農地法第3条許可申請の取扱いについて
 農地の所有権移転をする場合は、農地法第3条の許可が必要となります。許可するにあたっては、次の基準に該当するものは許可することができません。

 権利を取得する者及び世帯員が
 @権利を取得する農地を含め、すべてに耕作を行うと認められない場合
 A農業に必要な農作業に常時従事すると認められない場合
 B権利取得後の農地の耕作面積が30アール未満の場合
 C農業経営の状況、権利を取得する農地までの距離からみて効率的に耕作を行うと認められない場合

 この中で@については、現に耕作している農地及び取得する農地が無断転用でない旨の内容です。無断転用がある場合は原則、是正(農地に復元、転用手続等)されない場合、許可することができません。また、取得する農地がその場所や状況等から農地として耕作の利用が見込まれない場合についても許可はできません。
 Aは世帯内で150日以上従事していること。
 Bは利用権設定等により、他の人に貸している農地は耕作面積に含まれない。
 Cの距離は自宅から15Km以内、時間にして車で30分以内が目安。

現況証明処理事務の取扱いについて

現況証明に対する考え方

 現況証明の対象事案は、農地法の許可を受けずに農地を農地以外にしたもので、本来は、無断転用である。無断転用に対して行政は、速やかに、その違反を是正させるように努めることが本来の姿勢である。
 しかるに、私有財産である農地に対して、違反是正のための行政処分を行おうとする場合、法令等による制限範囲内で行うものとされており、優良農地とは言えない場合、周辺農業に及ぼす影響が特にない場合、違反の発生から長期が経過している場合などは、その行政処分が困難なことが多い。
 結果的に、行政処分ができない場合、行政指導となり、是正に至らないまま時が経過してしまう事例もある。
 また、行政により全ての違反が把握されているわけではなく、農地法の違反から長期を経過したような事例も現実には存在している。
 そこで、これら事例に対しては、法に基づく許可手続き等を行わせること事が本筋ではあるが、時効制度の考え方や行政側による適法性の確保等を斟酌して、愛知県では一定の要件に合致するものに限り、現況証明が行われてきた。
 なお、原状回復命令が行われ是正指導が継続されている事案などは、この方法による処理は適切ではない。

基準に対する考え方


 昭和57年3月15日からは、現況が農地以外であること、農地以外となり20年以上経過していること、それを公的に証明できることを要件として、これに合致する場合に限り、現況証明が行われてきた。
 これに該当する事例としてはほぼ建物がある場合に限定されることになり、現況証明は、家屋の存在する事例がほとんどである。
 例外的に、山間地域などで杉、檜、松等が植林され山林となっている場合における証明がある。
 これは、人の手による植林という転用行為が行われ、成木が林立する山林の状態であることから現地を確認すれば、木の生育状況によって長期の年月が経過していることが推測可能であり、さらに、国土地理院発行の空中写真等の裏付けがある場合に証明されているものである。
 しかし、農地以外であっても、家屋評価証明書などの公的証明がされない事例(駐車場、資材置き場等)では証明ができない。
 これは、行政側が現地を確認しても、現況が長期の年月が経過していることは容易に判断できず、また、20年以上経過していることの公的証明がされないことによる。
 さらに、農地法の手続きを経ずして農地転用された事例を明確な根拠もなく、容易に農地以外のものとして認めることは適当ではないことによる。
 これらは、現況証明の基準として今後も同様の考え方となる。

現況証明は、どのような性質の行為か
 
 現況証明は、農地転用許可のような行政処分(法律行為的行政行為)ではない。
 また、市街化区域における農地転用届出のような法律に、基づいて行われる受理行為(準法律行為的行政行為)とも異なっている。
 農地以外であるという事実を証明しているにすぎない。いわば、事実行為である。
 したがって、願出により行政側は、証明しなければならない責務を負わされるものではない。
 愛知県では、これまでの取扱いにより、一定の要件に合致するものに限り、証明を行っており、行政の統一性、公平性の観点より、同様な要件に合致する場合は、同様な取扱いを行うこととしている。
 なお、このような取扱いをしていない県もある。

現況証明の処理機関の移転

 現況証明は、これまで県が処理をしてきた沿革があるが、現地調査をして、現況が農地以外であること、20年間以上経過したこと、公的な証明があることが確認できれば、証明機関は、いずれであっても問題は特にないと思われる。
 したがって、この事務処理を農業委員会に移転しても、特に支障はないと思われる。
 また、市町村内に存する農地に対して、独力で処理可能事務を市町村の自力で行っていくことは、地方自治の趣旨にも合致すると思われる。


基本となる処理の基準

1 現況証明の定義

 現況証明とは、登記簿の地目が「田」、「畑」、「牧場」(以下「田畑等」という。)である土地について、現況が農地又は採草放牧地(以下「農地等」という。)以外であることを証明する事実行為をいう。
 これは、願出者に対して下記「4の現況証明ができる基準」に明確に合致する場合に限り証明するもので、証明する機関が明確でないと判断する場合は、証明できない。

