砂漠に果つる満月の滴

文:宇宙猫 挿し絵:ピット

「ここか…」
私はもう一度手紙の住所を読み返してみた。
間違いない。
他を圧倒するような豪勢な屋敷。
大きな門構えに威圧される。
その日暮しの貧乏画家の私とは縁遠い世界だ。
気遅れて躊躇したまま空歩を繰り返す。
『お待ちしていました……』
「ヒッ!」
地獄の底から響いてくるようなしゃがれた声が背後から不意に襲った。
屋敷から現れたせむしの男は私が来ることを先刻承知していたように招き入れた。
パラつく小雨を払いながら私はその男に導かれて屋敷の中へと案内されていった。

旅の始まりだった。

『さあ…どうぞ…』
男は屋敷の扉を開けて屋敷の中へと進む。
身長を遥に超えて3mはあろうかという大きな扉。
ギィ………バタン…
誰も手を触れていないのに扉は閉じられた。
一瞬、もう外界には出られないような気がした。
ほんの2,3歩屋敷に足を踏み入れただけで、もう遠くまで来たような隔絶感。
薄暗い長い廊下をせむしの男に導かれて進む。
その突き当たりの部屋からわずかに光が漏れていた。
『失礼します…お連れしました…』
男の合図と共に両開きのドアが開け放たれ、眩しい光が辺りを包んだ。
『ようこそ。お待ちしていました。』
光の向こうから私を歓迎する声がした。
暗闇に慣れていたせいか、急に明るい世界へ入ると視線が定まらない。
ようやく目が慣れて私の眼前に一人の美しい女性が現れた。
夜の闇にただひとつだけすべてを照らす満月のように輝きを放っている。
「あなたは…」
メディアで見たことがある。
テレビを見ない私でも知っている。
『奥○恵です。私があなたをここへ招待しました。』
周囲の者をすべて虜にしてしまいそうなほど大きく美しく濡れた瞳の持ち主。
イメージしていたよりも小柄であるものの、間違いなくその女性は女優・奥○恵だった。
意外な出会いに驚きながら私は薄汚れた帽子を脱いだ。
『さっ、こちらへどうぞ。ようこそお越し下さいました。』
その大きな部屋には、これまた大きなテーブルが中央にしつらえてあった。
席へと促されて私は恐る恐る腰掛けた。
あまりの豪華さに落ち着かない。
「お招きいただいてありがとうございます。なぜ私なんかを…」
受け取った手紙に書かれていた無いようを問うた。
そこに書かれてあった言葉、それは『絵を描いてほしい』との申し出であった。
『そう、あなたに私の絵を描いてほしいと思ったの。』
彼女は手紙の内容と同じ言葉を告げた。
「私にあなたの絵を?」
『そう。あなたに私の本当の姿を描いてほしいの。』
彼女は力を込めて申し出た。
拒絶を一切受け付けない強い意思を秘めた瞳が私を射抜くように突き刺す。
画家である自分にとって絵を描くことは本職であるのだが、
何故かこの時ばかりはとてつもなく困難で引き受けてはならない一大事のように思えた。
「いや、絵を描かせてもらえるのは大変嬉しいです。でも何故わたしなのかと。」
元より断わるつもりはない。
手紙と共に送られた前金は、最高級の画材を揃えても充分に余るほどの額だった。
しかし今までの私と奥○恵の接点はどこにもない。
ただこの意外な出会いの理由が欲しかった。
『何故って…私があなたの絵を気に入ったから……じゃダメかしら?』
少し首を傾げてねだるように瞳を潤ませる。
演技かもしれないが、その表情で迫られてはそれ以上の追及をする気持ちは消えてしまった。
「わかりました。一生懸命頑張りますのでよろしくおねがいします。」
私はこの雰囲気に流されようと頭を下げた。
『よかった。じゃっ。』
奥○恵は話を打ち切って傍らの男に合図した。
男は待っていたかのようにワゴンから料理を取り出した。
『私達の出会いに乾杯しましょ!』
テーブルにゴージャスな料理が次々と給仕され、私のグラスにも豊潤な香りの赤ワインが注がれた。
普段の食うや食わずやの生活からは想像もつかない豪華な食事に圧倒される。
『さっ、召し上がって。』
グラスを傾けて誘う奥○恵。
私は今までに見たこともない料理の数々を次々と平らげていく。
「うっ…うまいっ!」
『そう…よかった…』
満足そうに微笑む奥○恵。
飲みつけないワインが体を駆け巡り、次第に前後不覚になっていくようだった。

