黔驢の技(けんろのわざ) |
意味:稚拙な腕前を披露して恥をかくたとえ。見かけ倒し。 |
黔州(けんしゅう)にはもともと驢馬はいなかった。
物好きな者がいて、船に乗せて連れてきた。
しかし役に立たないので、山の麓に放した。
これを見た虎は、その体の大きいことに驚いて、
林の間にかくれその様子をうかがった。
しばらくして、近づいてみたが、おとなしくしていて、どんなやつかわからない。
ある日、驢馬が一声鳴いた。
驚いた虎は遠くまで逃げた。
喰われるかもしれないと恐れたのである。
しかし、近くによって見ると、これといって才能もなさそうだとわかった。
鳴き声にもなれてきた。そこで、また近づいて周りをうろうろと回った。
さらに近づいてわざと驢馬の体にぶつかってみた。
驢馬は怒って足で虎を蹴りあげた。これを見ると虎は喜んで言った。
「お前の技はこの程度か」
そして、跳びかかってのど元を喰ちぎり、肉を喰尽くすと去っていった。
【柳宗元・三戒・黔之驢】