≪ワンマン電車≫



豊橋市内(2005年3月19日)


先日上京の折、豊橋で乗り継ぎ時間が小一時間ほどあったので、
束の間町に出て、名物の路面電車に乗ってみた。

この3月は故郷・茨城の日立電鉄や、岐阜の路面電車などが相次ぎ営業廃止した。
そんなことをよそに今も元気に営業運転を続けている一つが豊橋の路面電車(豊橋鉄道)だ。

豊橋駅前停留所から乗り込む。
走り出すと、「グォ〜ン」というモーター音がして、
子供時代、生活の中にあった水浜電車と同じ響きが耳に迫ってきた。
窓外に目をやると、すぐ横を並走する自転車や車の、人の表情まで見て取れる。
たった3駅だけの短い往復だったが、
昔の「チンチン電車」を彷彿と思い起こさせてくれる懐かしいひと時だった。

ところでこの電車たち、フロントに「ワンマン」の看板が掛っている。
ほほぅ、と思って信号待ちになったとき、若い運ちゃんに聞いてみた。
「ワンマンでない電車も走ってるの?」
一瞬、間をおいて返事がきた。
「いや〜、全部ワンマンですよ」(笑)

この電車は運ちゃんがガイドもこなし、「車掌」など勿論いない。
ひょっとしたらこの若い運ちゃん自身、車掌のいた時代を知らないのでは?
そこを聞こうかと思ったときに、信号が青に変わったのでやめた。
もう、うしろの車掌が前の運転手に"発車オーライ"を告げるための「チンチン」はない。

ワンマン化後久しい今、なんのための「ワンマン」表示なのか分らないが、
路面電車は、なにか「ちょっと昔」を引きずりながら今に生きている。
そんなところにほのぼのとした暖かさを感じながら、
私はその健在を愛でている。
(2005.4.1)

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余談だが、この3月で岐阜市内の路面電車を廃止した名古屋鉄道には、
郊外を走る電車で今も「チンチン」が生きている。
いや、郊外を走る路面電車ではなく、
名鉄の本・支線を走る2両、4両編成の(ワンマンではない)通常の普通列車である。
ドアが閉まった直後「チンチン」の音がし、徐に走り出す。
(2005.4.13)


2005.3-