「なんだろ…酔ったみたいだ…酒は強いほうなのに…」
貧乏暮しで安酒ばかり飲んでいたせいか、この時の酒には思いの外酔ってしまった。
『まあ、大丈夫?じゃあ、部屋を用意させるからそこへ。』
私は自分の力ではまともに歩けないほどの足取りのまま屋敷の別室へ案内された。
『ここをお使い下さい。』
執事の男に案内されて私はそのままベッドへ倒れ込んだ。
クイーンサイズの大きなベッドで段々と意識が薄れながらも考えた。
これはいい話なんだ。
不遇だった私の画家業に有望なスポンサーが現れたんだ。
古今の有名画家はなんらかの形で必ず支援者がいた。
絵の善し悪しなんて一般大衆にはわからない。
有名かそうでないかがその基準となる。
この機会に名を売ればきっと道が開ける。
相手はあの有名な女優だし、それを描いたとなればもっといい話が次々舞い込んで来るに違いない。
私はようやく訪れたチャンスに喜遊した。
喜びの興奮も普段飲みつけない高級酒によって沈静されていく。
眠い…体が重い…
そのままベッドに沈み込むように眠りに落ちていった。

コンコン…
「誰だ…」
『おはようございます…』
「ヒッ!」
ベッドを覗き込むように例のせむしの男が立っていた。
『朝でございますので、起こして参るようにと。』
「ああ…そう…今行くよ…」
いつのまにか眠っていたようだ。
初めて訪れた所でいきなり泊り込む不覚。
まだガンガンとする頭を振りつつ私は部屋を出た。
『おはようございます。昨夜はよく眠れて?』
ダイニングルームで奥○恵が迎えた。
「あ…すいません。図々しく泊まらせてもらって。」
頭を掻いて恐縮する。
『いいのよ。あなたの絵が完成するまでいつまで居てもいいのよ。』
クスッと笑って場を和ませる奥○恵。
その笑顔は朝陽に照らされて一層爽やかに輝いた。
例によって大きなテーブルに溢れんばかりに用意された朝食を二日酔いも忘れて平らげた。
『さっそくだけど、準備が出来たら離れに来てくれない?』
最後のコーヒーを飲みながら奥○恵は私に告げた。
「そこで描くんですね?」
私の問に彼女は頷いた。
いよいよの時に私のモティベーションは高まった。

