目覚めはいつものように・・・はやってこなかった。
さきほどの夢のせいか汗びっしょりになった体を起こして周りを確認する
暗くて、目が慣れていないせいもあってかほとんど見えない。
今何時なのか気になり時間を確認しようと
枕元に置いたはずの時計を手探りで探す。
すると手に布と何かやわらかい、ふにゃっとした感触があった。
・・? 布団だろうか、でもそれにしては柔らかいし・・・
なんだろうと、気になって振り向くと
そこには顔を赤らめてうつむいている一人の女の子がいた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・!?
沈黙のなか、おそるおそる視線を下へ・・・・・・
「うゎああ、ご、ご、ごめんなさい」
あわてて手を離し、無意味に手をばたばたさせながら謝ると
彼女はうつむいたまま、小さな声で
「いえ・・」
と一言だけつぶやくようにいった。
とりあえず、一回、二回、深呼吸をして気を落ち着かせる。
ふぅ、と落ち着いたところで質問をする
「えっと、僕は桐生 遥 っていうんだけど、君の名前は?」
「はい、ラティウス・メイ・クラウゼル・アリュースといいます。」
「ラティウス・メイ・・ えとごめん もう一回言ってくれるかな?」
「ラティウス・メイ・クラウゼル・アリュースです。」
もう一度いったあと彼女は少しすまなそうにして
「あの、言いにくいようでしたらクラウゼル、またはクラウとおよびください」
ふぅ、ともう一度息をつき質問
「それじゃぁクラウゼルさん? なんで君はここにいるの?」
「それは、私が巫女なのだからですが・・あの、私出て行きましょうか?」
とクラウゼルは悲しそうな顔をしてうつむく。
僕はあわてていった
「いや、いやいいよ、出て行かなくて。むしろここにいて」
すると彼女は明るい笑顔でありがとうございますと僕に頭を下げた。
「それで、クラウゼルさん、結局なんでここにいるの?」
さっき聞きそびれた答えを聞くために再び質問
「えっとそれは私が巫女で、ここがあなた、つまり異邦のかたを喚ぶための場所で、」
「ちょ、ちょっとまって巫女?異邦?喚ぶ?どういうこと?」
もしかして彼女は少し頭がおかしい人で僕の部屋に忍び込んできてしまったのか?
ん? 僕の部屋・・・・? 目が慣れてきたので改めて周りを見渡す・・
僕の部屋じゃない!?
そこには石造りというかそのままの岩壁、そして僕が今いるところも岩でできていた。
急に驚いたようになったのを自分の説明不足のせいだと思ったクラウゼルは
おろおろとしながらも再び説明をはじめた
「えっとですね、この国では統治するかた、すなわち女王を別の世界から巫女が
潜在的魔力の高い方を選んでつれてくることになっていてですね、
今回私が選んだのが遥様だったということで、ですね。それで私がここにいるのは
さっきまで私儀式してたからで、それであの。」
ひととおりの事情はわかった。わかったが納得できるものではなかった。
異世界? 喚んだ? そんなものが存在するとは思えない。
そんな気持ちがあったせいもあって次に僕の言葉には少し棘が含まれていた。
「ずいぶんと強引に決めるんだね。こっちはまだ承諾はしてないんだけど?」
クラウゼルはびくっと体をすくませると、本当に申し訳なさそうに
「すいません、あの遥様があの・・死んでしまいそうでしたので・・。」
「死ぬ?」
「はい、こちらからでも感じ取れました。遥様の命の反応が小さくなっていくのが。」
・・・・・・・・!
まさかあの夢は、あれは現実に起こったことだったってことなのか?
じゃぁ、彼女は命の恩人・・・
「ごめんねクラウ。 あと、ありがとう。」
彼女は笑顔になって、いえ。とうなずいた。