に修行をして、丹薬を服用していたが、しばしば故郷に帰り親戚を訪ねることもあった。このようにして、二百年たっても年をとらなかった。よその家に行けば、その家の先祖代々の善行悪行を数え上げること、まるでその目で見てきたかのようであった。また、人の吉凶禍福を予言することができ、的中しないものはなかった。
その姪が年老いて病気がちだったので、薬を与えた。姪はこのとき七十歳だったが、だんだんに若返って、顔色は桃の花のようになった。
漢の使者が西河の東を通りかかったとき、一人の女が老人を笞で打っているのを見かけた。老人は髪が真っ白で、跪いて笞を受けている。使者が怪しんで訳をたずねると、女が答えた。
「これはわたくしの息子にございます。その昔、わたくしの伯父の伯山甫が神薬の薬方をわたくしに伝授してくださいました。わたくしは息子にも服用するように申したのですが、飲もうとしません。今ではこんなに老いぼれて、わたくしの足にも追いつけないのです。それで怒って、笞を与えているのです」
使者が女と息子の歳を聞くと、女が答えた。
「わたくしは二百三十歳、息子は七十歳でございます」
この女も後に崋山に入ってしまった。
【神仙伝・伯山甫】