広々とした庭を横切って、私は指定された離れへ赴いた。
洋館の本邸と違ってこちらは和風の建物だった。
上がり込んだ置くの和室で彼女は待っていた。
『始めて下さいな。』
十畳ほどの広さの間にたたずむ奥○恵。
少し崩した正座でこちらを見ている。
白い清楚な洋服をやや着崩してこちらを見つめる。
何も特別な様子ではないのに美しい女性はそれだけで充分に絵になる素材である。
背後は開け放たれていて、見事な庭が広がっている。
私は用意された画材を手にしてデッサンを始めた。
彼女は姿勢をほとんど変えない。
プロの女優として見られる事には慣れているせいだろうか。
モデルとしてとても魅力的な素材だ。
私は彼女の息づかいまで感じようとジッと見つめる。
大きな瞳と目が合うと吸い込まれてしまいそうなほど美しい。
ほんの数秒間に過ぎないそのことが私の意欲を駆り立てる。
筆は驚くほどの速さで進む。
このままずっと描き続けていたいほど楽しい。
今までに多くの絵を描いてきたが、これほど夢中になれたことはない。
『どうかしら?』
彼女の声にハッと我に返った。
私の傍らまでやって来てキャンバスを覗き込む。
「はい、だいたいの構図は出来てきました。」
私は自信を持って彼女に見せた。
『……………。』
彼女は明らかに落胆の表情を見せた。
「何か?気に入りませんか?」
自信があっただけに彼女の反応は意外だった。
『あなたは私の何を見ていたの?』
「何…ってあなたの見たままをここに…」
ガタン
「ハッ…なにを…」
彼女はイーゼルからキャンバスを叩き落とした。
『私は本当の私の姿を描いてほしいと頼んだわ。』
怒気を含んだ形相で私を見下ろす。
「本当のって…じゃあヌードにでもなれば?」
私は自分の作品をないがしろにされて腹立ち紛れに言い放った。
彼女は無言で私から離れると先程の位置まで戻った。
そして無言のまま身にまとっていた白い衣服をスルリと脱ぎ捨てた。
「えっ?!」
驚く間もなくそのまま身に付けていたすべてを取り去ってこちらへ向き直った。
背後からの陽光を受けて輝く奥○恵の裸身。
小柄な背丈に似合わぬ豊かな胸の膨らみ。
なだらかな曲線で構成された真っ白な肢体に似つかわしくない黒い峡谷。
ギリシャ彫刻の様に計算されつくした美しい肉体が目の前にある。



『さっ、描いて。』
先程と同じように少し崩した座り方でポーズを取る。
まさか有名女優でヌードも未発表な彼女がこれほど大胆な行動を取るとは思ってもみなかった。
世間の好奇な想像がいくら逞しくてもこれほど彼女のヌードが美しいとは想像つかないだろう。
『どうしたの?早く。』
呆然としている私を彼女の声が現実に引き戻した。
そう、これは現実。
私も彼女の大ファンという訳ではなかったが、その美しさには崇意を持っていた。
その裸体が目の前にあるというのは興奮せずにいられない。
通常画家にとって目の前にあるものはすべて描く対象であって欲情を感じるものではない。
今までにもモデルのヌードは見飽きるほど見てきた。
しかし予想外の場面で、しかも清純なイメージの有名女優のヌードといきなり向き合うと、
さすがに自分の邪な部分に気付かざるを得ない。
私はプロとしてそのことを悟られまいとキャンバスに打ち込んだ。
先程にも増して筆に力がこもる。
静かな空間に筆が走る微かな音だけが伝わる。
彼女は大胆にもどこも隠そうとはしない。
ただじっとこちらを見つめているだけ。
見られる事に慣れていると恥じらいを感じる事もないのか。
時折姿勢を少し変える。
フルンと乳房が揺れる。
たったそれだけのことが興奮を呼び覚ます。
平面的なイメージとしての彼女ではなく、現実にそこにいることを意識づけられる瞬間だ。
『ねえ…』
「はっ…はい!」
不意に呼びかけられて緊張して答える。
『あなたは本当の私を見ている?』
観念的な質問に答に窮す。
『あなたも私と本気で向き合ってよ…ね?』
「どういうことです?真剣に描くことに打ち込んでるけど…」
彼女の真意が見えない。
『あなたも脱いで…』
「えっ!そんな…冗談でしょ…」
奥○恵は微笑を浮かべてただ見つめている。
射抜くような大きな瞳でこちらを見つめたまま再び言い放った。
『脱いで』
抗う力を失って私は命じられるまま衣服を脱ぎ捨てた。
『全部…』
言葉に誘導されるまま最後の一枚まで脱ぎ捨てて彼女と同じ姿で向き合った。
画家としての理性とは裏腹に野性に忠実な下半身を晒した。
『続けて…』
そのことを確認したのかしていないのか、彼女は命じた。
私は自分の姿は忘れようと絵に打ち込んだ。
彼女の唇の端に不敵な笑みが浮かんでいた。
『ふぁ〜あ…』
今までほとんどポーズを変えなかった彼女が突然緩んだ。
足を組み替えるようでへたり込むように向き直った。
「……!」
広げられた足の間から秘部が露出している。
先程までは黒い茂に覆われていた部分が露になっている。
おもわずゴクンと唾を飲み込む。
赤々とこちらに向けて開かれた部分に視線が行かない訳が無い。
通常のモデルではその部分だけはうまく隠すものである。
大胆というよりも赤裸々すぎて恐怖すら感じる。
世間の勝手な噂だと奥○恵は恋多き女だと伝え聞くこともある。
あの秘所にどれだけの男が魅了されたのか……。
不埒な考えがいつのまにか下半身に伝わって欲望が具現化していこうとする。
焦って意識すまいとすると余計に固くなる。
もう下を向いていないことは正面にいる彼女にはすっかり伝わっているはず。
画家として情けない姿であることをもう恥じる気持ちも消えていた。
私は理性だけは絵に向かおうと一心に筆を進める。



