うぅ・・・耳が痛い・・・・。
今はクラウに連れられて城の女王の部屋に向かっているところらしい。
しかし、どうやらクラウが新しい女王を連れてきた、ということが知れ渡っているらしく、
すれ違うたびに、 あれがあの・・・とか、お美しい・・とか そんな言葉が耳に入ってくる
その言葉を気にしないようにとクラウに話しかける。
「ねぇクラウ? 後どれぐらいかかるの、その・・・・女王の部屋まで・・。」
「そうですね、あと10分ほど歩けば着くと思いますよ。」
後10分・・・・さっきからだいぶ歩いた気がするのだが、まだ10分もあるのか・・・
もうひとつ疑問に思ったことをクラウに聞いてみる。
「そういえば、女王の部屋へ行って何をするの?」
「とりあえず今日は新任の女王の挨拶だけです。」
「誰に挨拶するの?」
「議会の人たちと、侍女たちにです。」
そうか、侍女ねぇ・・前の世界ではほとんど使われない言葉だ・・まぁ女王だってそう使われないだろうけど・・。
ふぅ、と一息ついて前を見ると一際大きくて豪華な扉が見えてきた。
「あれが女王の部屋?」
「そうです。ちょっと待っててください。 」
そう言うとクラウは扉に近づき、2度扉をノックした。
「女王様をお連れしました。」
どうぞ。という声とともに扉が開いていく・・。
そして、開いた扉中に見たのは何十人という人々が左右に整列している姿だった。
うぁ・・。
予想していた人数よりも遥かに多い人数に少し圧倒されていると、クラウが遥様と手招きしている。
おずおずとクラウの方へ行くと、目の前には赤絨毯がしいてある道と
その先には大きな、いかにも王様の椅子といった感じの椅子があった。
赤絨毯なんて修学旅行以来だな〜と現実逃避していたら
クラウが前に進むように目線で合図を送ってきたので、しかたなくゆっくりと一歩踏み出す。
足裏にふわっとした絨毯の感触を感じながら、一歩一歩椅子に近づいていく。
うぅ・・視線が痛い・・。 彼女たちの前を通るとき痛いほど凝視されていることがわかる。
なんだか非常に長く感じた赤絨毯の道が終わって、椅子の前の階段を1歩2歩3歩とのぼる。
隣にいるクラウが、回れ右してください。というのでとりあえず回れ右。
すると、さっきまで立っていた人々が一様にひざまずいていた。
うわぁ〜と思っているとクラウが、後はお任せします。 と無責任なことを言って後ろに下がってしまった。
さてどうしよう・・・。 みなのもの面をあげぃ! と言いたくなるのを必死にこらえる。
でもいつまでもこのままではいけないので、とりあえず一言。
「みなさん顔を上げてください。」
するとそおにいた人たちが一斉に顔を上げて、ピシッとした気を付けの姿勢をとった。
こちらを見つめる何十もの視線が次の言葉をいまかいまかとまっている・・・。
でもこれは女王としてしゃべらなきゃいけないわけで、という事は女言葉を使わなきゃいけないってことで・・・。
あぁ〜と一人心の中で悶々としている間にも、僕の言葉を待っている何十もの視線がこちらを見ている。
これは、クラウのためだ、しかたないんだー と自分に言い訳をしてゆっくりと口を開く
「えっと私は今回女王になった、桐生遥といいます。 まだこちらの世界の事はよく分かりませんが、
がんばりますのでいろいろとよろしくお願いします。」
そう、一息に言ってじっと反応を待つ・・。
無反応・・・
もしかした男だってばれた!?と思っていたら、
パチ、・・パチ・・・パチパチパチパチパチパチパチ
ひとつまたひとつと拍手がだんだんと増えていって最後にはとても大きな拍手となってこの部屋を満たした。
拍手がやんだころ、後ろにいたクラウが前に出て
「それでは今日は遥様も疲れていらっしゃいますので。また後日にしたいと思います。」
と言って、僕を連れてこの会場を後にした。