褄白さん
「物を失したら、褄白さんにお願いしたら出てくる。とは、このあたり一円に住んどる人は、誰でもそう言うわや。」と古老からきく。
「褄白」とは、狸が座った時、前足の褄先が白いの「つまじろ」と、言うそうな。褄白狸は八堂山の八堂狸の弟分じゃそうな。と言う古老
物をうさして、褄白さんにお願いをする時は、アゲを供えて、願いごとが叶えられたら「“七色アラレ”をお供えしよった。」と、もう一人の古老がつけ加える。
家代々褄白さんを信仰しとる古老は、「お父はんが(夫)召集されたとき、小豆飯を弁当に作っとおくれ、わしがついとってやるから。褄白さんのお告げでのもし、無事に帰還したぞもし。」感慨深く語られる。
月参りをずっと続けている古老はそばから
「褄白さんがおいでの時は、パチパチ音をさせるんで、そなゝ時お願いをすると必ず叶えてくれよりました。」と感無量。
時計がわからんようになって、どうにもならんので
「俄信心で申し訳ないけんど、わからして下さい。」と、お願いしよりますと、心が落ちついきて、所在を考え出させてもろたが、勿体無いことで…。
「褄白さんは、熱も下げてくれよります。」異口同音、ご利益の語り草でいっぱい。
江戸時代末期の頃、下津池の峠に一人の老婆が住んどって、狸がのりうつった。老婆は焼け死んだ。ところが焼け死んだ筈の狸は実は焼け残って災いをするので、下津池の伊藤忠次郎、山内広吉、伊藤佐兵衛の三軒がおまつりをしとったが、明治の初め頃、部落でお祀りすることになって、氏神さんの境内へ移されたものじゃそうな。
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