”間違いだらけのクルマ選び???”始まる

 さあ、それからがまた大変!あれこれ迷うのも楽しいものなのですが、私にとっては「これだ!」という決定的な存在感を持つ車がみつかりにくい時期でもありました。もちろんラテン車で、家族4人が遠出できるぐらいの小型車にすることははっきりしていましたが。あと、条件としては諸経費含めて200万ぐらいまでで買える新車であること(下取り分も考慮して)、そしてできれば、その時のディーラーさんよりももっと近くて、当然のことながら技術的に信用のおけるお店を望んでいました。自然な流れとしては、サンクの後継者であるクリオ(日本名ルーテシア)にいくところなのですが、探し始めた当初はちょうどマイナーチェンジ前で新車はなく、またサンクと比べてしまうとアクが足りないような気がして今ひとつピンときていなかったのです。車検までにはまだ時間がたくさんあったのでじっくり腰を据えて考えることにしました。

 余談ですが、こうして毎日のように、何がいいか夫と話し合ったり、輸入車関係の雑誌や本を見たりするうちに、当時1才半ぐらいで急速に様々な事柄を吸収し始める時期だった息子は、車の名前を次々と質問するようになりました。私たち夫婦がそれにひとつひとつ答えているとどんどん興味が湧いてきて、楽しそうにカタログや雑誌を眺めてはその名前を覚えることに夢中になっていったのです。当時参考にしていた本はもうボロボロですが、現在でも息子の愛読書としていまだ活躍中です。そして当然、ミニカー集めにも熱が入ります。ラテン車好きの間では有名な、某お菓子会社のラムネのおまけにフランスの会社が作っているミニカーがあります。スーパーへ買い物に行くたび、そのなかに良いのがないかチェックを欠かさないようになりました。また、何気なくスッと欧州車の名前を口にする息子を見て、まわりの大人たちが「よく知ってるね〜。」と感心すると、照れながらもますます調子づいていくのでした。 反対に娘のほうは、クルマの話ばかりしている私たちを見て、ちょっと食傷気味になっていたみたいです。

 こんなふうに子供たちを巻き込みながらの車選びで浮上してきたのはシトロエンのサクソ(当時、日本ではシャンソンという名で出ていました)です。大きさや値段、お店の場所などだいたい希望どおりで、ルノー以外の車にも乗ってみたかったのと、何より”CITROEN”というブランドそのものにある種、憧れのようなものを抱いていたからです。サクソのサスペンションはハイドロニューマティックではありませんが、古くから数々の個性的な名車を世に送り出してきたシトロエンに興味がないはずはありません。プジョーの傘下に入ってしまって、ちょっとドイツ車寄りの内装になってしまったのが残念といえば残念なのですが。もちろんプジョーもハンサムでスマートな雰囲気が素敵です。しかし306は少し価格が高く、また、へそまがりの私にはよほど惚れこんでいない限り、人気が出すぎると逆に二の足を踏んでしまうという変なクセがあったのです。というわけで、とりあえずシトロエンのお店を訪ねて、まずはサクソを試乗してみることにしました。

 さすがフランス車だけあって、心地よいシートは申し分ありません。乗り味も滑らかで、小さいのにしっかりとしています。こじんまりはしているものの、なかなかキュートで結構気に入りました。ただちょっと室内が狭いかな・・・。また、素直で滑らかな走りを実感しながらも、「とても良い車なんだけど、私にとっては何かが少し足りないような気が・・・。」と、その時はあまり気にとめてなかったのですが、後になって思い返すとそんな声が心のどこかで聞こえていたように思います。そしてそれを思い起こさせる出来事がありました。

 ある時、夫の車の担当をしてもらっているあのTさんから突然、フィアット・プント(セレクタ)のキャンペーンをやっているので一度試乗してみないかと電話がありました。まったく、絶妙なタイミングでした。サクソに好印象を感じていて、決めちゃってもいいかなと思っていた矢先でしたから。当然 そのときのTさんは、ウチがサンクを買い換えようとしていることなど知る由もありません。夫のパンダのほうを、というつもりで連絡してくださったようです。プントも考えていないことはなかったのですが、当時の価格では予算オーバーになってしまいます(ニュープントはかなりお手頃価格となりましたね)。でも安くしてくれるなら・・・。う〜ん、また迷ってしまいそうだけど、せっかくだからということで試乗してみました。ハイ、案の定、迷うことになりました。これがかなり面白いノリモノだったのです。まず室内に入ってビックリ!その広くて明るいことといったら!シートはフランス車と違って堅めですが、シャキッとした感じで意外といい座り心地。ミッションはECVTを採用していて、慣れないうちはギクシャクするのですが、慣れてくるとそれが快感に・・・。素直そのものといった優しい感じのサクソと、扱いにちょっと慣れが必要なクセのあるプント。正反対のものを前にして、ずいぶん悩みました。