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建物探訪記 富士欽ソフト別ウィンドウで開きます
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古民家と釜屋建の望月家住宅 2007.03
左が主屋 右が釜屋 中央上部は桧丸太を刳り貫いた雨樋 建物南側の雨樋排水口 鬼門の方角を撮影 囲炉裏のあるオカッテ 奥はドマ 玄関入口横の風呂
写真
  愛知県豊橋市から北へ車で30分走ると、なだらかに広がる丘陵のなかほどの集落に国指定重要文化財建造物「望月家住宅」があります。望月家住宅は主屋と釜屋にそれぞれ別個の茅葺き屋根をかけ、釜屋建と呼ばれるかたちしています。平面は民家の基本型である直屋 (スゴヤ) と同様、土間と床部分を並べた同じ構成です。
  釜屋建は茨城、千葉、静岡、三重、高知、鹿児島、沖縄に分布したことから、南方から黒潮にのって伝わったものと考えられ、椰子の実と同様、ロマンを感じさせる建物であります。少し前まで天竜川、豊川流域や浜名湖周辺に多くみられましたが、今このあたりでは望月家と引佐町の鈴木家の2軒だけ残っています。釜屋建は2つの棟から二棟造りあるいは分棟造り、棟方向が直行するところから撞木造りとも呼ばれ、九州中央部には棟方向が平行する二棟造りもあります。
  望月家住宅の主屋は平入りでオデエ・オオエ・オヘヤ・オカッテの整形四間取型居住空間として、釜屋は妻入りでニワ・ウマヤ・ナガシの炊事・作業場として使われ、両者の軒先が接するところに丸太を刳り貫いた大きな谷樋があります。以前の望月家は2棟でなく4棟軒を連ねて建っていたそうです。またニワ (土間) にウマヤがあるのは、牛馬は家族と同様大切にしたことと盗難に遭わないようにするためという理由です。
  生活が豊かになり家を広くするには、桁行きあるいは梁間方向に拡大する方法、同じ大きさの家をもう一つ作る方法があり、前2つの方法は大きな構造材が必要となります。海辺では大きな木は少ないこと、温暖な地方では火を使うと暑くなるため居住空間と別棟の釜屋で火を使う必要があったこと、また台風に対して屋根を低くする必要があったことなどから、釜屋建民家は別棟を建てることにより広くしたとものと考えられます。
  庶民の長年にわたる生活の知恵・工夫や、また自然に対し畏敬の念が強かった時代背景が古民家を通してみることができます。近代以降、人は自然の秩序を知り自然を支配してきましたが、自然と融けあう古民家と出会うと、これからの自然風土と建築・人との関わりのあり方を教えているような気がします。
  大和地方に分布する「高塀造り」 (大和棟造りともいいます) は伊勢から伝わり、釜屋建の系統を引き継いでいることを聞いたことがあります。高塀造りのつくりをみるとなるほどと思われるところがあります。また機会あれば訪ねてみたいものです。
記:社長