(めん)
(どり)(さん)(こう)神社の森の狸について

おさんさん

 昔、(めん)(どり)のお宮に「おさんさん」という狸が住んでいました。この狸は棹の宮のお使狸として神主さんに忠誠をつくしていたと言われています。

 昔々、この妻鳥に阿波からお嫁さんが来ておりました。その嫁さんの親が阿波で急病となり、そこで嫁の所へそのことを知らせに飛脚がとびました。ところが嫁さんの家ではすでに、飛脚の来た前の晩に一人の老人が棹の宮と一の宮へ行く用があって立ち寄り、阿波の親の急病の知らせをとどけていたので、家の人も飛脚もその不思議に驚きました。しかし家の老人は、それはきっと、「おさん」狸のおかげだと言いました。

 又、阿波のお楠狸と新居浜のお楠狸、棹の宮のおさん狸は三人兄弟だと言われています。又、日露戦争にも従軍して、赤とんぼになって敵兵をなやましたこともあるそうです。

 もう一つ。
 おさん狸は芝居上手で、一の宮神社の秋祭りには舞台をはり、お袖狸と合同で芝居を参拝者に見せてよろこばせました。
 それと関係あるのかどうかわかりませんが、明治の末頃まで、当社の春祭りには、奉納余興に芝居を上納していました。

 もう一つ。
 毎早朝、川之江町のサカナ屋さんが棹の森の近くを通って、新居浜へ行商に行っていました。ある朝のこと、
 「もしもし、すみませんが、一の宮のお楠に、子どもが安産したから心配せんようにいってくれませんか。」
とたのまれ、承知したその人は、一の宮の森で、そのことを伝えると、
 「おおきに、おおきに、」
と返事したとの話。狸家親戚の仲持した話。

 

(妻鳥町誌第三集 より)


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