愛知県碧南市 誇れる知の財産と暖かい笑顔が頼もしい 「碧南市民図書館」
<碧南市民が頼りにする知の源。旧来の排他的な図書館のイメージを一蹴し、親しみある図書館として平成5年(1993)7月17日に開館。利用者と同じ目線になって相談に答える職員に「公共サービスとは何か?」を見る> 碧南の冬を彩るイルミネーションで有名な並木道。「へきなん芸術文化村」一画にある碧南市民図書館である。 碧南市の市制45周年を記念し、隣接する芸術文化ホールと共に、平成5年7月17日開館。延べ床面積4327平方メートル、蔵書収納能力40万冊の規模。 一階は一般の書籍、二階には子供図書を扱う。洗練された外観を持つ碧南市民図書館だが、誇るべきは働く職員の方々である。 利用者の視点から常に考え、真摯に対応。図書館に訪れる人々が何を求めているか把握し、企画を提案する。 「碧南市民図書館」で働くという自負を抱く職員達は実に生き生きとしている。
<8月の暑い夏の日、へきなん芸術文化村の中庭は意匠された本来の意味を表す。集められた太陽の光は一点に集中し、「光の空間」が出現する。水の噴出する円形階段から伸びる道とリンクする不思議> 赤い煉瓦敷きを歩けば、向井良吉・作の彫刻「碧南」が現れ、左には村内を流れる小川のせせらぎ。 芸術文化ホールとの間にある円形庭園には循環する水を使った池が造作される。 池の中央には図書館入口へと向かう65センチ角の踏み石が用意され、何か仕組まれた意匠を感じてくる。 踏み石は単なる飾りで実際には通ることは出来ない。では何故図書館入口の方角へと向いているのか。 図書館の建物をよく見て欲しい。中庭方向を内に弧を描く形。上部には熱線反射ガラスが整然と並び、都会的な雰囲気を見せる。 しかしこれは単なるデザインではない事を確信した。初夏のある晴れた一日、図書館入口がやけに眩しく輝いていた。 弧となる熱線反射ガラスが集めた光が、池の踏み石からのびる一点に集中している。設計した建築家の「してやったり」といった顔が浮かぶ。
碧南市の図書館(へきなんしのとしょかん) 誰もが閲覧出来る施設としては、明治34年(1901)の大浜同志会による新聞雑誌公衆縦覧所、大正元年(1912)の町立新川文庫などが存在した。 碧南市の図書館としては昭和23年(1948)の市制移行に従い、新川文庫の蔵書6500冊、場所共々引き継いで「碧南市立図書館」としたのが始まり。 昭和23年10月から翌年3月までの統計によると、貸し出し数は和書2214冊、洋書5864冊の合計8078冊。一日平均27冊、13人であった。 昭和44年(1969)11月3日に今の中部分館の場所に図書館は移る。昭和45年(1970)6月に移動図書館「ロータリー号」が巡行を開始し、昭和59年(1984)の14年間続いた。
碧南市民図書館の東にある信号交差点を碧南辻方面に歩いた場所に一軒の鍛冶屋がある。 ハンマーを手に持ち鉄を打つ姿が印象的な看板を見る。 "Decorative Ironworks"の下に『柴田火造』の文字。 緑色をしたシャッターは4分の3ほど開けられ、創作した作品が並べられる。 白壁に飾り戸棚が供えられ、背後には日本風の引き戸とお洒落な空間が演出され、黒光りする鉄製品の魅力を際立たせる。 私が気になったものは、ランプや水差し置き、蚊取り線香置き。小物ではくさび、釘等。 夜にはランプに明かりが灯されて、これまたお洒落な景観に。決して安い値段ではないが、長く使えそう。 他にも門柱等の注文制作も引き受けているようで、センスある生活を求める人には注目の鍛冶屋である。
< text • photo by heboto >