「それで、なんで僕をこっちに喚んだの?」
自分で言っていておかしく思うがクラウの様子を見ていると嘘をついているようには見えない。
というより、疑うと泣きそうな顔をするので疑う気もおきない。
「えっと、先ほどもいいましたが私たちの国では統治する女王を別の世界から喚ぶことに
 なっていまして、それで・・」
 彼女の話に気になる部分があったので話をさえぎるように言う

「あの・・・女王?」
「はい、女王ですが?」
何を?という感じのクラウゼルに言い聞かせるように言う

「・・・・・・・・・・あのさ、僕男なんだけど?」  

えぇ!? とクラウが驚くのを見て僕はがっくりと肩をおとした。
確かに僕は顔は女顔だし、体は華奢だし、間違えられたことも何度かある
それでも、勘違いされるとさすがにショックを受ける。 
とりあえず気を取り直して聞く。

「で、クラウ。 なんで女王なの?」
「えっとそれは、魔力っていのは基本的に女の人にしかなくってそれで・・」
「へぇ〜そうなんだ。 で、僕が男だと何か困ったことがあるとか?」

クラウは少し逡巡して
「はい、あの実は王宮は男のかたは入れないんです。」
「は?、・・・・えっと、それはまたえらく古風な・・それで、もし入ったりしたら?」
「たぶん・・たたき出されちゃいます。」
「たたき出されるってことは?」
「身包みはがされて、少し、けっこう、たぶんいっぱい、痛めつけられて城の外に・・。だと思います。」
「う、それは・・。 じゃぁクラウの口から説明して説得する事はできないの?」
「あの、たぶんだめです。 遥様を追い出して他の候補を新しくってことになると思います。」
「候補って他にもいるんだ・・。 そうだじゃあ僕が元の世界に戻るってのは?」
するとクラウはすまなそうにうつむいて
「実はこの儀式1年に一回決められた日にしかできないんです・・。 ごめんなさい」
「そうなんだ・・。それじゃあしかたないね、どうしよう・・。」
慰めるように言って目を閉じる

う〜ん と二人でうなりながら考える。

・・・・・考える、
・・・・・・・考える
・・・・・・・・・・考える
・・・・・・・・・・・・・・・・・・ くてっ。
「遥様!」
「はわっ!?」
いけない、どうにも考え事をすると脳がフリーズする、という癖?がでたようだ。

目が覚めたところで再び考えはじめる。

数分後、あっ、とクラウが何かを思いついたらしく、声を上げた。
「なにか思いついたの? クラウ。」
聞くと彼女は口の中で何かもごもごとつぶやいて、伺うように僕を見た
少したってから僕に聞こえていなかったと思いついたのか少し大きな声で
「あの、やっぱり一度皇女になるしかないかと・・。」

「は? 皇女になる?」
僕の疑問を見てとったのか、付け加えるように言う
「はい、だから服を少し変えればたぶんばれないと・・」

・・・・しばしの思考のあとおそるおそる尋ねる
「それって女装しろってこと?」

 はい、とすまなそうにうなずくクラウを見てついに覚悟を決める時がきたかと思った。
なにせ僕は女顔だ、クラスの女子に文化祭などで女装させられそうになったことも何度かある
しかし、そのたびにどうにか逃げおおせてきたのだが、今回は覚悟を決めるしかないようだ・・。
しかたない、何もわからない世界で身包みはがされるよりはましなはずだ・・。 たぶん。
「わかった、クラウ。それぐらいしかないんだったら仕方ない。」
「はい、わかりました。それじゃあ私についてきてくださいね。」
「・・・・ちょっとまって、ばれないの? 今の状態で?」
「大丈夫ですよ。瞬間移動しますから。」
一瞬納得してうなずきかけて

「瞬間移動?」

「はい、私これでも巫女ですから結構魔力があるのでそれぐらいなら簡単なんですよ。」
簡単なんですよって、ドラ○ンボールじゃないんだから・・・。
いかん、なんかこの世界きてから疑問符ばっかりだ。
とか思っているうちにクラウの輪郭がなんだか光り始めていた。
「私につかまっていてくださいね」
と無造作に差し出された手を少し逡巡してから、やっぱりとって、
僕たちは儀式の部屋から文字通り姿を消した。