今年もインフルエンザ予防接種の季節がやってきました。
インフルエンザ ワクチンを接種すると、インフルエンザにかかりにくくなる、かかっても軽症ですむという効果があります。特に65歳以上の高齢者や、心臓や呼吸器などの慢性疾患を有するかたは、インフルエンザにかかると重症化して、肺炎などで死亡するリスクが高いために、ワクチンの接種がすすめられています。
ところが、本年は高齢者だけでなく、すべての国民に対してインフルエンザワクチンの接種が推奨されています。なぜなら、この冬のシーズンに、わが国でも新型肺炎SARS(重症急性呼吸器症候群、サーズ)が、インフルエンザと同時に流行する可能性があるからです。
インフルエンザとSARSとは、症状がとてもよく似ています。専門家でも初期の段階でこの2つの病気を区別することはできません。したがって、SARSが日本に上陸したら、その時点ですべてのインフルエンザ患者は「SARS疑い例」として取り扱われることになります。
今年の5月に、SARSに罹患していた台湾人医師が5日間西日本に滞在したときの大騒ぎをおぼえていますか?あの頃は、SARSの流行地域から帰国したというだけで、誰もその人に近寄らなくなるなどの過剰な反応が見られました。また、一度は制圧されたSARSですが、気温の高い夏の間は一時的に封じ込められているにすぎず、気温が下がれば、東アジアの各地を中心に再流行してくることが懸念されています。
では、もしもこの冬にSARSが日本に上陸したらどうなるでしょう。高熱とせきなどの呼吸器症状がある患者は、たとえその人がインフルエンザだったとしても、SARSと見分けがつかないわけですから、「SARSの疑いあり」の烙印がおされることになり、SARSを恐れる人々や医療機関を大混乱に巻き込んでしまうことになります。さらに、インフルエンザなのに「SARS疑い例」にされた場合は、隔離された待合室で本物のSARS患者と同室させられたあげくに、そこでSARSをうつされてしまうという心配もあるのです(中国や台湾では、病院の待合室から感染は拡大していったことを思い出してください)。
そのような事態を避けるには「インフルエンザにかからないようにすること」が大切です。そして、今のところ、インフルエンザを予防する有効な手段は、ワクチンの接種しかありません。当院にかかりつけのみなさまは、必ず年内にインフルエンザの予防接種を受けるようにしましょう。
(2003年9月 宮崎医院 宮崎 仁)
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