僕達はすぐに教室を飛び出していこうとしたが、
 ちょうどドアを開けて入ってきた先生に止められてしまった。
 ・・・・その先生も知らない人だった。
 
 そしてホームルームが終わったあと僕達はすぐに教室を飛び出した。

 「これはどうゆうことなの?」 
 華姫の言葉は三人の疑問を代弁していた。

  ―――そう、これはどういうことなのか?
 何で、「僕」があの写真に写っていたんだ? 何故皆知らない人ばかりなんだ? 
 なぜ華姫と椎那は姿が変わっていないんだ? 他にも僕達のような人はいるのか? 
 
 その時、椎那がう〜んと考えるそぶりをして
 「他のクラスはどうなっているのかしら?」
 確かにそうだ華姫たち以外にも変わってない人がいるかもしれない
 僕はよし、とつぶやいて 
 「とりあえず全部のクラスを見て回ろう」
 「わかったわ。 それじゃ、隣のクラスからいきましょう」
 と二人はうなずいた。

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ーH8
 
 
 ・・ガラッ
 
 僕達は隣のクラスのドアを開けた。  
 「は・な・び ちゃ〜〜〜〜ん」 
 と妙に聞きなれた声を発しながら中から飛び出してきた物体を華姫はガスッと反射的に
 踏みつけた。 
 グエッと踏まれたかえるのような声がしたが華姫は気にせず踏みつける。 
 
 
 大体10回ほど踏みつけたところで あの〜、と椎那がおずおずといった感じで
 「彼、姿変わってないようなんですけど?」
 あ、と僕と華姫が同時に声を上げた。
 
 華姫に踏み潰された彼の名前は 藤間 恭介 僕たちの見慣れた顔だった。
 彼はひどいよ華姫〜と情けない声を上げているがこれは無視して質問する。 
 「恭介、お前のクラスはどうなってるの?」
 へ?、と恭介がよく分かっていないという顔をする
 「だから、お前のクラスは知らない人ばかりじゃなかったのかって聞いてるの。」
 ああ、と恭介は言って
 「教室に入ってすぐに寝ちゃったから知らないよ〜。」
 ゴスッ と華姫がもう一踏み。
 「じゃあ何で今飛び出してこれたんだ?」
 「華姫ちゃんの気配がしたからさ〜。」
 「どうやったらそんなことがわかるんだ?」
 「ふ、これも愛の力さ〜。」 
 とかっこつけて言っているが、踏み潰されたまま言っているので
 まったくなさけないことこの上なかった。
 「で、実際どうなんだ?」 
 「うん、知っている人にあったのは鏡たちが最初だよ。」
 やっぱり。と言ってから僕はひとつのことに気がついた。 
 
 ――僕たち4人はみんな同じマンションに住んでいる。
 
 僕がこのことをみんなに言うと、皆もそのことに気がついたらしい
 「じゃあ、私たちの住んでいるマンションの人だけ変わってないってことなの?」
 「そういうことらしいね。」 
 と僕はうなずく。
 「あれ?でも玲は姿かわってるよねぇ。」
 恭介がのほほんと問いかけた。
 「そういえば、そうねって、あんたに鏡のこと言ったっけ?」
 「そんなもの気配でわかるさぁ〜。」
 わかるかっ、とつこっみをいれつつ 僕は自分の体のことを考えた。
 
 この4人の中で姿が変わってしまっているのは僕だけ。 
 僕とこの3人との違う点は・・・・・・?
  ・・!
 
 僕は思いついたことを皆に尋ねてみた。
 「昨日の夜中の2時ぐらい皆は鏡の前に立った?」
 
 恭介は爆睡してたさ〜と
 華姫も熟睡してたわよと
 椎那も眠っていたわと 
 
 うん、皆とても健康的でよろしい、 じゃなくて。 
 
 これで一つはっきりしたことがある。 
 僕が、4人の中で僕だけが変わってしまった理由は あの時鏡に触れたから。
 それしか考えられないだろう。 
 
 というわけで僕は昨日の夜のことを3人に事細かに話していった。
 
 「なんかどっかの怪談話みたいさね〜」
 聞き終わって最初に声を出したのは恭介。
 皆がその言葉に同意するように首を振る。
 「よくある話よね。特に夜中の2時なんてところはまんま怪談じゃない。」
 うんうん、と皆再び同意。 
 「もしかして皆でおんなじ夢を見てるとか?」
 と、椎那。 
 「よし、じゃあ確かめて見ましょう。」
 「華姫ちゃん。なんでそんな銀色に光るハリセンなんか持ってるの? それ鉄じゃあないよね?
  なんでこっちに来るの? ちょ、華姫ちゃん? 落ち着いて。 ね。」
 「大丈夫よ。だってあなたはギャグキャラだから。」
 「そういう設定上のお約束を・・。 ほんとギャグキャラだろうがナンダロウが死ぬって!」
 「はい、歯〜食いしばって〜♪」
  や、やめ  と恭介が言い終わる前に なんだか鈍い音が恭介の頭から響いて,
 恭介は 華姫ちゃんの愛は痛いさ〜 と謎なことをつぶやいて崩れ落ちた。
  
 「大丈夫か恭介? なんだか後頭部から不思議な音がしたけど?」 
 これで大丈夫だったらすごいよな〜 とか思いつつ一応たずねた。
 しかし恭介は 何のこれしき とすぐに立ち上がった。 
 なんだか華姫の ちっ という舌打ちが聞こえた気がしたけどきっと幻聴だね。
 「で、痛かったの痛くなかったの?」 
 「もちろんこんなもの華姫ちゃんの愛に比べればまったく・・」
 「そうじゃ、もう一発逝ってみましょうか。」
 「スイマセン。むちゃくちゃ痛かったです。」
 痛かったって椎那 と華姫がハリセンをしまいながらいった。

 「そう、痛かったのていうことは夢じゃないのね・・。」
  と椎那がうつむきながらつぶやいた。
 僕は椎那を慰めようと彼女に近づいて
 ――三度僕の背筋に寒気が走った。  
 ヤバイヤバイヤバイヤバイ   頭が警鐘を鳴らしているが体はすくんで動けない。
 他の2人は気づかない。どうやら僕限定らしい。 
 
 「おちつこう、なんだかわかんないけど落ち着こう、ね、ね 椎那。 ここは教室だよ、ね。」
 「鏡君、セリフの使い回しはいけないの。」 
 なんだか椎那が妙なことを言いながら幽鬼のように立ち上がった。
 とりあえず逃げなくちゃ そう思った僕は力を振り絞って重い足を動かし逃げ出した。
 
 さすがに様子がおかしいことに気づいた恭介と華姫は椎那をとめにはいる。
 「椎那とりあえずおちついて。  ほら深呼吸。ひっひっふーひっひっふー。」
 「華姫ちゃん。それはラマ〜ズ法だよぅ」
 「んなことどうだっていいでしょ。あんたも止めるの手伝いなさい!」
 りょ〜か〜い、と力の抜けるような声で返事をして
 恭介は椎那をしっかりと捕まえた。
 性格はあれだけれども恭介は力だけは強い。 
 本人談によると華姫に鍛えられたからだそうだ。
 
 そんなことを考えている間になんとか椎那も落ち着いてきたみたいだ。
 
 ふぅ、と全員が一息ついたところで僕たちは次の対策を考えることにした。