1.6WEL32 超三(V1)の製作(UX-12A超三リメイク)2020.06.20
Katou@ 刈谷

EL32 STC.jpg
19年夏お寺大会
「19年夏のお寺大会」

EL32/12AX7
ムラード EL32とSOVTEK 12AX7

<経緯>
   ・本機は直熱管UX-12Aを用いた超三ヘッドホンアンプのリメイク機です
  ・手作りアンプの会「ディスクリート・ヘッドホンアンプ競作大会(2016年冬)」出品に向けに製作しましたが・・・
   UX-12Aがエミ減で実用になりません😢
リメイク前のUX-12A超三
12A_STC.jpg
ヤフオクで入手した格安中古球です。
半田ごてでゲッターに「喝!」を入れましたが・・・
どうしても復活しません・・残念
    新古球を探しましたが高価で手が出ません、手持ちの別球に改造できないか検討することにしました。

<別球化検討>
   ・スペース上、球の大きさはST12級に限られます。 6G6-G、1626、EL32を比較検討します。

  ・6G6-G(RCA 箱はWestinghouse)
   6Z-P1のリプレース用にフロービスさんから入手しておいた五極管です。
6G6-G   規模は丁度よいですが、
ゲッターが濃く電極が見え難い
・・

  ・1626(HYTRON)
   出張帰りにラジオデパートのキョウドーでお土産買いした傍熱三極管です。
1626別アンプで使用を検討中
今回は除外とします。

  ・EL32/CV-1052(Mullard)
    マニアに知られた北米VT52(五極管)の欧州版です、大須ハイファイ堂で見付けた中古球です。
CV1052/EL32
見栄えする構造、
プレート上下に突き出した長いヒーターが美しい!

最終的に形が気に入ったEL32を選択しました。
       電源トランスPMC35Eに対し規模過大ですが対応し得るものに変更することにします。

<EL32化改造>
  1)元のUX-12A超三アンプ概要
    ・UX-12Aを用いた出力0.2Wのヘッドホン用超三(V1)ミニアンプでシャーシはタカチのYM-150(横幅150mm)です。
   前面にソース入力とヘッドホン出力用のφ3.5ミニジャックを配置しています。
     背面にはスピーカー駆動用のバナナジャックを備えています。
    ・出力トランスは春日無線のシングル用OPT KA -5730(イ ンピーダンス7KΩ、出力5W)です。
大きさ比較
奥:815PP(幅400)
左:6JV8超三(幅130)   右:12A超三(幅150)
大きさ比較
背面状況

出力端子
左よりアース・RCA入力端子
SPインピーダンス切換えスイッチ
SP端子
電源トランス(ノグチPMC-35M)
12A用電源トランス
B巻線:230/260V DC30mA
ヒーター巻線:6.3V 2A×2 外寸:73×62mm
内部状況
内部配線状況
左側基盤は定電圧B電源、初段(2SK30A)周辺回路
UX-12AヒーターDC5V電源・定電流回路
   改造前回路図 (クリックにて拡大)
全回路図

  2)改造概要
  ・<電源トランス>
   出力管変更に伴いPMC-35MのB電源容量が不足するため電源トランスを変更します。

   EL32の動作点は標準動作例のEp:200V Ip:25mA Ig2:4mA Po:2.3W RL:7KΩをベースとします。
   初段は 1mA流す設定なので、アンプ全体でのB電流は60mA程度となります。
   元の電源トランスPMC35Mの外寸は73×62ですから同等サイズで60mA流せるトランスを探しました。

   B巻線定格で60mA取り出せるトランスが理想ですが、このサイズでは見当たりません。
   苦肉の策としてヒーター電力をB電流に振り分ける前提で春日無線のH9-0901を選択しました。
   各巻線容量はB巻線:両波230V/50mA、ヒーター:6.3V/0.9A×2です。
   EL32と12AX7のヒーター電流は合計0.7Aなので約15mA B巻線に振り分けられ所用の60mAを確保できると判断しました。
   交換には若干のボルト穴位置修正を要しましたが角穴はそのままでOKでした。

  ・<初段>
   2SK30A(シングル)をパラに変更しゲインを倍増化します。
   出力向上(0.2W→1.6W)によりスピーカー駆動がメインになると歪みが気になると思われます。
   状況によりNFBを掛けられる余裕確保が目的です。
   ソースパスコンにNFB受け口となる100Ωをシリーズに挿入します。

