とめやん狸の話



 民話ブームの中、市域(大東市)内外にまでその名が知られているのが、野崎新池に住む狸「とめやん」である。

 彼の悪さぶりは徹底しており、附近の田畑や鶏小屋を連日の如く、荒し回った。そこで、業を煮やしたムラ人は、一計をめぐらし、仕掛をつくり彼を捕えた。
 「どうやとめ公、恐れ入ったか。せやけど、どうしてこんな悪さばっかりするねん」。「そうかて、人間はみな、わいの悪口ばっかり云い、ちょっともほめてくれへん。それが腹たつねん」と答えた。

 そこでムラ人は、「ほな、どう呼べというんや」。「とめ公、とめ公と呼ばんと、たかはた大明神いうて、たてまつってくれたら、もう悪させえへん」と、約束した。

 ムラ人は相談の結果、自然石に 「正一位 高吉大明神」と彫り、しめ縄をつけ祀った。「どうや、こんでええか」。「こんでええ」。とめやんは、喜んで住家へ帰って行った。以後、ピタッと彼の悪さは止んだと云う。

 今も野崎・宝塔神社片隅に、高さ五十糎ほどのその碑が立っている。しかし、訪れる人も少く、また、何を意味するのか忘れられたように、ひっそりと立つ。地下の、とめやんの気持ちやいかに。

(大東市文化財ガイドブックU大東の伝承文化 より)


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