クチュ…クチュ…
湿った音が筆使いの音に混じって聞こえてくる
類似の音で想像するのはこの場に似つかわしくない行為のものだ
奥○恵を見る
彼女の右手が微動している
その指先が触れているものは…
私が気付いたことでさらに大胆に動く
『…ハァ…ハァ…ハァ……』
彼女の大きな瞳と視線が合う
うっすらと笑みを浮かべている
少し歪んだ唇から熱い吐息が漏れ出している
先程よりも大胆に広げられた足と足の付け根に添えられている彼女の手
白い指先が茂みかき分かて赤い身を弄んでいる
クチュ…クチュ…クチュクチュ…
そこから発せられる音は次第に大きくなってゆく
私の驚きを楽しむかのように左手は自らの乳房を弄ぶ
『…ハッ…ハァッ…ハッ…ハッ…ア…アァ……』
ますます激しくなる息づかいが耳を刺激する
私は筆を動かしながらも彼女の動きに釘付けになる
凝視する私に気付いてかさらに身をよじって悶える奥○恵
『…ハァッ…アァッ…アッアッアッ…アァァッ……』
次第に声が高まり動きがリズミカルになってゆく
ピチャ…ピチャッ…クチュッ…ピチャッピチャッ……
湿った音がより水分比率を増して届く
畳に飛び散る分泌水
『…ウッ…アウッ…アァッ…アァッ…アッアッアッ……』
見悶えて高なりへと向かう奥○恵
上体を反らし、大きく広げられた陰核から出し入れされる恵の指
その姿をキャンバスに捉えようと筆が走る
『…アッ…アアァッ…アッ…アッ…アッ…アッ…イ…イッ…イック…ゥ…ゥッ…ゥ………』

掠れた声を上げて体を震わせて奥○恵は絶頂へとひとりたどり着いた。
ヒクついた動きが収まって張り詰めていた空気も少し緩んだ。
『ハァ…ハァ…ハァ…フ…フフ…ウフフ……』
ゆっくりと上体を起こしてこちらを見上げる。
余裕のある薄笑いを浮かべて。
私は目の前で何が起こったのかを一部始終見ていながらまだ信じられないでいた。
美人女優として誰もが認める奥○恵が見せた自慰行為。
『…描けてる?…ハ…ァ…』
息使いを乱しながら尋ねる彼女。
私はハッと我に返った。
手元のスケッチを見せると奥菜恵はさらに満足そうま笑みをたたえた。
私の手によって描かれた海老反りの奥○恵。
『…そ…いいわね…それも私…』
私に褒める言葉をかける代わりに少し距離を縮めた。

