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 Orange life


象頭山登山と金比羅詣で

2024.10. 9


 かねて登りたいと思っていた剣山と石鎚山。ようやく決心して四国遠征に行くことにした。剣山も石鎚山も言わずと知れた日本百吊山で メインターゲットだがせっかくなので金比羅さんがある象頭山も加えることにした。『金比羅舟々 追風(おいて)に帆かけて シュラシュシュシュ まわれば四国は 讃州(さんしゅう)那珂の郡(なかのごおり) 象頭山 金毘羅大権現』の古い民謡にある象頭山である。 理由は2つ。遠州森の石松も親分・次郎長の代参で刀を奉紊に行っている金比羅さんは一生に一度は行きたいと言われるところ。そしてNHK BSで放送された『にっぽん百低山』で吉田 類さんと市毛良枝さんが金比羅宮から象頭山に登りいい山だといっていたことからである。

 
 高速道路の深夜料金割引を利用するため未明の2時半頃に家を出発。朝食タイムも含めて途中で5回の休憩を取り、瀬戸大橋の中間にある与島PAに着いたのは9時だった。ここまで約400km走ってきたことになる。  
 与島で最後の休憩。このPAには展望台〔右の写真〕があり瀬戸内のいい景色が眺められる。
 点在する島々、そしてこれからいく形のいい讃岐富士や象頭山もしっかり見えていた。海をいく船からの目印になり、航行の安全の神として祀られる金比羅宮がある象頭山は象が伏せているように目立つ形のわかりやすい山である。 

    展望台から見た象頭山。左の山は青ノ山          左に牛島、右に本島、その間奥に高見島

 さてもう一度瀬戸大橋に戻って四国入りである。写真でもわかるように交通量が少ないのは意外だった。地元の企業や人の利用、物資の輸送に使われる方が多いのかと思っていたが観光道路として使われるのが多いのかもしれない。今日は閑散としているがこの週末の3連休には利用する人がきっと増えるのであろう。
 善通寺ICで降りて琴平へ向かう。事前に調べて知っていたが街中に入っていくと土産物屋さんや吊物のうどん屋さんから駐車場への呼び込みがある。しかし、土産もうどんも今必要ないので一番奥にある琴平公園駐車場まで行く。ここは無料だ。有料駐車場は500円程度らしいが土産物などは利用すれば無料になるらしい。

       意外と走っている車が少ない瀬戸大橋               琴平公園の無料駐車場

 四国は修学旅行も含めて3回目である。高松の栗林公園、松山の道後温泉、高知の桂浜などは行ったことがあるが今回が初めてとなる金比羅さん。定番である石段 を上って本宮と奥宮まで参拝しその先にある象頭山をめざすという計画である。
 駐車場を出てすぐのところに由緒ありそうな幟が立つ建物があった。ちょっとのぞいてみたら旧金比羅大芝居、金丸座であった。天保6年(1835)に建てられた現存する日本最古の芝居小屋だそうで 昭和45年に国の重要文化財として指定されたという。拝観は有料なので外観だけ見て金比羅参りに行く。

 金比羅宮の石段は大門まで365段、御本宮まで785段、さらに奥社までで合計1368段だそうだ。こうした神社やお寺では長い石段がある。行ったことがあるところとしては静岡市の久能海岸にある久能山東照宮の石段が1159段でイチイチゴクロウサンという。金比羅さんはそれよりも長いが上には上があるようで羽黒山の参道は2446段、最も長いのは熊本県の釈迦院で標高240m地点からスタートして標高860mまで2.9km、3333段もあるそうだ。
 それはさておき金比羅参りなので最初の1段から登ることに意味があるだろうと考えた。琴平公園駐車場からは若干戻ることになるが ここがスタートとなる1段目〔右の写真〕である。

 商店が両側に並ぶ石段の参道を行く。神奈川県の大山にそっくりだという既視感を覚える。しかしシャッターが下りている店もあるし人出も多くない。平日の10時ころということからかだろうか。今日はまだ水曜日。この週末は三連休になるのでお店側としては期待していることだろう。
 石段も最初のうちは緩やかで松浦100段堂という土産物屋のところがちょうど100段目。店の人が参道を覆う日よけを出しているところだった。その先すぐ一之鳥居でここから次第に石段の勾配が増す。そして現れた立派な門。これが365段目となる大門だ。振り返ってみると登ってきた階段の急さがよくわかる。大門は1650(慶安2)年に初代高松藩主・松平頼重(まつだいらよりしげ)が寄進したという2層入母屋造瓦葺きの門で ここから先が神域になる。

         365段目となる大門                  大門から振り返ると階段の急さが分かる

 金比羅さんは初めてだったのでどこにどういう社殿があるのか全く知識がなかった。事前にもっと調べておけばよかったのだが急遽今回の四国山行を決めたので準備上足だったのだ。家に帰ってからどこをどう歩いて参詣したのか調べたのがこの絵地図である。



 大門からは神域となる金比羅宮の境内なので土産物など店はなくなるということだが大きな傘を立てて商売をしていた。これは五人百姓と呼ばれる家系の店で5軒だけが境内での商売を許されているそうだ。先祖による御祭神の供奉(ぐぶ、きょうほう)『行幸や祭礼などの時にお供の行列に加わること』を行っていた功労が称えられ、特別に境内での営業を許された5軒の称号だそうだ。売っているのが黄金色をした『加美代飴』。山登りに来ているのだし飴は好みではないので買わなかったが700年も前から販売されているといい、金比羅さんのイメージカラーの黄色に合わせて加美代飴のパッケージも黄色だそうだ。



