「ミルクウィード」 天使の羽根のように
ジェリー・スピネッリ/著 千葉茂樹/訳 理論社/発行

 第2次世界大戦の真っ只中、もっとも危険な所で少年は走っていた。「こそ泥!」と言われて大人に追いかけられていた。少年は気がつく同じような親のないウーリー達と共に生き抜いていくこととなる。その時、少年のいた場所とはポーランドの首都ワルシャワであった。
 実在の人物「コルチャック先生」が度々登場します。コルチャック先生が運営する孤児院に少年は食べ物を運んだり、また親と共に暮らしているユダヤ人少女ヤーニナとも知り合いになり、彼女の父親とも親しくなります。少年の周りはこうして人が増えていくものの、自分自身の正体は解らないまま、彼がどうして自分の名前も、自分がユダヤ人なのか、ジプシーなのかも、親はどうなってしまったのかも、何故「こそ泥!」と言われた時以前の記憶が全くないのかも最後までわからないままであっても、それはこの物語に必要ない部分なのだろう。例え少年の名前がなくても、伝えたい事実はしっかりと受け止める事が出来る。悲しいく悲惨な過去がこの地球上にあった事を忘れる事はないだろう。

2005年8月10日

※表紙掲載許可は、理論社さんより得ています。