愛知県碧南市 弘法詣りの宿がかつて多数存在した 古い街並み「前之輪」

旅する大浜街道

第30回 ぜんのわ・前之輪

前之輪の中心地でお地蔵さんを覗き込む 「とっておきのまち」を見つけた

垂れ幕かかるお地蔵さんの御堂

<「前之輪」集落へ到達した大浜街道。優しい人々が住む心暖かい地。中心の辻では一体のお地蔵さまが両手を合わせ北を向く。「大師道」、「あつた道」、そして「大浜街道」と各地へ向かう道が集まる場所。昔は数軒の旅館が在るほど栄えた。前之輪は私の好きなまちのひとつになる> 新幹線高架下の秋葉神社の前を行き、県道59号を渡る。古い民家が続く中、カイヅカイブキの巨木との出会い。きっと御先祖様も見上げたに違いない。 軒下で草花を手入れする老人に声をかけられる。私が古い道を探し歩いていると分かると、「この道は知多群道でもあったよ」と答えてくれた。 古い町並みある場所に住む人は、なぜか優しい。幅の狭い道から急に視界が開けると、小さな御堂を発見。場所はいろいろな方面からの辻となっていた。ここは「前之輪(ぜんのわ)」という集落の中心地。 まわりには格子戸ある屋敷もあり、歴史深さを感じる。御堂内を覗き込めば、両手を合わせるお地蔵さま。 このお地蔵さまの向かって右の道は「大師道」と呼ばれ、800メートル東で「緒川道」とも合流する。 お地蔵さまから北西へ向かう道は「あつた道」と呼ばれ、熱田神宮への道。 交通の要所といえるお地蔵さま前の辻付近では、数軒ほどの旅館もあったという。

前之輪の旧家続く

<言葉の響きの良さに「ぜんのわ、ぜんのわ」と通りを歩いてみれば、立派な長屋門が姿を見せる。ごみ一つ落ちていない道に誇り高さを垣間見る。情緒在る家並みと、くるまの往来少ない静かな場所。「前之輪」のまちを私はお勧めしたい> 「前之輪」は”ぜんのわ”と読む。静かな雰囲気の路地を歩いてみる。 他の町並み保存の場所より有名でないためか、散策するのは私一人。 格子戸の続く家には、手前に小石が並べられる風景。 これは車高ある車が通った時に屋敷の屋根を壊してしまわないように配慮されたもので、古い町並みを残す地域に多く見られる。 前之輪に来て感心することがある。道には不思議にゴミひとつ落ちていないのだ。 前之輪住民の景観保全に対する意識の高さを伺い知れる。どの屋敷も立派なもので、中には長屋門のある屋敷も。 西三河地方で見られる長屋門とは趣からして違うとは言い過ぎか。 門だけで普通の住宅一軒程の大きさは、やはり尾張だなと実感させられる。 古き時代の景観を残す前之輪ではあるが、散策愉しむ観光の地として有名でない事は不思議。 車があまり通らなく、ゆっくり自分のペースで愉しめるお勧めの町である。 なんだか自分だけが、「とっておきの場所」を見つけた気分で素直に嬉しい。

ヘボト自画像ヘボトの”ここもぜひ見ておきましょう”コーナー

辻にある知多新四国案内の石標「新四国巡りへの道標」 JR大高駅近くの「中屋敷」交差点から県道50号を鳴海方面に200メートルほど進んだ左手の辻に石標があります。 高さ83センチ、幅20センチの大きさで右差し指の絵は「新四国いちばん大師」と示して、左差し指の絵は「やごとかさでら」(旧字)とあります。 大切に保存されているらしく石標の縁はコンクリートで補強されています。 ”新四国”とは、「知多新四国八十八カ所巡り」という巡礼のお遍路さんを表しています。 石標にある「新四国いちばん大師」とは、知多新四国巡り1番目にあたる「曹源寺」(豊明市栄町)への道を示し、至る道筋は「大師道」と呼ばれていました。

次回予告です、お楽しみに!

古い家並みを見せる前之輪集落

第31回 「鳴海八幡宮」

各地より来る道が「前之輪」に集まるということは、集落の古い歴史を伝えていることの証明ではないだろうか。 趣ある路地を求めて彷徨い歩く者にとっては、実に魅力的な小径が多く存在する前之輪の集落。さらに奥へと進めば、素晴らしい家並みに出会えることを期待してしまうが、先を急がねばならぬ。 大浜街道は、旧来の姿を色濃く残し北上する。道が曲がりを見せる地点、大きな赤鳥居には金で「八幡宮」の文字。 前之輪の集落と共に歴史を刻んできた「鳴海八幡宮」である。厳かな境内には樹齢1000年を超える楠の巨木が鎮座している。きっと御先祖様たちも…。 ■ 第31回 「鳴海八幡宮」 へ

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