『私ばかり満足してちゃダメよね…そ…あなたも…』
ビクッ
私の体に電流が流れた。
『…そ…こんなにしてちゃ…かわいそうよね…フフ…いいわよ…私が…』
両手で私の直立した野性を包み込んで淫らに笑う奥○恵
「め…めぐみさん…」
驚く私を他所に両手をゆっくりと動かす恵
『あんなもの見せられたらこんなになるのあたり前よね…』
ますます天を貫くかのようにそびえていく我が望み
唇から潤滑をよくするかのよように唾液をこぼしてこすりつけてゆく恵
動きはさらにスムースになり赤黒くそびえ立った私の野望の先端に恵は口づける
『チュ…』
「…あっ…』
与えられた刺激以上に興奮の声が漏れてしまう
『ウフ…いいわよ声を出しても…あたしがココを慰めてあげる…』
クチュ…チュ…チュッ…チュパッ…チュパッ…チュパッ…
奥菜恵の口唇に張れ上がっている先端が飲み込まれ、やがて奥へ奥へと導かれてゆく
「…はあ…あっ…め…めぐみさん…い…いい…」
美しい口唇に出入りする私の赤黒い肉棒
色白の恵と対照的なその肉はさらに膨張する
そのことがさらに恵の満足を呼ぶ
『気持ちいい?…描くことも忘れないで…』
大きな瞳でこちらを見つめて命じる



力が抜けてゆく下半身と理性で絵を描く上半身
奥まで飲み込んでは出し、先端を刺激してはまた奥へ
横にくわえて舌で浮き出る血管をなぞってみたり、根元まで這わせてみたり
根元からぶら下がる玉の間をなめまわしてみたり、竿を激しくシゴいてみたり
先端を舌で細かく掃除してみたり、首を唇をすぼめて吸い付いてみたり
技巧の数々が奥○恵から繰り出されてくる
乾いた部屋に飛び交う粘着しつな音
襲われる快感と戦いながら必死に筆でその姿を描き留める
『見せて…』
時折口を離して手でシゴきながら私にスケッチを見せるよう要求する
私が彼女に示すと満足そうに頷く
『いいわね…そろそろ我慢できなくなってきたでしょ?…いいわよ…我慢しなくても
…』
誘うようにさらに激しく口淫奉仕する奥○恵
今自分は美人女優にかしずかれている…
そう思っただけで興奮の度合が高まる
『…いいわよ…イキなさい…出してもいいわよ…あなたのザーメンぶちまけなさい…』
命じられなくとも我慢の限界に達している
「あ…ああ…恵さん…イ…イキそう…」
『出して…あたしの顔にカケて…あなたのザーメン…恵の顔にカケて…飲ませて…』
奥○恵が美しい顔を歪めてしゃぶりながら懇願する
「ああ…あ……」
限界に達した欲望が恵の口元に目がけて放たれる
『アアッ…アッ…ァッ…アフッ…ゴフッ…アッ…いっぱい出てる…』
口を開けて待ち構える恵に私は思いっきり精を放った
白く濃い液体が恵の口元を汚し、溢れ出るザーメンがその口の中へと注がれていく
大量の精液が口に入り切れず溢れ出す



『ゴフッ…すごい…いっぱい…フフ…嬉しい…全部ちょうだい…』
恵の手によってシゴかれて最後の一滴まで絞り出される
垂れ下がる液筋を恵の舌が丁寧に舐め取ってゆく
『チュ…チュパッ…最後まで出た…?…すごい…いっぱい…』
溢れそうな白い濃液をこぼすまいと気を付けて味わう奥菜恵
『こんなにいっぱいだなんて…溜まって…我慢してたのね…フ…ウフ…』
満足そうに口元に飛び散った液を集めて口に運ぶ
『見せてあげようか…ドロ〜リ…ほらこんなに…』
口から一旦液を手に取って誇示する恵
『うわ…すご〜い…ウフフ…全部飲んであげる…ズ…ズズ…ズズズ…』
手の溜められた驚くほどの量の精液をおいしそうに飲み干す奥○恵
砂漠の漂流民がようやくありつけた貴重な水のように
いとおしんで一滴残らず味わいながら飲み干していく
『…ゥ…ゴクッ…ゴクンッ…おいしいわあなたのザーメン…』
その姿までも私は懸命に描き留めた

