證誠寺の狸塚


 「証、証、証城寺。証城寺の庭は、つ、つ、月夜だー」 お寺の和尚さんとかわいい狸たちの何とも愉快な童話「証城寺の狸ばやし」は、いまでも日本中の子供たちに歌われています。少し年輩の方なら米国の歌手アーサー・キットが(マケルナ、マカロニ)と歌ったのも覚えていることでしょう。この童話のふるさとが「證誠寺」です。

 そして歌のもとになったのは、木更津の松本斗吟が書いた「君不去」(きみさらづ)という本の中のお話です。「昔、木更津の證誠寺は、昼でも薄暗い大きなお寺でありました。その證誠寺の和尚さん(五代目の住職・了因法師)は大変な学者でしたが、その一面、三味線の好きなお坊さんでした。ある秋の月夜のこと、庭が騒がしいのでのぞいてみると、たくさんの大狸小狸たちが、腹鼓を打ったり、アシの葉の笛を吹いたり、おもしろいかっこうで踊ったりしていました。和尚さんは、あまり楽しいそうなのでついつい仲間入り。和尚さんがペンペコペンとやると、狸たちはドンドコドン。とうとう毎晩が歌合戦になりました。しかし4日目の晩、狸たちはあらわれず、心配した和尚さんが翌朝みてまわったところ、なんと一匹の大狸が、それも毎晩、音頭をとっていたあの大狸が、破れた太鼓腹のまま横たわっていたそうです。」

 大正8年(1919)夏、木更津にやってきた詩人 野口雨情は、この話に目をとめ、大正13年(1924)、名作「証城寺の狸ばやし」を発表しました。雨情は、証城寺を架空のお寺としてさらに空想をふくらませたのです。證誠寺にある(狸はやし童話記念碑)には野口雨情の筆跡と、作曲者・中山晋平の五線譜が刻まれています。

 境内には童謡「証城寺の狸ばやし」の流行を記念し、昭和4年に建立された狸塚があり、毎年10月下旬に供養として狸まつりが開かれています。


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