高山流水(こうざんりゅうすい) |
意味:絶妙な音楽や演奏。または、自分をよく理解してくれる親友のたとえ。 |
伯牙(はくが)は琴を弾くのがうまく、鐘子期(しょうしき)はそれを聴き分けるのがうまかった。
伯牙が、高山に登った時の心境で琴を弾けば、鐘子期は、
「素晴らしい、高くそびえ立つさまは、泰山のようだ」
と言った。流れる水を前にした気持ちで弾くと、鐘子期は、
「素晴らしい、広々と広がり流れるさまが、長江や黄河のようだ」
と言った。伯牙の心境が、鐘子期は必ずわかった。
伯牙が泰山の北に出かけたとき、急な大雨に遭った。
岩陰で雨宿りをしていると、もの悲しい思いがわいてきた。そこで、琴を引寄せて弾いた。
はじめ、降り続く霖雨の風情を造り弾き、さらに山の崩れる音を造り奏でた。
曲を奏でるたびに、鐘子期はその情趣をことごとく言いあてた。
伯牙は琴を置いて、感嘆して言った。
「素晴らしい、全く素晴らしい、君の耳は。
君が想像しているのは、まるっきり、わたしの心の中と一緒じゃないか。
わたしの弾く琴の音は君の耳から逃れるところなど、もうどこにもない」
【列子・湯問】