なおも衰えぬ私の精力
それはそうだろう
これほどの美人にかしづかれて奉仕されたのだ。
ただ一度の射精で衰えようはずがない
「恵…さあ…」
私はなおも欲望の歩みを進めようと近付いた。
ピシャッ
『気安くしないでよっ!』
怒気を含んだ表情で奥菜恵は私を叩いた。
「痛っ!」
頬を張られた私はひるみながらもビクッと背筋が震えた。
『一度くらいで馴れ馴れしくしないで!』
恵の眼光が鋭い光を放っている。
『あなたの仕事は絵を描くことでしょ。』
先ほどの余韻など吹き飛ぶような急な態度の変容に私はたじろいだ。
『あなたはそこで私を見て、私の姿を描き続ければいいの。』
再度注文を確認するように恵は諭した。
その時、スッと襖が開いて男が音も立てずに入ってきた。
ハッとして見るとあのせむしの男のはずだった。
はずだったとは?
先刻までのせむしの男と容貌は同じである。
しかしあの姿はどこにいったのであろうか?
背中を丸めて萎縮していたようにも見えていたはずなのに、今は背筋を伸ばして堂々と対している。
デカい。
年齢はもう初老と言って差し支えないだろうに、見事に鍛え上げられた筋肉質の肉体である。
そのあまりのギャップに私は面喰らった。
『明智、いつものようにお願い。』
「かしこまりました。」
短く答えた明智と呼ばれた男は黒い革製の古びたボストンバッグから何やら取り出し始める。
私と恵が全裸であることにはまったく構おうとしない。
むしろそうであることお含めて何もかも承知したように落ち着き払った態度。
『見ていて。そして描いて、私の本当の姿を。』
男は手際良く奥○恵に何かを付け始める。
「……!?」
固く乾き切った荒い縄。
それが何を意味するものなのか私にはすぐにわかった。
「まさか…そんな…」
驚きを他所に男は恵の体を緊縛し始める。
手の自由を奪い、足を拘束し、奥○恵の体は次第に自由が失われていく。
『何をしているの!あなたがその目で見たありのままを描けばいいのよ。』
私はこの現実から逃れられないことを悟って一心に筆を走らせた。



真っ白に輝く奥○恵の肉体に縦横に食い込む螺旋の結び
『ああ…これよ…これが…』
動くほどに柔肌に食い込んでゆく
それはまるで一本一本が意思を持ったように恵の体を犯している
もがけばもがくほどはまり込む蟻地獄のように
深い苦しみは突き抜けた向こう側にある新しい快楽の波によって迎かえ入れられてゆく
『ああ…見える…熱い…あ…ああ…』
畳に黒い染みを作り始める恵
ピチャンッと音がするようにハッキリと溢れてくる喜びの泉
その心の動きを逃さないように太い黒棒をあてがう明智
『…おっ…おおぅっ…はやく…はやく…』
待ち切れな様子で貪欲に迎かえ入れる恵
体をしならせて満足を表わす
『見て…これがわたし…本当のわたし…』
心の底から響いてくるような叫び
正視に耐えないような痛みではない
求める者に与える者
結び付く快楽
美しい顔を歪めて悶える奥○恵
銀幕で、ポオトレイトで、見慣れたはずの女優の美しさ
満ちた月のようにすべてを手にしているかのような彼女が見せる砂漠のような乾きの表情
ここにあるものはそのような虚飾の美しさではない
『あぁ…あぁ……ぁぁあ…見て…もっとわたしを見て…目で…息で…わたしを犯して…』
抑えつけられていた物すべてを取り払ったメス本来の美しさ
奥○恵の解放された本性を描きだそうと、やおら筆は駆ける
目で、耳で、鼻で、奥菜恵のすべてを感じ取ろうとする
空気が震えるほどの緊張感
高まる興奮
しかし私にはそこに参加する資格はない
ただ傍観者として描き続けることでしか、ここに居合わせることしかできない
『あぁ…あぁ…もっとぉ…もっとふかくよぉ…おっ…おおうっ…あうっ…』
さらに高なる悲鳴とも似つかぬ金切り声
人々を魅了する大きな瞳は陶酔して空を見つめている
ギリギリと食い込む縄化粧
深く挿入されている異物
『あぁ…あぁ…あぁっ…おおぅっ…うぐっ…』
一際声が高くなって弛緩する
絶頂へと近くなると手綱を加減する明智の熟練した技
理性を飛ばして狂う奥○恵
美しい
ギリシャ彫刻のように均整が取れた肉体美
モナリザよりも魅力的で謎に満ちた微笑
誰もがイメージする清廉な女優 奥○恵
そのステレオタイプなベールを脱ぎ去ったとき、
一人の人間としての奥菜恵が初めて姿を現わす
描きたい 
この美しい姿をすべてこの手で描きたい
『も…もうダメ…ちょうだい…本物をちょうだい…』
懇願する奥○恵に明智は獣と見まがう程の巨根を突き立てた
『あ……う……が……ぁが……あぁ…これ…これが…ほしかったのぉ…』



