レピータって何だろう?

 JARLでは,全国各地に28MHz帯,430MHz帯,1200MHz帯,2400MHz帯,5600MHz帯のレピータを設置しています。
 レピータはV/U/SHF帯のハンディートランシーバーなどの小さなパワーのトランシーバーなどでも,広範囲に交信が楽しめるシステムです。
 レピータはボランティアの管理団体の協力で,電波の飛びのよい山や,ビルの屋上などに設置され,ハンディーやモービル局の電波を確実にキャッチし,広いエリアにいる交信相手局に中継してくれます。

 JARLが開設しているレピータの周波数のリストはJARL Webにも紹介していますが,このリストに表示された周波数をダウンリンク周波数と呼び,レピータが利用者に対して送信してくる周波数です。利用者はこの周波数を受信すればレピータが中継している信号をモニターすることができるのです。
 自分が中継してもらいたい音声を送信する周波数のことをアップリンク周波数といいます。レピータを使用した交信は,このように送信,受信で異なった周波数を使っておこなうのです。
 ダウンリンク周波数とアップリンク周波数の関係は,次の表のとおりで,たとえば430MHz帯の場合,ダウンリンク周波数−5MHzの周波数となります。

周波数帯 アップリンク
(送信)周波数
ダウンリンク
(受信)周波数
周波数の差
29MHz帯 29.51〜29.59MHz 29.61〜29.70MHz 100kHz
430MHz帯 434.00〜435.00MHz 439.00〜440.00MHz 5MHz
1200MHz帯 1270.00〜1273.00MHz 1290.00〜1293.00MHz 20MHz
2400MHz帯 2405.00〜2407.00MHz 2425.00MHz〜2427.00MHz 20MHz
5600MHz帯
(FMレピータ)
5725.00〜5730.00MHz 5765.00〜5770.00MHz 40MHz
10GHz帯

 また,レピータを働かせるためには,送信する音声に88.5Hzのトーン信号をミックスしてあげる必要があります。このトーン信号がレピータの送信スイッチになるのです。
 この仕組みは「レピータ局の仕組み」のページに詳しく紹介しています。

 「送受信で周波数を切り替えたり,トーンをミックスするんだってぇ?なにそれ?そんなの面倒くさいよぉ…」と思う方もいらっしゃるかも知れませんが,レピータ運用が盛んな430MHz帯や1200MHz帯の,現在市販のハンディー機やモービル機などは,周波数をレピータのダウンリンク周波数に設定すると,自動的にレピータを使用する設定に切り替えてくれるモデルがほとんどですから,通常,トランシーバーの設定は気にすることなく,レピータを利用して交信を楽しむことができます。


レピータの仕組み

 439.88MHzのレピータをアクセスした場合の,レピータの働きは下のとおりです。下図の赤い点線内が,レピータ装置全体のシステムです。レピータはアップリンク周波数の受信機とダウンリンク周波数の送信機を組み合わせた構成になっています。
 送受信のアンテナは共用される場合もあります。

 まず,受信機でA局がアップリンク周波数で送信した信号を受信。音声信号は,送信機の音声入力に送り込まれますが,一方でCTCSSデコーダーにも送り込まれます。

 「CTCSSデコーダー」はA局が送信してきたアップリンク信号に88.5Hzのトーン信号が含まれているか否かの検出回路で,もし88.5Hzの信号が含まれている場合,起動制御部に送信機をONにする指令を出して,アップリンク受信機が受信した音声をダウンリンク周波数に中継送信します。B局はダウンリンクの周波数を受信することで,A局の送信した音声を聞くことができるのです。
 もちろん,B局がA局を呼び出す場合も全く同様ですね。

 またレピータシステムには連続送信を防止するための,タイマー回路が設けられ,一定の時間送信状態が続くと,音声やモールス符号によるIDを発射して,送信を一時停止するようになっています。


レピータの利用方法


 レピータの紹介ページや,レピータの仕組みのページもあるように,レピータは送受信用の周波数に,異なる周波数を使用し,レピータ装置の送信機のスイッチをON/OFFするために,88.5Hzのトーンを使用しています。

★430MHz,1200MHzのレピータは簡単に利用できる!

 古い無線機でレピータ運用をおこなう場合,29MHzや2400MHz以上のレピータなどを使用する場合などには,送受信周波数差(オフセット周波数)の設定や88.5Hzのトーンエンコーダーの設定をあらかじめおこなう必要がありますが,レピータ運用が盛んな430MHz帯,1200MHz帯の場合,最近発売されている430MHz帯,1200MHz帯用のFMトランシーバーには,トランシーバーの受信周波数をレピータのダウンリンク周波数に設定すると,自動的にオフセット周波数とトーンの設定をしてくれる機能が装備されていますので簡単にレピータを活用することができます。

■各社のレピータの自動設定機能の名称■

●ARS(バーテックス・スタンダード,Automatic Repeater Shiftの略称です。
●オート・レピータ機能(アイコム)
●オートマチック・レピータ・オフセット(ケンウッド)

●レピータ機能(アルインコ)

 それぞれ名称は異なりますが,内容は共通で「受信周波数をレピータのダウンリンク周波数に合わせるとオフセット周波数の設定と88.5Hzのトーン信号が自動的に設定されレピータへのアクセスが可能となる機能」です。各社モデルとも,標準設定でこの機能がONになっています。通常はONのまま使うことをおすすめします。機能設定を解除(OFFに)した場合,レピータ使用時に設定操作が必要になりますので注意が必要です。設定変更などの詳細は,お使いの機種のマニュアルを参照してください。



