吉良川は在郷町として栄え、高知市から南東へ走り室戸岬まであと15km地点にあります。在郷町とは農村でありながら商人・職人などが集住した町をいいます。ここ吉良川は古くから林業が盛んで、明治期からは備長炭の原料となる馬目樫の産地として、海岸線に沿って町の山側で炭を生産し、浜側ではお店がならび、主に大阪方面へ出荷していました。大阪との文化交流・伝播と、台風の通り道で強い風と雨が多い自然環境の影響をうけ、土佐漆喰・水切り瓦・いしぐろと呼ばれる伝統的建築仕様をみることができます。
古来、土佐漆喰は消石灰に発酵した藁 (スサ) をまぜ、3ヶ月から半年間寝かし生産していました。お酒造りと同様に「発酵」の知恵と発想がここにも生かされています。糊を使わないため水に濡れても戻りがなく厚塗りを可能にし、キメ細かさなどの特徴があります。
水切り瓦は強風雨から漆喰壁を守るためのものです。裕福な家ほどたくさん取付けました。水切り瓦と瓦の間にある漆喰は左官が意匠を凝らし、これをみてどの左官が造ったか分かるそうです。
「いしぐろ」とはそのままあるいは半割したグリ石を積み上げた塀のことをいいます。山側の家は、頑丈な「いしぐろ」で囲うことにより強風を防ぎ、低い屋根・屋根形態・家屋配置を工夫することにより強風の抵抗を小さくし耐えるようにしています。浜側の家はお店を構えなければならないため、「いしぐろ」塀はほとんどありません。
記:社長