愛知県碧南市 特異な姿をした三面大黒天の鎮座する「遍照院」を訪ねて
<はためく幟の間を行くと見えてくる赤い鐘楼門。片山家ゆかりの寺院、遍照院。どこから現れるか分からない仏様に好奇心湧き上がる。本堂に入ればビックリ!大仏様、窮屈そうな姿にコミカルな雰囲気。とにかく楽しい鷲塚・遍照院> 宗教的テーマワールド。鷲塚を代表する名刹、道智山・遍照院を一言で表すとこうなる。 赤い幟はためく間を通り抜けると現れる朱色の鐘楼門が美しい。 どこかしら視線を感じて見渡せば、小さな仏様が足下にいた。ほかにも何故ここに?二宮金次郎さん、漫画チックな大黒天さんの一枚絵。 トイレの小便器で用を足せば、金ぴかの仏さんを目が合う。ぼやけたガラスを覗き込めば、怖い閻魔さんの顔。 本堂内では窓際に追いやられ、窮屈そうにする大仏さんの姿。部屋の容量と大仏さんの不釣り合いな対比に、失礼ながら「えぇ、ありえへん!」と、つい笑ってしまう。
<ガラス張りの扉の向こう、暗闇に鎮座する三面大黒天。右に弁財天、左に毘沙門天、正面には固定概念を覆す大黒天の顔。おなじみの小槌に宝袋をもつ2本の手とは別に4本の手が!> 鷲塚・遍照院の寺宝、三面大黒天。本堂とは別棟の御堂に鎮座する。普段、御堂の扉は固く閉ざされ、覗き見る暗闇の中では、三面大黒天を発見する事は出来ない。 年2回、春と秋の大祭のみ一般の参拝客は三面大黒天を間近で見る事が出来る。 この三面大黒天、我々の持つ柔和な大黒さんのイメージとは趣を異にする。高さ109センチ、3頭身の体。 弁財天・毘沙門天・大黒天それぞれのどこか恐ろしい形相。六本の手には、宝袋・小槌・宝棒・鍵・三叉鉾・宝珠を持つ。 また三面大黒天両脇には立像の弁財天・毘沙門天が祀られている。
遍照院(へんじょういん) 寛永2年(1614)創建 本尊は阿弥陀如来 片山家の初代菊池四郎頼武は、後醍醐天皇より、尊氏追討の勅命を受け、 戦功を見事あげる。老年、帰依して仏門にはいり、嘉慶元年(1387)天台宗和国寺を荒子の地に創建した。 その後、徳川家康公との縁で、江戸の伝通院の住職を招いて天台宗和国寺を廃寺とし、 現在の鷲林町へ移転した。寛永2年(1614)浄土宗へ改宗、遍照院とした。
鷲塚・遍照院の立派な鐘楼門したには、”心のオアシス 遍照院”と書かれた白いベンチ。 柱には、遍照院を訪れた人が詠んだ俳句作品が羅列されていた。 用意されたポストには、投句箱の貼り紙。どうやら、一句詠んで投函してくださいとの事。 一方的にただお寺を拝観させるのではなく、参拝者との交流を図る、この姿勢… まさに開かれたお寺である。 遍照院の和尚さんを唸らせる優れた句を是非、詠んでみよう。 情緒的な世界が広がる鷲塚・遍照院では、すぐに題材が見つかるはずだ。
< text • photo by heboto >