愛知県碧南市 5月下旬から6月上旬まで「油ヶ淵遊園」でおこなわれる催事
<夜店も出て盛況を見せる。花しょうぶ咲く油ヶ淵遊園では、軽妙な音楽にのせられて今宵踊る。浴衣姿の輪に飛び入り参加、最初は照れて踊る人々も、いつしか雰囲気に酔いしれる> 「花しょうぶまつり」が行われている週末の夜には、満開となった花しょうぶをグルリ囲んで踊る人々がいる。 祭イベントの一つ、「民謡のつどい」である。お揃いの浴衣を着込み、この日のために練習したという一生懸命さが見ている者にも伝わってくる。 傍観者となっていた人々も、場内を流れる軽快な音楽に絆され、何時しか踊りの輪の中へ入っていく。 楽しげな雰囲気に誘われてか、時の経過と共に人が押し寄せ、夜店の明かりも煌々と賑わいを見せる。
<花しょうぶまつり期間中に開催される「碧南市観光写真撮影会」。美しきモデルさんと咲き誇る花菖蒲をフレームに収めようと必死に動き回る。和やかな花しょうぶ園の雰囲気もこの日だけは殺伐とする> 「花しょうぶまつり」期間中のある日曜日、碧南市の観光を広く宣伝する事を目的に「碧南市観光写真撮影会」が開催される。 毎年、2人(主に女性)のモデルさんを招いて、午前は浴衣姿、午後は洋装という枠組みで進行していく。 人気の企画で、多くのカメラマン・写真機愛好家が集まる。まつり期間中の花しょうぶ園は花を楽しむ穏やかな雰囲気だが、 この撮影会の日だけは殺伐としている。少しでも良い写真を撮ろうと、ファインダーを覗く顔は真剣。 「写真とは闘いだ」という言葉が嘘じゃないと実感出来る一日なのである。
室町時代には西端・鷲塚間に渡し船が存在していたという。まだ油ヶ淵が海で、鷲塚が島だった時代である。 西端・鷲塚共に「蓮如上人」に関係する史蹟が数多く残っている事からも、往来は盛んだったと推測出来る。 「道真っ直ぐ行った所、子供時分じゃ、渡し賃が高くて乗れんかった」と今年80歳になる老人、応仁寺の階段で西を示す。 油ヶ淵遊園の道を西へ、堤防の道と交差する手前が「西端の渡し場」だという。 蓮如忌には西尾方面から来た人が鷲塚しゃもじ池を経て、この渡し場へ到着したという。 蓮如上人が西端を往来した時代、「いつでも蓮如上人をお迎えできるように」と船着き場付近には、篝火が一晩中灯されたという。 この史実が後に「油ヶ渕」という名の由来になったという説もある。
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