   比較的リニアリティー良い領域での運用となるので歪低減も期待できます。

  ・<出力段>
   出力管変更に伴いソケット(UX⇒US)とヒーター回路(DC5V⇒AC6.3V)を変更します。

    EL32はトップグリッドですから、シャーシに引き出し穴を追加工します。
   グリッド引き出し線のシールド処理を考慮しピンジャックで中継することにしました。

    超三(V1)のメリットを大きく享受できる五極管接続で用います。
   カソードに定電流回路を挿入し、グリッド電圧が変動してもIpが電源容量を超えない様配慮しています。

  ・<電源回路>
       基盤組込みの定電圧B電源電圧を変更(250⇒265V)、UX-12A用ヒーターDC5V及びカソード定電流回路を除去します。
   出力管定電流回路はEL32化に伴い電流が倍増するので素子発熱懸念から基盤外に変更とします。

   EL32のカソード・ヒーター間耐圧は50Vなのでヒーター巻線専用化+フローティングとしました。
    12AX7は別ヒーター巻線とし、一端をアースします

   超三V1はB電圧変動により帰還管カソード電位が変動しますのでMOSFETとZDを組合せた簡易定電圧回路を採用しています。
出力管周辺
出力管周辺
ソケット変更(UX→US)、電圧測定チップ端子位置変更、
EL32 G1配線引出し用RCAジャック・ケーブル。
改造後内部
改造後内部
スペース上多層配置です。
各部品のリードに絶縁チューブを被せてました。

   改造後回路図 (クリックにて拡大)
全回路図
           ※手持ち部品活用のため、部品定数が最適でないない部分があります。

  <完成したEL32超三>
   EL32正面
   EL32ヒーター

<調整>
  ・熱的安定後に帰還管のカソード電圧を1KΩバイアスVRで20V程度に設定します。
    電源100Vが変動しても30Vを超えることは無く実用上十分に安定していることが分かりました。 
  
<試聴と修正・チューニング>
  ・私のリファレンス試聴用CDを聞いてみます。
   んっ?超三らしいドンシャリ感がなくCR結合の様な音質です。 聞き易い良い音ですが低域の伸び・張りが感じれらません。
   ですが、中古球なので「こんなものか」と思い込み、試聴会出品直前だったこともあり一旦完成としました。
   ※19年度中部支部持寄り試聴会・夏のお寺大会等にて「低域が足りない」との感想が寄せられていました。

  ・最近になって、製作記作成のため内部をよ〜く確認すると・・・ 配線・部品定数が間違っていることが分かりました (ノ゚ο゚)ノ 。
   先ずEL32のグリッドが12AX7のカソードではなくグリッドに繋がっていました(汗;)。
   次に初段2SK30Aソースバイパスケミコンの容量が220μF(10V)ではなく2.2μF(100V)でした(汗_汗)。
   この2点を修正したところ、ドンシャリ超三サウンドを得ることができました。

  ・前作6JV8超三との比較では低高域ともレンジが伸び馬力も上ですが、歪みが多いと感じます。
   メジャーループから10dB負帰還を掛けることで気にならないレベルとなり完 成としました。

  ・EL32は立体臨場感があり各楽器がきちんと定位する素晴らしい球でした。 定評のタマはやはり良いです。
   但し、出力は規格表の2.3Wを大きく下回り1.6Wに留まりました。
    L/Rで出力差があり、何れのC/Hも波形の+側が早々にクリップすることからややお疲れ球でしょうか。
    ですが音質は問題なく、古典三極管の様な緩さが小口径フルレンジを大口径の様な落ち着いた雰囲気で鳴らしてくれます。

  ・超三はNFB不要のイメージですが、大型システムでは低域の押出しが強すぎる感じがします。
    軽くNFBを掛けるとボン付きが抑えられると共にレンジが広がり全体バランスが向上すると思います。

  ・小型OPTを用いたシングルでも十分な低域の量感・伸びが簡単に得られる「超三」はやはり魅力的な回路の一つです。

<総合特性>
入出力特性
(f=1Kc/s)
周波数特性
(0dB=1W)
歪み率(L)歪み率(R)

                                                              
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