男を迎かえ入れてますます悶え狂う奥○恵
『見て…もっと見て…見られてる…みんなが思うようなあたしでない本当のあたしを…』
深々と差し込まれる男をだらしなく女液を畳に滴らせながら包み込む
この機会を感じ取ったのか、今まで気配すらなかったところから男達が現れた
複数の男達は一様にギラついた目で奥○恵を見つめている
一心に しかし小刻みに何かを嬲っている
『みんな…見て…見られると余計に…あ…あぁ……』
掠れた歓喜の声で男達の登場を喜ぶ奥○恵
応えるように奥○恵の足を大きく広げて挿入部分を男達に見せつける明智
私はこの事態をもう異様とは思わない
何もかもが必然であるとしか思えない



「恵さん!」
「恵さん!」
男達は皆、彼女の名を呼んでいる
そして各々の効き手で自らの煽情の肉棒をシゴき立てている
摩擦の音が重なり合ってより大きく伝わる
乾いていた空気が湿り気を帯びて歪んでゆく
『さあ…坊や達…私のかわいい坊や達…あなた達の思いを頂戴…心からブチまけて…』
光悦の表情で奥○恵は男達を促す
張り詰めた緊張が頂点へと向かう
「め…めぐみさ〜ん…!」
駆け寄る男
「ハッ…ハッ…ハァ〜ッ!…イクッ!…」
ビュッ…ビュッ…ビュッ…ビュクッ…
空を舞う白い放物線
夥しく放たれた生命の源は奥○恵の美しく歪んだ顔を直撃
『あっ…あっ…あはぁ…っ…すごぉいぃ…いっぱい出たわねぇ…』
間髪入れず次の男が間合いを詰める
「どけっ!」
殺気立った罵倒と共に激しくシゴきたてて一撃
ビュクッ…ビュッ…
『あふぅん…また…濃いわぁ…すごぉい…』
満足気に顔にブチまけられた白い液体をなぞる奥菜恵



