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人面文壺形土器じんめんもんつぼがたどき 附 線刻土器片

人面文壺形土器1

人面文壺形土器

人面文壺形土器2

顔の各部解説

人面文壺形土器3

線刻土器片1

人面文壺形土器4

線刻土器片2

分類
国指定(考第015号)
指定年月日
平成28年8月17日
種別
考古資料
所有者
安城市
時代
弥生時代後期
形状
高さ 26.5cm
口径 14.8cm
底径 6.5cm
胴径(最大径) 25.9cm
員数
人面文壺形土器  1箇
線刻土器片  20点

 本資料は、線刻で人面を描いた弥生時代の壺形土器である。人面は、壺の胴部に細く鋭利な線で大きく描かれ、眼・鼻・口の周囲に幾重もの細線を充填じゅうてんし、また耳には耳飾りと思われる装飾表現もある。細かな破片が接合されて、顔面のほぼ全体が復元された。
 このような土器は、「人面文土器」と呼ばれる。「人面文」とは、瞳のないレンズ形の眼、眼の上下と目尻に施された弧線、あご部分に描かれた横倒しの「日」または「E」「F」字状の文様などが特徴である。弥生時代後期に九州・瀬戸内地方で成立し、弥生時代終末期から古墳時代初頭にかけて東海地方で多く見られ、古墳時代前期には東日本に伝わっていった。現在、20数点が確認されている。

 「人面文土器」は、弥生時代の祭祀さいしにおいて、瞳のない眼によって悪霊をにらみつけて退散させる辟邪へきじゃ(=魔除け)の思想などを表した特別な土器と考えられているが、その全形をうかがい知ることができる例はまれである。また、表現の精緻せいちさにおいて群を抜く優品であり、人面文部分の遺存状態も良く、弥生時代の風俗を物語る貴重な資料である。

 また、本資料は、弥生時代の人面文研究のきっかけとなったものであり、その学史的・学術的価値も極めて高い。
 人面文壺形土器が出土した亀塚遺跡は、鹿乗川かのりがわ流域の沖積地と碧海へきかい台地上に南北約4kmにわたって展開する鹿乗川流域遺跡群のほぼ中央に位置している。この地域には、国指定史跡となっている二子古墳、姫小川古墳をはじめ弥生時代後期から古墳時代前期にかけての重要な集落遺跡、古墳が密集しており、三河のみならず東海地方を代表する拠点的な遺跡群の一つとされている。

 なお、亀塚遺跡からは、他にもヘラ状工具で文様等を描いた線刻土器片が多数出土しており、人面文壺形土器との関連性を考える資料としてつけたりとされた。

(写真撮影:小川忠博)