「狸寺」のはなし

安養寺は俗に「狸寺」と呼ばれ、親しまれている。

 永生13年(1516)鎌倉建長寺より希有の名僧であった秀睦和尚が来住してから修行僧が多くなり、境内の岩穴に住む古狸が旅僧に化身して修行したが、寺で犬を飼うようになると、この犬をひどく恐れるあまり和尚に礼状を残して旅立った。

十年ほどして犬が死ぬと再び訪れたが、秀睦和尚が亡くなっていたので、村人も立派になったこの僧を住職に迎えた。

僧はよく人々を導いたが、時々はだしで外へ出てあわてて戻ったり、大いびきをかいて寝たり、人前では決して食事をしなかったり、以前と同じく異常に犬を恐れることから怪しむ人もいた。

あるとき法事に行く途中駕籠に乗った和尚を、多くの犬が襲い、かみつかれたことから病になり十日目に亡くなったが、その亡きがらは十余年前に亡くなった秀睦和尚の姿であったといわれる。



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