ガラッ 
 
 「おはよー 椎那さんに、鏡さんに、華姫さん」
 ドアを開けて僕を救ってくれた男の子が僕たちに言った。
 
 ・・・・・・ん?  鏡さん?  

 
 「ちょっ、ちょっとまって鏡さんって僕のこと知ってるの?」
 僕は今朝この姿になったばかりなのだから彼が僕のことをしているというのはおかしい
 そのはずだ・・。
 しかし彼は不思議そうな顔をして
 「何いってるんだよ、鏡さんはもともとうちのクラスにいたじゃないか。」
 
 『・・・何だって!?』
 
 僕たち三人は彼に詰め寄り質問をした。
 「ちょっと待って。僕がもともとこのクラスにいた?」
 「そうだよ、なにいってるんだい。 ちゃんと学級写真もとっただろ?」
 
 僕たちはまじまじと教室に飾ってあった学級写真を見て 
 そこに笑いながら写っている「僕」を 見つけた。

 そんな・・・。 と華姫が息を呑んだ。 
 どういうこと? と椎那がつぶやく。
 
 「これは・・僕なのか・・?」
 僕も茫然自失になりながらつぶやいた。

 大丈夫?と彼が言ったような気がしたが そんな声はまったく耳に入っていなかった・・。

 何故?なぜ?何で?なんで? 頭の中が疑問符でいっぱいになる。
 ここに写っているのは誰? これが「僕」だとしたら僕はだれなんだ?
 こんな写真を撮った覚えは当然ない。 

 そして、考えているうちに僕はもうひとつの事実に気がついた。
 
 僕は今そこにいる彼のことを知らない・・・ 
 
 「ねぇ、君の名前は?」
 
 僕は彼に尋ねた。
 僕が尋ねたことで華姫と椎那も気づいたらしい 彼のことをじっと見ている。
 
 彼は少しの間奇妙なものを見るような目で僕たちを見たが ふぅと息を吐いて
 「僕の名前は 一文字 静 だよ。 忘れちゃったの?」 
 といった。
 
 後ろで二人が はっ と息を呑む音が聞こえた。
 ・・そう確かにその名前には聞き覚えがあった。
 しかし、僕たちの記憶では 一文字 静 という名を持つ子は女の子だったのだ。
 
 ただ単に同じ名前ということも考えられる。 しかし「一文字」という珍しい苗字で
 同姓同名ということがそんなにあることだろうか? 
 それに僕のこともある。 彼もとい彼女にも同じことが起こっていないという保証はない。
 しかし、それにしてはまるで前からそうだったという感じの振る舞いだ。

 再び僕の頭を疑問符がいっぱいにし始める。 
 華姫たちも同じことを考えてるようだ、さっきから一言もしゃべらない。

 そうして考えているうちに 他のクラスメイトたちも次々と入ってきて僕たちに挨拶をして
 自分の席へいく。 
 しかし皆僕がここにいることを不思議に思っている感じはない。  
 
 そして全員が席に着いたとき、後ろの二人以外で見知った顔の子は一人もいなかった・・。