4.カワイ試弾記その2&ヤマハ試弾記、そして・・

カワイ編

まず、前回カワイ名古屋ショップで誘われていた、「グランドピアノフェア」に行きました。今回はグランドピアノフェアとしての受付嬢が出ていて、前回のようなお間抜けは有りませんでした。「担当営業は?」と聞かれたことからすると、一見さん相手にせず、のフェアだったようです。

RX−1A
まず触ったのが、RX−1Aです。このサイズは私が学生の頃には存在せず、前回のピアノマスク付きのものを弾いたのが初体験だったのですが、振り返ってみると何故かこの型に点数が甘くなる=特に引かれないまでも欠点を感じない=のが不思議です。音の出方とタッチの具合がそれなりにバランスしているのかもしれませんが、どうせ小型と思って本気で弾いていないからアクションの違和感を感じるまでいかなかったのかもしれません。今になって考えると、2サイズのアクションには感じた違和感があるのかどうか、結局よくわかりません。

RX−2CLE
音は3CLEと同系統の奇麗で冴えた音です。しかしここで気合を入れて弾くと、2サイズのアクションの限界を感じ取ることが出来ました。左手の強打の後が「ぽよよ〜ん」という感じで戻るのです。これ以上上手く表現できませんが、十ウン年前にヤマハのG2Eで感じていたものを思い出せました。

RX−3CLE
これが大本命です。音は2CLEと殆ど同じですがタッチに2サイズの違和感が無いことを再確認しました。スクリアービンのソナタ5番の格好いいところとか、同じく第4番の最後とか、叩く所になってもあまり叩く気を起こさせませんが、ショパンやシューベルトを弾くと、落ち着いて弾けるのがメリットと感じられます。このあたり、後でヤマハに行って違いが良く分かりました。

RX−3A
前回はCLEに大きく劣る気がしましたが、今回はまあまあの感じ。中低域がぼよぼよした締まらない感じがしていたのは調律が狂っていたのでした。ということを差し引くと、これも悪くないです。悪くないですが、CLEと比べてしまうと冴えがない分地味で鈍い印象は残り、10万円違いで買えるならやはりCLEです。

SK−2
購入候補ではなかったのですが、今度は高級タイプのこれも弾かせてもらいました。軽いタッチです。錘を載せて鍵盤が沈む荷重でいうと、RXが45gに対し、SKは40gで合わせているそうです。違いは分かるもののどちらでも弾けますが、重めのに慣れておいたほうが他のピアノを弾く時に対応しやすいような気がするので、自宅のピアノは重めの方が良かろう、と思っています。そして再び「2サイズのアクション」の「ぽよよ〜ん」を感じてしまいました。しかし音には素晴らしいものがありました。カワイの音なのですが、それを完全に磨き上げたつややかな音です。

SK−3
それならば、と1クラス上のこれを弾いてみました。軽いタッチのままで、2サイズの違和感も無く弾けることをもう一度確認できましたが、音の美しさでSK−2の域に達していない気がします。その旨を営業の前川さんにいうと、「お目が高いですねぇ。調律師さんもそういうんですよ。どうもSKに限って、2型のほうがバランスが取れてるらしいですよ。」と、こちらのプライドをくすぐるようなことを言います。

RX−1AAT
ますます購入候補から外れますが、消音グランドピアノも弾いてみました。タッチに何か妙な重さがあります。生ピアノ状態と消音状態とでタッチの差は微妙に有ります。ヘッドホンで聞く消音状態での音は、私のHE−10と同じくEX(1千万円ほどするカワイの最高級コンサートグランドピアノ)で撮った音源のはずですが、HE−10のスピーカーで聞くほうが遥かに自然です。生ピアノとして弾いてしまったら消音状態には我慢できなくなるはずですよ、という前川さんの言葉が良く分かりました。

SKとCLEで、2型ならSK、3型ならCLEで、定価ベースではほぼ同額になるこの2機種の比較では、音だけならSK−2ですが、私はタッチ優先なので3CLEで殆ど迷いませんでした。さらに、SKにはピアノマスクが付かない(同じ形だからつけることは出来るのだけれどポリシーとしてつけないのだそうです)、SKは一切値引き無しだけれど、CLEならグランドピアノフェアで値引きできる、というところでも違ってくるそうです。・・・とおだてられくすぐられの挙句、「お支払いは先でもいいですよ」の殺し文句も飛び出して、ついにRX−3CLE(PM)を注文してしまいました。特に値切りませんでしたが、約2割引いてもらいました。