何が…何が…起きているんだ…
私は正気の先を行って傍観者であり続けようとする
驚きながらもその世界を受け入れようと筆を通して入り込んで行く
男の列は尽きない
「恵さんイクッ!恵さんキレイだ…その美しい顔にカケさせて…!」
「恵さん出るっ!すばらしいよ…あなたは素敵だ…!」
次々と男たちは奥○恵の顔を目がけて精液を吐きだしてゆく
その美しさを礼賛し平伏すように思いを放って逝く
『ああぁ…いいわぁ…あなたたちのザーメン…素敵よぉ…もっとぉ…もっとザーメン頂戴…』
度重なる顔射で奥菜恵の顔はベットリと白い液体がこびりついている
乾きかけてはまた新しい液が供給されて宴は果てない
デスマスクのように顔中に精液の層が厚く積み重なってもなお、美しさは変わらない
むしろ神々しささえ感じる
『まだ…まだよ…もっとカケて…ザーメンをカケて…あなた達の熱い思いを全て出しきって…』
これが本当の彼女の姿なのだ
自らの美しさに酔い、男達の行動で確認する
彼女の美しさに魅惑された者達の思いの果てを受け止めて感じるエクスタシー
ともすれば醜悪に見える縄化粧もザーメンパックも彼女の姿を美しく引き立てる術でしかない
醜さを超越して究極の美とさえ感じられる
この姿を私は自らの手で絵に封じ込めようとする
昔画集で見た伊藤春雨の背め絵とはまったく違う
責められているのではなく奥菜恵がその美しさで男を征服する瞬間
「白が…リアルな白がない!」
私は自らの精を絞りだし、キャンバスに塗りたくる
「これだ…リアルな白はこれだ…」
肉棒から溢れ出る精液を筆ですくいとっては塗り付ける
『ああ…気付いたのね…私の…私の本当の姿に…』
私の様子を察した奥○恵は明智と組みするのを解き私を迎かえ入れる
果てたはずなのにすぐに回復して私の欲望は奥○恵の迷宮へと潜り込む
『ああ…すごいわぁ…あなたの…あなたの思いが全身に伝わるわぁ…あっ…あぁっ…』
私との行為に刺激されてか周囲の男達もさらに熱くなる
嫉妬心も混じってか放たれる汁が一段と濃く飛ぶ
『すごい…わぁ…みんな…あたしがいけないのね…あたしの美しさがそうさせるのね…』



淫と狂気に満ちた奥○恵の叫びが高く響く
「もうすぐだ…もうすぐ完成だ…」
恵に男根を突き立てながら私は筆を走らせ続ける
しかし何かが足りない
彼女の最も美しい一点を表現するのに何かが足りない
『あっ…あっ…すごいわぁ…見える…イキそうなのが…』
私も恵に誘われて最後の絶頂へと登り詰めそうだ
「そうか…わかった…」
私は絵の具のパレットに添えられていたある物を取り寄せた
「これだ…これを使えば…」
私はその物、パレットナイフを左手首のあてがい、一気に滑らせる
シュパッ
鋭く切れ込んだナイフは私の左手首を勢いよく裂いた
シュワッッ
途端に溢れ出す動脈からのの真っ赤な鮮血
「これだ…この色だ…」
私は筆を切れ口に差し込み、その鮮やかな赤をキャンバスに塗り込めた
「できた…我ながら素晴しい…傑作だ…」
求めていた色を最後に塗付して絵は完成した
『見せて…』
私とつながったままの奥○恵はせがむ
全身から性への喜びを放つ自身の姿
白い裸身に食い込む縄
顔にベットリと付着した男達の熱い精液
何よりも美しく描かれた奥○恵の性器
真っ赤な鮮血で描かれたその姿はグロテスクを超えて淫蕩で深淵で魅惑に満ちている
奥○恵の中に潜む欲望
砂漠に果つる満月の滴のように



キャンバスに描かれた己の姿を見て彼女は満足そうに頷いた。
『これよ…これが私の本当の姿…ああぁイク…』
大きく波打って絶頂を迎える奥○恵
その姿に呼応して私も最後の精を奥○恵の顔に放った。
『ああ…熱い…あなたのザーメン…誰よりも熱いわぁ…』
奥○恵は満足そうにザーメンでぐちゃぐちゃになった美形を歪めて真新しい最後の精液を舐め回した。
返り浴びた私の鮮血には気を止めずに
私は遠のいていく意識の中で彼女の表情を見た。
彼女は私の絵を見てとても満足そうにしている
そのことが私にはたまらなく嬉しかった。