2 現況証明願の願出ができる者

 願出地の登記簿の土地所有者とする。(利用者は不可。)
☆登記簿の土地所有者が死亡している場合は、その相続人とする。
☆共有の場合、共有者(共同相続人)のうち一部の者がらの願出も可とする。
☆上記の土地所有者等が代理人に願出手続を委任する場合、その旨の委任状の添付が必要とされる。

3 現況証明の対象となる土地

 願出地の登記簿の地目が、田畑等である土地。
 一筆の土地の一部分については、証明できる範囲を分筆した後の土地とする。

4 現況証明ができる基準

 @ 願出地の現況が、農地以外であること。

 A 下記のいずれかに該当すること。
   ア 願出前20年間以上、農地等以外であること。
   イ 災害その他の人為的でない理由(河川敷の移動など自然改廃)により農地等以外の土地になったことが明らかで、農地等に復元することが著しく困難であること。
    ★「20年間」は、民法162条の趣旨を踏まえ設定している。

 B 下記のいずれかの証明書類があること。
   ア「願出前20年間以上、農地等以外であること。」を理由とする場合、
     公的機関の発行する証明書等の証明となるものがあること。
   イ「災害その他の人為的でないこと」を理由とする場合、その旨を明らかにする書類

 C 農業振興地域整備計画において農用地区域とされている土地については、農用地区域から除外等がされていること。

 D 農地法第83条の2の規定による処分の対象となった土地については、処分を受けた者による願出でないこと。(違反転用にたいする処分)



農業振興地域制度

目的
  農業を振興すべき地域の指定と当該地域の農業的整備のための施策の計画的推進を図り、農業の健全な発展と国土資源の合理的利用に寄与する。

農業振興地域
  都道府県が農業振興を図るべき地域として指定した地域
農用地区域
  市町村が農業上の利用を図るべき土地として設定した区域(転用原則禁止
 設定要件  
   ア 集団的農用地(20ha以上)
   イ 農業生産基盤整備事業の対象地
   ウ 農道用排水路等の土地改良施設用地
   エ 農業用施設用地(2ha以上又はア、イに隣接するもの)
   オ その他農業振興を図るために必要な土地
  
 除外要件
☆ 土地改良法に規定する非農用地区域の土地、優良田園住宅に供される土地、農工法等の地域整備法の計画に供される土地、公益性が特に高いと認められる事業に供する土地等は、農用地区域の除外が可能
☆上記以外で除外の必要が生じた場合は、次の要件を全て満たす場合に限り除外が可能
 ア (法第13条第2項第1号)
 当該土地を除外により農用地等以外の用途に供することの必要性かつ適当性があり他の土地では代えることが困難なこと
 イ (法第13条第2項第2号
 当該除外により農用地区域内の農用地の集団化、農作業のの効率化及び土地の農業上の効率的かつ総合的な利用に支障がないこと
 ウ (法第13条第2項第3号
 当該除外により農用地区域内の法第3条第3号の施設の機能に支障がないこと
 エ (法第13条第2項第4号)
 土地基盤整備事業対象地を除外する場合は、政令で定める基準に適合していること
 政令で定める基準とは、国の行う事業又は国の直接若しくは間接の補助事業で、かつ 農業用用排水施設の新設・変更、区画整理農用地造成、埋立、干拓、又は客土・暗渠排水等の事業(防災事業を除く)の工事が完了した年度の翌年度から起算して8年を経過した土地であること(工事が完了した年度とは工事完了公告があった日の属する年 度 であること)

必要性とは
 除外理由である事業又は住居等の目的からみて最小限必要な除外規模であるjこと及び除外後直ちに農用地等以外に利用する緊急性があること
適当性とは
 除外理由である事業又は住居等の目的の実現にあたっては必要な他法令の許可の見込みがあること
 都市的土地利用の進展など周辺の土地利用の状況からみて除外がやむをえないこと及び除外による農業振興地域整備計画の達成への支障が軽微なこと
他の土地で代えることが困難なこととは
 周辺の休閑地の状況及び除外後整備する施設の規模、性格、機能等から農用地区域外に適地がなくやむを得ず農用地区域内に立地するため除外をするものであること
第2号の要件は
 除外する土地が可能な限り農用地区域の周辺部であること
 除外後の農用地区域内の農用地が農作業及び土地基盤整備の効率性から必要な地形的連続性を有すること並びに非農業的土地利用との混在による農業的土地利用への支障がないこと
第3号の要件は
 農用地及び混牧林地の利用保全上必要な農道、農業用用排水施設、防風林等の施設の維持管理に支障がなく除外前と同様の機能が確保されること