生まれてきたことを恨む心。ルサンチマン。ニーチェは19世紀の終わり頃、人として生まれてきたことを喜べず、そのことを恨むような心を抱くものは、こう叫び出すだろうと言った。「世界なんかこわれてしまえ!」と。百年ほどまえに哲学の天才が指摘した問題が、今を生きる一般の多くの人々の心を覆っているのではないか。
オウムに限らず、終末観を強く打ち出す宗教に惹かれるひとびと。この世界が壊れてしまえば、生きることの苦しさから解放される。 そこに終末を望む現代人のうめきのようなものがあるのでは? 17歳の高校生が見ず知らずのひとを刺し殺した。新潟のその事件では、朝日新聞によると、こんな気持ちを抱いていたという。生きることに絶望していたが、自殺できなかったので、人を殺すことで、自分の生活を破壊したいと思ったという。殺してみたかったと言うが、そのうらにニーチェの言うルサンチマンがある。
なにか遠くの、非現実的に思える事件が、実は現代を重く覆う「気分」を表現している。重い課題をあらわにしている。高校生がこのような事件を起こすと、すぐにとってつけたように文部省がいのちの尊さを教えねばとコメントを出す。しかしその問題は、そういっている大人が克服しなければならない難問なのだ。人として生まれたことを尊いと知って、それに応えるような生き方が出来るのか。人生を浪費しているよな生き方をしてはいないか。
そいうう問いを、まず自ら持つこと。若いもんに教えてやらなきゃじゃなにも始まらない。
|