2006年の3月24日、私の大学の授業科目の登録確認がありました。
その時にふと、近くにありながら訪門したことがなかった秘境駅があることを思い出しました。
ちょうど桜の時期でもあり、お花見ついでに行ってみるのも良いものだと思い、訪問してきました。
その時の様子を、短編として紹介したいと思います。
今回は中央本線の双子の秘境駅、定光寺駅と古虎渓駅を巡りました。
まずはじめに、古虎渓駅に向かいました。
この駅は両側がトンネル、駅前が道路と崖、そして駅裏は川とそれに架かる橋と街道のみという典型的秘境駅です。
この駅にはコンクリートブロックの駅舎があることは知っていました。
しかし、なんと委託の駅員さんもいらっしゃいました。
無人化されてしまったものだと思い込んでいただけに驚きました。
やっぱり駅員さんがいる駅は良いですね。
入場券代わりに次の定光寺駅までの切符を買いました。
マルス(発券用コンピューター)が装備されていたのは残念でした。
やはり硬券はローカル私鉄だけの物になってしまったようです。
それに、利用者は以外にも多いらしく、駅前に雑然と自転車やスクーターが乗り捨てられていたのは興ざめです。
もっときれいに並べることが出来ないのか!と言ってやりたくなりました。
それ以外はとてもいい駅なのに、残念です。
この駅の魅力は、やはりすぐ脇を流れる庄内川の堤防に植えられた桜並木でしょう。
特に1番線側から堤防側である2番線側を見ると、まさに「桜に覆われた駅」という感じです。
こんな良い駅ですが、快速列車以上の列車は全て通過してしまいます。
それもこの雰囲気を保つための必要条件なのでしょう。
45分ほどお花見をするためだけに駅を訪ねるなんて、贅沢じゃありませんか?
春の訪問駅として、ここ以上の駅は中部地方には無いでしょう。
この駅は緑色の欄干を持った鉄橋で街道とつながれています。
対岸から見ても桜の中に埋もれているように見えます。
実は、ホームに下りた時点でも気付くのですが、この駅はトワイライトゾーンの最寄り駅でもあります。
中央本線は昔は単線で、SL列車が川沿いをくねくねと縫いながら走っていました。
その頃はきっと今よりもずっと風光明媚な車窓が楽しめたのでしょう。
しかし、こんなすばらしかったであろう路線も時代の流れには勝てませんでした。
川沿いの区間は複線・電化されると同時に、山を強引に貫くトンネルに変えられてしまいました。
この駅には昔の路線の面影を見ることが出来る場所があるのです。
右写真の風景がそれで、緑色の短いガーター橋と築堤が見えるのです。
実は今でもその方向に伸びる線路が一部に残されていて、保線用の側線としてかろうじて生きています。
その頃の景色に思いを馳せるのも良いかもしれません。
電車が来たようなので、そろそろ次の駅に向かいましょう。
昼間の時間帯はこの211系5000番台のトイレ付き4両編成が普通列車に使われています。
夕方や早朝に来れば113系の6連や10連が見られるでしょう。
ここで注目してもらいたいのはホームの狭さ!
電車区の洗浄台ほどしかない、と言ったら極端でしょうがわかりやすいと思います。
しかも、この駅は崖っぷちにあるのです!
電車に乗り降りするとき以外は端っこに行かれないことをお薦めします。
反対側ホームは特に崖を彫刻して建造したみたいに見えます。
古レール製の上屋が崖にへばりついています。
こんな駅に跨線橋は作れないからどうするかと言うと…
なんと岩場に直接トンネルを穿ってあります!
こんな山の中でプチ地下鉄駅体験が出来るのです!
しかし「定光寺駅」ならではの絶景もあります。
名古屋方面の1番線ホームからは駅前(下?)の渓谷と集落、そして桜並木が一望できるのです!
電車の中からも見えますけれど、見るのと降りるのとは大違いです!
これは横見先生もおっしゃっています。
ぜひ皆さんもこの駅を堪能してください。
ここで重要な注意事項をもう一つ。
この駅は秘境駅とはいえ中央本線という大動脈の真っ只中にあります。
つまり停車する列車より猛スピードで通過する列車のほうが多いのです!
しかも、さっきも言いましたがホームが恐ろしく狭い崖っぷちの駅なのです!!
列車の撮影時はくれぐれも広いところで安全に撮影しましょう!
けれど、うまくいけばこんなに迫力がある通過シーンが撮れます。
「しなの」はあまりに速くて失敗しました…(泣)。
この駅はとても高い崖っぷちにあるせいで駅への階段が長くてきついです。
炎天下に散策したあとでこの階段を上るのは地獄と言ってもいいでしょう。
けれど、こんなロケーションのおかげで一味違った春の鉄道写真をゲットできます。
桜の季節、そして紅葉のきれいな季節にお訪ねになると最高かもしれません。
このあとやって来た列車に乗って名古屋に戻りました。
日本の3大都市の一つから電車一本で秘境駅に行けるなんてすごいですよね。
ただし、多治見方面まで行く普通列車は片道で1時間に2本ほどしかありません。
列車を待つ間に名古屋駅で駅弁を仕入れて、この2駅でお花見・紅葉狩り気分で食するのも乙なものかもしれません。