★レピータの利用の交信は簡潔に…手短に…

 レピータはハンディートランシーバーなどの,小さなパワーでも広範囲に交信を楽しむための便利なシステムです。レピータのカバーエリア内には,多くの利用者がいます。レピータには長時間の連続送信を防止するため,タイムアウトのタイマーが設定してありますが,レピータを使った交信はできるだけ多くの利用者が効率よく運用できるように,簡潔明瞭に手短な交信を心がけましょう。
 また,無意味なカーチャンク(レピータの起動を確認する無変調の送信)も周りの利用者の迷惑になる場合がありますので,できるだけしないようにしてください。



レピータ用語集


【アクセス : Access】
 ユーザー局が電波を送出してレピータ局を動作させること。

【アップ・リンク : up-link】
 レピータ局に対して送信する周波数の電波。(上り回線)

【オフセット周波数 : off-set】
 送受信に使用する周波数の差の周波数。日本のレピータでは430MHz帯は5MHz、1200MHz帯では20MHzとなっている。(シフト幅とも呼ばれます)

【オート・レピータ機能】
 機能はARSと同様で、レピータ周波数帯に合わせるとオフセット周波数とトーン信号が自動的にセットされます。アイコム株式会社の無線機で使用される用語です。

【オートマチック・レピータ・オフセット】
 「ARS」、「オートレピータ機能」と同様の機能です。ケンウッド株式会社の無線機で使用される用語です。

【カーチャンク : Kerchunk】
 送信機を数秒間動作させてレピータにアクセスが可能かチェックすること。頻繁に行うことは避けましょう。

【シンプレックス・モード : Simplex】
 単方向通信のことで、同一の周波数を交互に送信・受信する通信方式です。一般的なアマチュア無線の通信方式が該当します。

【タイムアウト・タイマー : Time-out Timer】
 レピータ局は多数のユーザー局が共用利用するものです。できるだけ円滑な交信を心がけて頂いておりますが、交信に熱がは入り長々と交信を続けてしまうことがあります。このようなことを避けるためレピータの利用が一定の時間を超えるとレピータが自動的に送信を停止して利用者に注意を喚起するタイマーです。タイムアウト・タイマーのお世話にならないよう円滑な通信を心がけてください。特に利用者の多い430MHz帯や1200MHz帯レピータでは注意が必要です。

【ダウン・リンク : down-link】
 レピータ局で中継された電波・(下り回線)

【デュープレックス・モード : Duplex】
 送信・受信のために専用の二つの周波数を使用する通信方式でレピータによる通信が該当します。

【デュープレクサー : Duplexer】
 レピータ装置はユーザー局からの信号を受信しながら送信機も一緒に動作させます。レピータの送受信周波数は離れていますが受信機に干渉を与えては中継することはできません。また、送受信のアンテナも共用としたいものです。アップリンクの周波数に同調が取れたバンドパス・フィルターとダウンリンクに同調が取れた高性能なフィルターがデュープレクサーです。

【トーン : tone】
 レピータを起動するための信号です。トーンスケルチ(CTCSS)に使用されるトーン信号を検出してレピータの送信部をオンにして中継を行います。CTCSSのトーン信号は40波前後の周波数がありますが、日本のレピータでは主に88.5Hzが起動信号として使用されています。起動用トーン信号は144MHz帯の第3高調波による誤動作の防止に役立っています。

【ハングアップ・タイマー : Hang up timer】
 レピータを使用する局はハンディー機やモービルなど移動運用が多いため、周囲の環境変化によるフェージングが発生します。レピータはCORの信号や起動用トーンが検出できなくなると送信機をオフします。フェージングのある信号ではオンとオフを繰り返してしまいますが、一定の時間はレピータの送信機の動作を保ちフェージングの影響を軽減します。日本のレピータではハングアップタイマーの設定時間は1秒から5秒となっています。

【レピータ機能】
 「ARS」、「オートレピータ機能」と同様の機能です。アルインコ株式会社の無線機で使用される用語です。

【ARS : Automatic Repeater Shift】
 受信周波数をレピータのダウンリンク周波数に合わせるとオフセット周波数の設定と88.5Hzのトーン信号が自動的に設定されレピータへのアクセスが可能となる機能。バーテックススタンダード社の無線機で使用される用語です。

【COR : Carrier Operated Relay】
 レピータの受信機に適正なレベルの信号が入力された場合、レピータの送信機をオンにする制御回路をさします。日本のレピータでは、誤動作を防止するためCORの信号と起動用トーンの検出信号のANDをとって送信機をオンにしています。

【CTCSS : Continuous Tone Coded Squelch System】
 音声通信に支障のない連続したトーン信号を送信電波に付加して希望の相手方の通信のみを聴取するスケルチシステムです。一つの周波数を多数の事業者で共用する業務無線で多く使用されています。最近のアマチュア無線用トランシーバには標準的装備としてこの機能を持つものが多くなっています。

【ID : Identification】
 レピータ局のコールサインで、モールス符号や音声合成により音声でコールサインが送出されるものがあります。レピータによっては利用を開始すると毎回最初に送信するものとタイマーによって一定の時間間隔で送出されるタイプがあります。