「Eggs」
夜明けなんて見たくない

ジェリー・スピネッリ/著 千葉茂樹/訳
理論社/発行

副題はいらないな〜と思うのは私だけだろうか、「夜明け」はこの作品のテーマの一部でもあるわけだが、田舎臭い響きがなんともこの本に似合わない。

その副題は別としても、今年読んだ本のベスト1に輝く面白さであった。表紙には線路に佇む少年の姿の写真ですが、写真だけで見ても私の好みではない。期待してなかったのに面白かった。最初のページでもうぐいぐい引き込まれてしまう、傑作でありました。

母を亡くしたディビットは祖母と暮らしていました。父親は300キロも離れたコネチカット州にいて(ディビットはミネソタ州にいる)週末には帰ってきますが、その間は祖母と二人っきりで暮らしています。祖母はとてもいい人です。しかしディビットは祖母を疎ましく感じていて、亡くなった母親の帰りを待つような子どもでした。

さてもう一人の主人公プリムローズ、ディビットよりも年上の13歳のこの少女には母親がいました。彼女の言う“いかれた”母親、手相や人生相談を請け負っています。もうそれだけでも嫌なのに、プリムローズの家は狭くて、寝室が一部屋しかない!この母親は13歳の私と一緒のベットで寝ようとしている!

一方は母親がいなくて、もう一方は母親なんかいらないと思っている。この二人が出会う確率は低そうな予感がしたけど、たぶん出会うのは運命だったんだな、読み聞かせという睡眠導入剤のお陰かもしれないけど、二人が二度目に出会うシーンが傑作であった。多分ほとんどの読者が彼ら二人を想像できると思います。二次元の文章から内容を想像できる本はほとんど傑作です。それまでほとんど無表情のディビットに悲鳴を上げさせるプリムローズがものすごくいい!

※表紙掲載許可は理論社様より得ています。


2011年9月22日