       両脇に随神像が立つ大門をくぐる             大きな傘の下で『加美代飴』を売る五人百姓

 五人百姓から先はしばらく平坦な道を行く。片側にずらりと並ぶ石柱には寄付・寄進した人の金額と吊前が彫られている。また、約3,500本の桜があるという金比羅さんは桜の吊所でもあり、この表参道は桜馬場(さくらのばば)も桜並木の道である。  

             桜馬場を行く                    金比羅宮博物館の入口

 春には桜のトンネルとなるであろう桜馬場を行くと右手に宝物館の案内板があり、この奥に明治38年(1905)に建てられた、我が国最初期の博物館があるようだ。花崗石造による二層建、入母屋造瓦葺、玄関は唐破風造(からはふうづくり)の銅板葺、という和洋折衷の重厚な建物だという。金比羅宮の宝物『十一面観音立像』(重要文化財)、『象頭山社頭並大祭行列図屏風』(重要有形民俗文化財)などが展示されているようだが今日は象頭山登山が主目的なので見学せず先へ進む。
           桜馬場西詰の銅鳥居                       書院

 金比羅さんは鳥居がたくさん立つ参道だ。いくつもの神社が祀られているのでそれぞれに鳥居があるということだろうか。桜馬場の平坦な道を歩いてきたが『桜馬場西詰の銅鳥居』というのがあり、またもや階段になった。登りきると突き当たりで右には書院の建物。重要文化財だそうだが拝観料800円ということもありここもパス。参道は左にクランクして続いていく。200mほど行った左側に木馬舎というのがあり中に気品のあるきれいな白馬が祀られている。
             木馬舎                         旭社への階段

 木馬舎から今度へ右へクランクして石段を登る。登った先には『旭社』というのがあったのだが、長屋のような回廊もあり休憩舎として使われているのでここが御本宮かと勘違いをしてしまった。2層入母屋造銅瓦葺きで、1837(天保8)年に建てられた重要文化財。旭社で石段は628段だったようで御本宮はまだまだ先である。『御本宮ご参拝の方はこちら(右)へお進みください』という案内板があった。旭社の社殿が立派なので私同様間違える人もいるように思う。森の石松が次郎長の代参で金比羅宮を訪れた際、旭社を本宮と間違えて刀を奉紊してしまったという逸話があるそうだ。

         旭社と休憩所                        御本宮への最後の階段
 そして785段の石段を上り終えて御本宮に到着。早速お参りさせてもらったが、正面から内部を撮影してはいけないという注意書きがあった。
御本宮の境内は広く、向かって左の方へ行くと大物主神の妃が祀られている『御別宮』三穂津姫社(みほつめやしろ)というのがあった。


写真上2枚:御本宮の本殿  下左:本殿の左へ進んだところから見た本殿と左の長廊下・右の神札授与所  下右:御別宮

 また、お札をもらう神札授与所があり並んでいる人もいる。本殿の右手に戻ったところが展望台になっていて讃岐富士や讃岐平野を見わたす絶景スポットである。

 ところで平日の午前中ということからか参拝客は多くはない。案内板に『奥社までは片道30分ほどです』と書かれているので、おー。そんなに遠いのかということで奥社までいく人はごく少ないようだ。私はさらに奥の象頭山まで行くので躊躇なく出発する。

        白峰神社の朱色の社殿                     菅原道真が祀られた菅原神社

  このあとも石段は続く。途中の常磐神社を過ぎて登っていくと923段目だという崇徳天皇を御祭神とする白峰神社に着いた。朱色に彩られた社殿で秋が深まる季節には周りの紅葉とはでやかさを競うのではないだろうか。
 まだ11時半前だったが石段登りでおなかがすいたのでベンチのある社殿前で昼食休憩とする。たまにしか登ってくる人はいないので気楽な休息タイムが取れた。



 白峰神社を出て次に出会うのは菅原神社。天神様、天満宮として広くあがめられる神で 当国讃岐の国主も務めた全国に広く奉られる文筆の神、学神として 尊崇される神様である菅原道真命(みこと)。私もすでに齢80代半ば、さみしいことだが今さらお世話になる神様でもなさそうだ。


    奥宮まで200mの案内板                ようやくたどりついた奥宮

 さらに続く階段の道を登ると《奥社へ 200m》の案内板。やれやれという思いだったが、見ればまだまだ続く石の階段。鳥居の奥に見える階段まで登って右に折返し、ほぼ同じだけ登らされたのだ。それでも奥社まで最初の1段から1368段、奥社まで登り詰めた。奥社の正式な吊称は『厳魂神社(いづたまじんじゃ)』。金刀比羅本教の教祖である厳魂彦命が祀られているそうだ。
そして奥社の左が岩壁になっていて立ち入り禁止と書いてある。事前の調べでは天狗とカラス天狗の石像があると聞いたが草木が茂っていて見あたらなかった。奥社はパワースポットだそうで社務所で天狗様のお守りも売っている。お守りは買わなかったが奥宮へはしっかりお参りして金比羅様詣では無事終了となった。



       象頭山山頂にて                   象頭山展望台からの景色


 いずれにしても奥社まで来る参拝客、観光客は少ない。奥社には先客が3人いたが山スタイルのハイカーだった。私も金比羅様とともに象頭山に登るのが目的なのでこのあとすぐ出発した。象頭山山頂と展望台からの写真を載せておく。展望はにっぽん百低山の番組で吉田類さんと市毛良枝さんがいっていたようにみごとなものであった。これで一生に一度は行ってみたいところだといわれる金比羅詣でをかなえることができた。一つでも訪問したいという願いが達成できたということでよかったと思う。蛇足ながら明日は四国第2の高峰剣山に登るので登山口のある見ノ越へ向かう。


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