DIAPASON DR−300BGX
こうなると、こちらは客ですから、さらに試弾させてもらいました。ディアパソンはその昔、大橋さんという人が作っていた伝説的なピアノで今はカワイが製造している、という程度しか知りませんでした。カワイが製造するようになっても昔ながらの作り方をしているのだそうです。レギュラーシリーズでいうと2と3の間の奥行き寸法で5サイズくらいの価格、と割高になります。しかし、私の好みからは外れました。「ウルトラ・レスポンシブ」と謳っているプラスチックを多用したカワイの最新のアクションに比べると、なんだかざらざらしています。音はカワイのレギュラー品と似たようなものとしか私には思えませんでした。カワイの作っている変り種としてはボストンの方が断然変わっています。

GM-10
奥行き150cmのミニグランドです。音は親しみ易いというか、有体にいって安っぽいのですが、グランドピアノフェア価格78万円だったか、で高級アップライトより安くなっています。これでもグランドはグランドですから、両者で迷う人がいるなら、私はGM-10を推します。タッチもそう妙なものではなかったと思います。

アップライト
3台触りましたが、型番は失念しました。高価なものの音はGM−10に勝っていたと思いますが、価格でも勝ってしまっていたはず。むしろ安価なモデルの傷あり33万円だったか、の方が狙い目と思いました。安いものでも普通の家庭に死蔵(?)されているアップライトより遥かに良く聞こえます。普通の家で壁に向かって置かれている状態よりアップライト同士背中合わせで置かれる方が余程よく聞こえるのでしょうか、それともアップライトピアノの音のレベルが昔より上がっているのでしょうか。調律が狂ったものが散見された売り場だったので、調整もしっかりできているとは思えなかったのですが。

HA−8
自宅の電子ピアノの後継機種です。譜面台を確認しましたが、位置が高く、かつ短くなっていて、ほぼ手の動きの邪魔にはならないようです。そして短くした代わりに滑り止めの溝が掘ってありました。いい機械だと思うけれど、というと、前川さんは「これよりもアップライトを勧めてしまうんですよね」とのことでした。

 

ヤマハ編

ヤマハに行って弾き比べするのも予定の行動です。カワイで発注まで至ったのが予定外でしたが、RX−3CLE(PM)を遅かれ早かれ買うことは殆ど決めていましたから、買う機種の選定というのではなく、単に同じ日にヤマハとカワイを弾き比べしたかったのです。

とはいえ、カワイで決めてきたけど試弾させて、とも言いにくいし、とか考えながら、栄から伏見まで、名古屋の中心街を地下鉄一駅分歩いてヤマハミュージック名古屋に着いたのですが、中二階の鍵盤楽器フロアでは二人きりの店員さんが接客に追われている状況で、「試弾させて下さい」「どうぞ」で済んでしまいました。ただしカワイほどの台数はありません。

C3L
昔から自分で買うならこれかな、と漠然と思っていた機種です。弾くなりヤマハの強靭な音が出てきて、自分自身が長きに渡り「ヤマハっ子」であったことをしっかり思い出しました。スクリアービンのソナタ4番や5番のさわりを弾くと、どんどんガンガン行きたくなって、若かりし頃を思い出してしまいます。鳴りがいいだけでなく、強打にしっかり応えてくれるからますます叩いてしまい、テンポも音量も上がります。でも、だからこそ今求めているピアノではないと思ってしまいました。元々大した腕も無いのに難しい曲をいい加減に弾き飛ばしてしまうのを、この年になって修正しようと思っているのに、ここでヤマハを買ったのではまたピアノに煽られてしまいそうです。むきになって力量以上に叩きすぎて崩れてしまうのです。

指の基本的な技術を見直したいという段階(今の私)ではカワイの方が合っていると思います。楽器が演奏者を育てる、という言葉が何となく浮かんできました。売り場でやかましいくらいの音(家内は「すさまじい音」と言っています)を気持ちよく出してしまいましたが、自宅に持ち込むとなると近所に一段とご迷惑をかけてしまいそうで、この点でも現時点では避けたいと思いました。

私が今求めているのとは違う方向だったわけですが、素晴らしい楽器だと思います。タッチはカワイの標準タイプほど滑らかではないですが安心感があり、ディアパソンに感じた違和感は全くありません。叩けば叩くほどに鳴るのは本来素晴らしいことです。同じ「鳴る」と言っても、ボストンでは多分ここまで叩く気になりません。裏腹ですが、強靭だけど単調な音で表情が乏しくなるから、それをカバーしようとしてつい叩いてしまう、のかもしれません。

C6L
そろそろセミコンサートグランドと呼んでもいいサイズです。見た目の迫力は流石ですが、弾いた感じは何れにしろヤマハの音とタッチで、C3Lとの違いが分かりませんでした。私には「猫に小判」だったようです。自分の部屋で弾く目的には、アクションが違ってくる2と3の違いの方が、3と6の違いよりも決定的なのかもしれない、と強がりを言っておきます。

この他のグランドピアノはC3のサイレントピアノのみ、電子ピアノもグランタッチが見当たらず、冷やかすには物足りない品揃えでした。
 

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