「さて、それじゃあこれからどうするのか考えよう。」
うん、とみんながうなずいたのを見て僕は話し出した。
「まず、これがどういう事態なのか、ということだけど・・まぁどっきりではないだろうね」
そうだったらいいんだけどね、と誰ともなしにつぶやく・・。
「考えられるのは、 これが、夢だということ、それから・・ここが違う世界だということ。
あとは・・わからない。 まるでなにかの映画みたいだね。 」
ハハと僕が笑うと みんなも乾いた笑い声を上げた。
「それで、とりあえず今日の昨日と同じ時間、つまり夜中の2時に僕はもう一度鏡の前に
立ってみる。 今できるのはこれぐらい。 もし、もしだめだったらまた明日考えよう・。」
僕が言い終わるとみんなは、神妙にうなずいた。
○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
それから、僕たちは自分たちの教室に帰り普通に授業を受けた。
そして放課後。
僕たちは再び集まり全員いっしょに下校していた。
「あのさ〜、思ったんだけどマンションごとって事はうちの親たちも?」
恭介がふと、つぶやいた言葉にみんなが固まる。
「そういえば、すっかり忘れてたな・・・。」
「だね・・・。」
「うちの親変わってたらどうしよう・・・・・。 うわっ気持ち悪い・・・。」
おいおい、それはひどいぞ華姫と思いながら、僕も自分の親が変わっていたら、と考えた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 確かに気持ち悪い。
「それじゃ、確かめるためにもとっとと帰りますか〜」
うん、とみんながうなずいて僕たちは家に向けて足を速めた。
○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
「なんか、妙にどきどきするね」
と華姫が柄にもなく緊張したように言う
まぁ、それはしかたがないだろう、なにせドアを開けたら知らないおじさんとおばさんが
出てきて、おかえりなさ〜い。なんて言われたら・・と考えると 恐ろしい・・。
その点うちは、一人なので気楽だ、帰ってくるときが問題だが・・。
「それじゃあ、開けるね」
みんながごくっと息を呑む音がした。
ドアがガチャっと音をさせて開く
おそるおそる中を覗き込む僕たち、
華姫が家の中に一歩踏み出した、その時
「お・か・え・り・はなびちゃぁあああああああああん」
大声で叫びながらこちらに高速で突っ込んできた謎の物体が華姫を捕らえ、
そして、はなびちゃん、はなびちゃん、と連呼しながらほお擦りを始めた・・。
おもいっきり引いてしばらく呆けていた僕たちだったが
いち早く回復した華姫がうんざりしたように
その人物?に
「いい加減にしてよね、お母さん。」
と言うと、華姫のお母さん相川月野が顔をあげて
「いいじゃない、だって会社、知らない人ばっかりだったんだもん。」
と少しすねたように言った。
その言葉を聞いたときやっぱり、と言う声が、僕たちの間でもれた。
「やっぱりって?」
とその言葉を聞きつけた華姫ママが怪訝そうに言う。
僕たちは少し顔を見合わせて、今までのこと、そしてこれからどうするかを話した。
「不思議なこともあるものねぇ〜」
とぜんぜん不思議じゃなさそうに言う華姫ママ、こういう所も華姫と似ている・・。
少し考えこむようにしていた華姫ママだったが
ポン、と昔の漫画みたいに手を打って僕たちに提案した。
「このマンション内の人を全員集めて事情を説明しましょう。」
こうして、僕たちはみんなの前で事情を説明することになった。