ファイブ・ナイン
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(現在収録中)

 

ファイブ・ナイン

ACT.2
「弐亜炎志(にあ えんじ)という人物。」

 

「うあーーー!!やばい!寝過ごしたっ!!」

ケータイを手にし、目覚まし機能がとっくに止まっているのを見て、

そう叫んだ。(やっぱり止めちまったか・・)

だが、慌てる様子もない・・・

きっといつものことなのだろう、

(電車・・ 1本 遅らせばいいや・・)

ごそごそと頭をかき、目をこすり、ゆっくりと起きだす。

その部屋の木製の机の上にはPC(パソコン)が起動していた。

液晶17インチ・モニタ、とデスクトップタイプの本体、

外見(そとみ)は一見、市販のケースだが、イ○テル=ペ○ティアムのシールがない

おそらくボードが替えてあるのだろう。その時に剥がしたのだ。

そして、そこにはおなじみ、PS(プレ○ステーション)のコントローラが

変換コネクタを介して

つながっていた。

起動していた。というのは少々違っていたのかもしれない

今はスタンバイのランプが点(つ)いているだけである。

---

「槍(そう)!槍(そーーーお)!電車、間に合うの?」

母親らしい女性の声が部屋の外から聞こえてくる。

「光次(こうじ)は20分も前に出たわよ〜」

「わかってるよ。弟の行動くらい・・」

聞こえないくらいの小声で答え、

昨日のログを見ながら制服に着替え、カバンをつかんで外にでる。

まったく、いつもと変わらない。

その男の子の名字(みょうじ)は「新摩(しんま)」

さきほどの部屋の壁に陸上のユニフォームが掛けてあり

ゼッケンにそう書いてあった。

「ふぁーあ(昨日の結果、聞きたかったなぁ)」

立ったまま電車に揺られながら、目を閉じ 昨日の戦果を気にしている。

「よお、新摩(しんま)!あいかわらず眠そうだな。」

レンズの上下幅が狭い形のフレーム、その眼鏡をクィっとあげて

話かけてきた。・・・(田中か・・)

「ああ、うん ちょっとね。中間(テスト)近いし・・」

「またまた〜、そんなこといって 夜、遊んでるんじゃないの?」

・・(あたってる。ど真ん中、直球 ストライク。そんな田中、おまえには)

「・・ショートダッシュ プラス20本・・・」

「えっ?なに? ・・?ああ、そう“朝練(あされん)?”いいのお前?」

一度、田中の表情を見て、目を窓の外に向けなおした

「ひざ・・、痛めてさ、親指の付け根も・・」

「ああ、あの春先の大会の話ね・・」

眠さもあるが、さすがに触れたくない話には田中もそれ以上

何も言わなかった。 ただ、何か他に話はないかと頭をめぐらせているようだ

「・・ああ、そうそう、おれの知り合いの磯山(いそやま)、
 もと野球部の・・普通科の・・」

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公立西区『美路根須(みろねす)学院』
2012年この年の一部法律改正にともない、高校→大学という
流れの間に位置する「専門学校」というくくりが

崩壊した。

いや、正しくは・・激しい“生き残り”をかけた『改変』に迫られたのだ。
歴片に見られる子供の少子化。高まる有名小学校・有名中学校の
入学競争率。

いい高校→いい大学という意識が沈静化しないまま、現在の教育は
行き詰まっていた。

そう、入願者の激減した「専門学校」もしかり。

そもそも、専門分野を教えるはずの機関が情報の肥大化・多様化に
ついてこれなかったのだ。

知りたいことはネットで拾える。

だとすれば、わざわざ専門学校で習う必要があるのか?
この問い掛けに「ある」と答えるとすれば・・・「ある」。

それは、「実技」だ。 いくら必要な情報があふれていても
それが実践・実施できなければ意味をなさない。だが、
現在の専門学校では「実技を行う場所=学校そのもの」がないのだ。
入願者の激減により閉鎖した数々の学校。

行き場を失った職員たち、増える失業率。

そこにひとつの“光明”がみえた。

『夕方から夜間、だれも使っていない高校や一部の大学を
 使えないだろうか?』

無茶を言う人物がいた。
だいいち、公立の建物を24時間営業のコンビニのようにする訳には
いかない。
それに、学校自体の運営、教室の管理はどうするのだ?
法律的な制約。経営の管理、安全の管理。さまざまな問題がとびかうなか、

それらをすべて担う人物が現れた。

学校を画一の機関としてとらえず、
常に柔軟にことを進める。その政策の一角としてここ、
公立西区『美路根須(みろねす)学院』は
「普通科」、「工業科」、「商業科」、「農業科」、「家政科」等
多様な学科がすべて集まったのだ。

---

さて、「工業系 電子情報科」を専攻している新摩(しんま)には

「普通科の・・」

と言われても全くピンとこなかった。だが、そのあとの

「・・あいつがパソコン欲しがっててさ、
 ・・で、悪いんだけど、今度 『
弐亜(にあ)』先輩に
 頼んでもらえない?」

という言葉に思わず顔がゆるんでしまった。

もうあと2分で到着する。公立西区『美路根須(みろねす)学院』
ここに通っていて、彼、『弐亜 炎志(にあ えんじ)』の
名前を知らない者はいない。

「オーケー!分かった、放課後 炎兄(えんにい)が
 時間とれそうなら、聞いとく!」

そう答えて、目を覚まし 駅のホームを駆け降りた。

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「美路根須(みろねす)専門学校」

もともとは「美路根須(みろねす)高等学校」と
「美路根須(みろねす)学院大学」が同じ敷地にあっただけの
ごく普通のエスカレーター式の学校であった。

明治時代中期から後期、外資系の資本が流れ込んでくる際、
カソリック系の学校が多く建設された。

その時、創始者である「聖(セント)・ミ“ル”ネス」(ろ ではなく る)が
この学院を立てたということだ。【セント・ミルネス学院】
もともとは私学であったが、戦争の際焼失し、またミルネス氏は
イギリスで天命を全うした。とのいきさつもあり、

ここの土地の旧名である「美路地区(びじちく)」(道が美しかったのあろう)
から名前をかりて『美路(びじ)×ミルネス=美路根須→みろねす』
「美路根須(みろねす)中学校」=現「美路根須(みろねす)高等学校」
となった。

その美路根須高校に夕方から夜間の間、『専門学校』が開設したのだ。

---

「弐亜 炎志」(にあ えんじ)

彼は何者なのだろうか?

---


まあ。いずれ語られるであろう、

謎というほどのものはない気配である。

第3話へつづく。


★第3話は作成中


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